[math]2004年東京医科歯科大学前期数学問題3

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問題

座標平面上に次の\(5\)点をとる。ただし\(a\)は正の定数とする。$$A(1, 0), B(-1, 0), C(1, a), D(-1, a), M(0, a)$$原点を\(O\)とするとき、以下の各問いに答えよ。
\((1)\) 線分\(CD\)上の任意の点\(P\)に対して、次の不等式が成立することを示せ。$$AP+BP\geq AM + BM$$
\((2)\) 点\(P\)が線分\(OM\)上を動くとき、\(AP+BP+MP\)の最小値を求めよ。
\((3)\) \(a=2\)とする。点\(P, Q\)が四角形\(ACDB\)の内部(辺を含む)を動くとき、\(AP+BP+PQ+CQ+DQ\)の最小値を求めよ。

方針

ある程度図形的な考察も必要になる。\((1)\)は三角不等式を用いると良い。\((2)\)では場合分けが必要になる。

解答

\((1)\) 直線\(CD\)に関して点\(B\)と対称な点を\(E\)とすると、線分\(AE\)の中点は点\(M\)である。線分\(CD\)上の点\(P\)に関して、三角形\(AEP\)に着目すると、三角不等式から$$AP+EP\geq AE$$である。\(EP = BP, AE = AM+EM = AM+BM\)であるから、代入すると$$AP+BP\geq AM+BM$$となる。よって、題意の不等式が成立する。

\((1)\)図形概略図。

\((2)\) 点\(P(0, p)\ \ (0\leq p\leq a)\)とすると、$$\begin{eqnarray}AP+BP+MP & = & \sqrt{1+p^2}+\sqrt{1+p^2}+a-p \\ & = & 2\sqrt{1+p^2}-p+a\end{eqnarray}$$となる。\(f(p) = 2\sqrt{1+p^2}-p+a\)とすると、$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(p) & = & \frac{2p}{\sqrt{1+p^2}}-1\\ & = & \frac{2p-\sqrt{1+p^2}}{\sqrt{1+p^2}}\\ & = & \frac{4p^2-(1+p^2)}{\sqrt{1+p^2}(2p+\sqrt{1+p^2})}\\ & = & \frac{3p^2-1}{\sqrt{1+p^2}(2p+\sqrt{1+p^2})}\end{eqnarray}$$となる。したがって\(f(p)\)は$$\begin{cases}\displaystyle p = \frac{1}{\sqrt{3}}\ \ \left(a\geq \frac{1}{\sqrt{3}}\right)\\ \displaystyle p = a\ \ \left(0<a\leq \frac{1}{\sqrt{3}}\right)\end{cases}$$のときに最小値をとる。求める最小値は$$\begin{cases}\displaystyle f\left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right) = \sqrt{3}+a\ \ \left(a\geq \frac{1}{\sqrt{3}}\right)\\ \displaystyle f(a) = 2\sqrt{a^2+1}\ \ \left(0 < a\leq \frac{1}{\sqrt{3}}\right)\end{cases}$$となる。

\((2)\) 図形概略図。

\((3)\) 点\(P, Q\)の\(y\)座標を固定する。\((1)\)と同様に考え、点\(P, Q\)の\(x\)座標が\(0\)であるときに\(AP+BP+PQ+CQ+DQ\)の値は最小になる。点\(P, Q\)の\(y\)座標を動かすと、仮に点\(P\)の\(y\)座標\(\geq\)点\(Q\)の\(y\)座標とすると、点\(P, Q\)を入れ替えることにより\(AP+BP+PQ+CQ+DQ\)は小さくなるので、点\(P\)の\(y\)座標\(\leq \)点\(Q\)の\(y\)座標としてよい。すると、$$\begin{eqnarray}AP+BP+PQ+CQ+DQ & = & AP+BP+(MP-MQ) +CQ +DQ\\ & = & AP+BP+MP-(OM-OQ) + CQ+DQ \\ & = & (AP+BP+MP) + (CQ+DQ+OQ)-OM\end{eqnarray}$$である。\(OM\)は定数(\(\displaystyle = 2 > \frac{1}{\sqrt{3}}\))であり、\((2)\)から\(AP+BP+MP, CQ+DQ+OQ\)の最小値は\(\sqrt{3}+2\)だから(\(CQ+DQ+OQ\)の場合も\(AP+BP+MP\)と同様に考えれば良い)、\(AP+BP+PQ+CQ+DQ\)の最小値は\(2(\sqrt{3}+2)-2 = \underline{2\sqrt{3}+2}\)である。

\((3)\) \(O, M, P, Q\)の位置関係。

解説

\((1)\) 対称点をとって三角不等式を用いることがポイントになる。

\((2)\) 解答の点\(P\)はフェルマー点になっている。

フェルマー点 - Wikipedia

場合分けの前者は三角形\(ABM\)の内角がすべて\(120^\circ\)以下の場合で、三角形\(ABM\)において\(\angle{APM} = \angle{MPB} = \angle{BPA} = 120^\circ\)になっている。場合分けの後者が\(\angle{AMB}\)が\(120^\circ\)以上の場合にあたる。一般に計算でフェルマー点を求めるのは難しいが、三角形\(ABM\)のように二等辺三角形の場合は比較的簡単に求めることができる。

\((3)\) 当然\((1), (2)\)を用いて解答する。最初に点\(P, Q\)の\(y\)座標を固定してから\((1)\)を用い、その後に\((2)\)を使う。

この問題の結果により、四角形\(ABCD\)の内部に点\(A, B, C, D\)を結ぶ未知を造るとすると、対角線上を進むルート(道の長さの合計は\(2\times 2\sqrt{2} = 4\sqrt{2} = 5.65685\cdots\))を造るより、解答のように点\(P, Q\)を取ったルート(道の長さの合計は\(2\sqrt{3}+2 = 5.46410\cdots\))をたどる方が短くなることがわかる。これは人間にとってはやや意外な事実であるが、自然界はこれをうまく利用しており、例えばミツバチの巣が六角形になっているのも、最小の材料で巣を造ることができる図形がこの問題のように考えると六角形であるからなのである。

関連問題

1977年京都大学数学文系問題5 フェルマーFermatの小定理
1979年東京大学理系数学問題4 距離の最大値、最小値と円、正三角形
1997年京都大学後期理系数学問題6 極座標の掃く面積の公式、等角螺旋
2000年東京医科歯科大学数学問題2 ベクトルと座標平面、解法の選択

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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