[math]1978年東京大学理系数学問題3

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問題

\(C\)を放物線\(\displaystyle y = \frac{3}{2}x^3-\frac{1}{3}\)とする。\(C\)上の点\(\displaystyle Q\left(t, \frac{3}{2}t^2-\frac{1}{3}\right)\)を通り、\(Q\)における\(C\)の接線と垂直な直線を、\(Q\)における\(C\)の法線という。
\((1)\) \(xy\)平面上の点\(P(x, y)\)で\(P\)を通る\(C\)の法線が一本だけ引けるようなものの存在範囲を求め、\(xy\)平面上に図示せよ。
\((2)\) \((1)\)で求めた範囲と放物線の内部(不等式\(\displaystyle y > \frac{3}{2}x^2-\frac{1}{3}\)の定める範囲)の共通部分の面積を求めよ。

方針

法線や接線の個数を問われたときは実数解の個数の問題に帰着させるのが定石手段である。

解答

\((1)\) \(\displaystyle y = \frac{3}{2}x^2-\frac{1}{3}\)を微分して、\(y^{\prime} = 3x\)である。したがって、点\(\displaystyle Q\left(t, \frac{3}{2}t^2-\frac{1}{3}\right)\)における\(C\)の法線は$$-3t\left(y-\left(\frac{3}{2}t^2-\frac{1}{3}\right)\right) = x-t$$である。整理して、$$\frac{9}{2}t^3-3ty-x = 0 \tag{a}$$となる。\(t\)に関する\(3\)次方程式\((a)\)がただ一つだけ実数解を持つような\((x, y)\)の範囲を求めれば良い。式\((a)\)の左辺を\(f(t)\)とおくと、$$f^{\prime}(t) = \frac{27}{2}t^2-3y$$となる。
\((i)\) \(y < 0\)のとき、\(f(t)\)は単調増加で、\(f(t) = 0\)はただ一つの実数解をもつ。よって、\(y < 0 \tag{b}\)は条件を満たす。
\((ii)\) \(y\geq 0\)のとき、\(f(t)\)は\(\displaystyle t = -\frac{\sqrt{2y}}{3}\)のときに極大、\(\displaystyle t = \frac{\sqrt{2y}}{3}\)のときに極小となり、$$\begin{eqnarray}f\left(-\frac{\sqrt{2y}}{3}\right) & = & \frac{2\sqrt{2}y^{\frac{3}{2}}}{3}-x \\ f\left(\frac{\sqrt{2y}}{3}\right) & = & -\frac{2\sqrt{2}y^{\frac{3}{2}}}{3}-x\end{eqnarray}$$である。\(f(t)\)がただ一つの実数解をもつ条件は極大値と極小値が同符号であることだから、$$\left(\frac{2\sqrt{2}y^{\frac{3}{2}}}{3}-x\right)\left(-\frac{2\sqrt{2}y^{\frac{3}{2}}}{3}-x\right) > 0 \tag{c}$$である。条件\((b), (c)\)を図示すると、下の図の斜線部のようになる。ただし、境界は含まない。

図形概形。境界は除く。

\((2)\) 共通部分の面積を求める。\(\displaystyle x = \frac{2\sqrt{2}y^{\frac{3}{2}}}{3}\)と\(\displaystyle y = \frac{3}{2}x^2-\frac{1}{3}\)との交点は、\(2\)式を連立させて、$$\begin{eqnarray}y & = & \frac{3}{2}\cdot \frac{8}{9}y^3-\frac{1}{3}\\ 4y^3-3y-1 & = & 0\\ (y-1)(2y+1)^2 & = & 0\end{eqnarray}$$となるから、\(y > 0\)も加味して\(\displaystyle \left(\frac{2\sqrt{2}}{3}, 1\right)\)である。さらに、\(\displaystyle x = \frac{2\sqrt{2}y^{\frac{3}{2}}}{3}\)を\(\displaystyle y = \left(\frac{3x}{2\sqrt{2}}\right)^{\frac{2}{3}}\)と変形しておいて、\(y\)軸に関する対称性に留意すると、求める面積は$$\begin{eqnarray}2\times \int_{0}^{\frac{2\sqrt{2}}{3}}{\left(\left(\frac{3x}{2\sqrt{2}}\right)^{\frac{2}{3}}-\left(\frac{3}{2}x^2-\frac{1}{3}\right)\right)dx} = \underline{\frac{88\sqrt{2}}{135}}\end{eqnarray}$$となる。

解説

法線はいきなり$$-3t\left(y-\left(\frac{3}{2}t^2-\frac{1}{3}\right)\right) = x-t$$という形ででてきているが、これは\(t = 0\)のときの場合分けを回避するための工夫である。$$y -\left(\frac{3}{2}t^2-\frac{1}{3}\right) = \frac{1}{-3t}(x-t)$$と書いたときは、\(t\ne 0\)のときにしか通用しないことを忘れないように。この点を忘れることは本当に多く、確実に減点されるポイントなので法線は初めから上の形で覚えた方が良いだろう。入試ではボーダーラインにほとんどの受験生が集まる。一二点の差で涙を流すものも多い。一年の努力が無駄にならないようにするためにも細かいポイントこそ気を使うようにすると良い。面積についてであるが多少鬱陶しい計算になる。対称性などに注意してさっと片付けてしまいたい。この問題ではグラフの概形を描くのに微分までする必要は無いと思われる。

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関連リンク

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/index2.html

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