[math]2002年度東京医科歯科大学前期数学問題1

問題

座標空間内に定点\(A, B\)がある。不等式$$\overrightarrow{AB}\cdot \overrightarrow{AP}\geq \frac{\sqrt{3}}{2}\mid\overrightarrow{AB}\mid\mid\overrightarrow{AP}\mid$$を満たすような\(xy\)平面上の点\(P\)からなる図形を\(D\)とする。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(A(0, 0, 1), B(0, 0, 0)\)のとき、図形\(D\)を\(xy\)平面上に図示せよ。
\((2)\) \(A(0, 0, \sqrt{3}), B(1, 0, 0)\)のとき、図形\(D\)を\(xy\)平面上に図示し、その面積を求めよ。
\((3)\) \(A(0, 0, 2\sqrt{3}), B(\sqrt{2}, \sqrt{2}, 0)\)のとき、図形\(D\)の面積を求めよ。

方針

\(P(x, y, 0)\)とする。

解答

\((1)\) 条件に\(A(0, 0, 1), B(0, 0, 0), P(x, y, 0)\)を代入して、$$\begin{pmatrix}0\\ 0\\ -1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\\ -1\end{pmatrix}\geq \frac{\sqrt{3}}{2}\cdot 1\cdot \sqrt{}x^2+y^2+1$$である。両辺を二乗して整理すると、\(\displaystyle x^2+y^2\leq \frac{1}{3}\)となる。図形\(D\)は下の斜線部のようになる。ただし、境界を含む。

\((1)\)の解答。境界を含む。

\((2)\) 条件に\(A(0, 0, \sqrt{3}), B(1, 0, 0), P(x, y, 0)\)を代入して、$$\begin{pmatrix}1\\ 0\\ \sqrt{3}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\\ -\sqrt{3}\end{pmatrix}\geq \frac{\sqrt{3}}{2}\cdot 2\cdot \sqrt{}x^2+y^2+3$$である。左辺は\(x+3\)となるから、\(x+3\geq 0\)のもと、両辺を二乗して整理すると、\(\displaystyle \frac{4}{9}\left(x-\frac{3}{2}\right)^2 + \frac{2}{3}y^2\leq 1\)となる。よって、図形\(D\)は下の斜線部のようになる。ただし、境界を含む。これは\(x + 3\geq 0\)を満たす。

\((2)\)の解答。境界を含む。

この面積は、\(\displaystyle \frac{3}{2}\cdot \sqrt{\frac{3}{2}}\pi = \underline{\frac{3\sqrt{6}}{4}\pi}\)となる。

\((3)\) 同様に条件に\(A(0, 0, 2\sqrt{3}), (\sqrt{2}, \sqrt{2}, 0), (x, y, 0)\)を代入して、$$\begin{pmatrix}\sqrt{2}\\ \sqrt{2}\\ -2\sqrt{3}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\\ -2\sqrt{3}\end{pmatrix}\geq \frac{\sqrt{3}}{2}\cdot 4\cdot \sqrt{}x^2+y^2+12$$である。計算すると、$$\sqrt{2}x + \sqrt{2}y + 12 \geq 2\sqrt{2}\sqrt{x^2+y^2+12} \tag{a}$$である。さて、$$\begin{pmatrix}X \\ Y\end{pmatrix} = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix}1 & -1 \\ 1 & 1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x \\ y\end{pmatrix}$$とすると、$$\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix}1 & 1 \\ -1 & 1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}X \\ Y\end{pmatrix}$$である。したがって\(\displaystyle x = \frac{X+Y}{\sqrt{2}}, y = \frac{-X+Y}{\sqrt{2}}\)である。これを式\((a)\)に代入して、$$2Y+12 \geq 2\sqrt{3}\sqrt{\frac{(X+Y)^2}{2} + \frac{(-X+Y)^2}{2} + 12}$$である。整理して、$$2Y+12\geq 2\sqrt{3}\sqrt{X^2+Y^2+12}$$である。\(2Y+12\geq 0\)のもと、両辺を\(2\)で割ってから二乗して整理すると、\(\displaystyle \frac{X^2}{9}+\frac{(Y-3)^2}{6}\leq 1\)となる。よって、図形\(D\)は下の斜線部のようになる。ただし、境界を含む。これは\(Y+6\geq 0\)を満たす。

\((3)\)の解答。境界を含む。

その面積は\(3\cdot \sqrt{6}\cdot \pi = \underline{3\sqrt{6}\pi}\)である。

解説

与えられた条件式は\(xyz\)空間で円錐になる。問題で要求されているのは、円錐と\(xy\)平面との交わりを考察せよということになる。。円錐と平面との交わりは円、楕円、放物線、双曲線のいずれかにしかならない。なのでそれ以外の図形が出てきたら答えが誤っているということになる。と言ってもこの事実を知っている必要はなく、\((1), (2)\)は与えられた式を只計算すれば良い。

\((1)\)は簡単だろう。東京医科歯科大学の数学の問題は、初めの一二問は確実に取れるように作られている。ミスをしないように慎重に取っていかなければいけない。

\((2)\)も同じく、計算だけである。

\((3)\)で大きな差がつく。\((1), (2)\)と同じように計算していくと、$$\sqrt{2}x+\sqrt{2}y+12\geq 2\sqrt{3}\sqrt{x^2+y^2+12}$$という式が出てくる。これをそのまま二乗してしまうと恐らくこの問題を解くことはできない。左辺も右辺も\(x, y\)について対称であることに注目する。すると、\(\pm 45^\circ\)だけ回転させる(この回転操作により図形の面積は変わらない)により上手く図形を式で表すことができるようになる。解答中に現れている行列は\(\pm 45^\circ\)の回転行列である。

医科歯科大学では装いは違えどこの問題のように形状がすぐには分からない図形を式で追求させたり、一気に計算する前に少し工夫をしないと解決出来ないという問題が良く出題されている。関連記事も参考にされたい。

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