問題
\(O\)を原点とする座標平面上に、\(y\)軸上の点\(P(0, p)\)と直線\(m: y = (\tan{\theta})x\)が与えられている。ここで、\(\displaystyle p > 1, 0<\theta < \frac{\pi}{2}\)とする。いま、傾きが\(\alpha\)の直線\(l\)を対称軸とする対称移動を行うと、原点\(O\)は直線\(y = 1\)の上の、第\(1\)象限の点\(Q\)に移り、\(y\)軸上の点\(P\)は直線\(m\)上の、第\(1\)象限の点\(R\)に移った。
\((1)\) このとき、\(\tan{\theta}\)を\(\alpha\)と\(p\)で表わせ。
\((2)\) 次の条件を満たす点\(P\)が存在することを示し、そのときの\(p\)の値を求めよ。
\(\ \ \ \)条件:どのような\(\displaystyle \theta\ \ \left(0<\theta < \frac{\pi}{2}\right)\)に対しても、原点を通り直線\(l\)に垂直な直線は\(\displaystyle y = \left(\tan{\frac{\theta}{3}}\right)x\)となる。
方針
ある直線\(l\)に関する点\(P\)の対称移動に関する原則は、対称点を\(Q\)とすると、
\((i)\) 直線\(PQ\)と\(l\)は直交する。
\((ii)\) \(PQ\)の中点は\(l\)上にある。
の\(2\)点である。この事実をべクトル、行列、座標などを用いて表現すれば良い。この問題の場合一番簡単なのは座標を用いることで、ほとんど図を書かなくても式を立てることが出来る。条件を書き出してしまえば後は目標に向かって変形していくだけである。図は式が出た後で書けば良いだろう。
解答
\((1)\) 点\(Q\)の座標を\((q, 1)\)、点\(R\)の座標を\((r, r\tan{\theta})\)とする。直線\(OQ\)と直線\(l\)、および直線\(PR\)と直線\(l\)は直交するので、$$\begin{cases}\displaystyle \frac{1-0}{q-0}\cdot \alpha = -1\\ \displaystyle \frac{r\tan{\theta}-p}{r-0}\cdot \alpha = -1\end{cases}$$である。したがって\(\displaystyle q = -\alpha, r = \frac{\alpha p}{\alpha \tan{\theta} + 1}\)となる。いま、線分\(OQ\)の中点と、線分\(PR\)の中点は直線\(l\)上にあるので、$$\frac{\frac{1}{2}-\frac{r\tan{\theta}+p}{2}}{\frac{q}{2}-\frac{r}{2}} = \alpha$$である。整理して、$$1-r\tan{\theta}-p = \alpha(q-r)$$である。\(q, r\)を代入して、$$1-\frac{\alpha p \tan{\theta}}{\alpha\tan{\theta}+1}-p = \alpha\left(-\alpha-\frac{\alpha p}{\alpha \tan{\theta} + 1}\right)$$であうr.両辺に\(\alpha\tan{\theta}+1\)を掛けて、$$\alpha\tan{\theta} + 1-\alpha p \tan{\theta}-\alpha p\tan{\theta}-p = -{\alpha}^3\tan{\theta}-{\alpha}^2-{\alpha}^2p$$となる。よって、\(\displaystyle \underline{\tan{\theta} = \frac{p-1-{\alpha}^2(p+1)}{\alpha({\alpha}^2-2p+1)}}\)となる。
\((2)\) 条件から\(\displaystyle \tan{\frac{\theta}{3}} = -\frac{1}{\alpha}\)となる。\(\displaystyle 0 < \theta < \frac{\pi}{2}\)だから、\(\displaystyle 0 < \frac{\theta}{3} < \frac{\pi}{6}\)となる。したがって\(\displaystyle 0 < \tan{\frac{\theta}{3}} < \frac{1}{\sqrt{3}}\)となり、\(\alpha < 0\)だから\(\alpha < -\sqrt{3}\)となる。今、$$\begin{eqnarray}\tan{2x} & = & \frac{2\tan{x}}{1-\tan^2{x}}\\ \tan{3x} & = & \frac{\tan{x} + \tan{2x}}{1-\tan{x}\tan{2x}}\\ & = & \frac{\tan{x} + \frac{2\tan{x}}{1-\tan^2{x}}}{1-\tan{x}\cdot \frac{2\tan{x}}{1-\tan^2{x}}}\\ & = & \frac{\tan{x}(3-\tan^2{x})}{1-3\tan^2{x}}\end{eqnarray}$$であるから、\(\displaystyle x = \frac{\theta}{3}\)として、$$\begin{eqnarray}\tan{\theta} & = & \frac{\left(-\frac{1}{\alpha}\right)\left(3-\left(-\frac{1}{\alpha}\right)^2\right)}{1-3\left(-\frac{1}{\alpha}\right)^2} \\ & = & \frac{3{\alpha}^2-1}{\alpha(3-{\alpha}^2)}\end{eqnarray}$$となる。\((1)\)の結果とから、任意の\(\alpha < -\sqrt{3}\)に対して$$\frac{p-1-{\alpha}^2(p+1)}{\alpha({\alpha}^2-2p+1)} = \frac{3{\alpha}^2-1}{\alpha(3-{\alpha}^2)}$$が成り立つような\(p\)の値を求めればよい。\(\alpha = -2\)のとき、\(\displaystyle \frac{p-1-4(p+1)}{4-2p+1} = \frac{11}{-1}\)から\(p = 2\)となる。逆に\(p = 2\)のとき\(\displaystyle \frac{p-1-{\alpha}^2(p+1)}{\alpha({\alpha}^2-2p+1)} = \frac{3{\alpha}^2-1}{\alpha(3-{\alpha}^2)}\)となり条件は満たされる。よって、\(\underline{p = 2}\)が求める答えである。
解説
図形的に解こうとすると場合分けが必要なのかどうかが分からないし、ゴチャゴチャしてしまいそうである。計算結果は汚いが、東大理系としては標準的で試験時間内に解決したい問題である。
\((2)\) \(\tan{3x}\)の加法定理など覚える必要はない。解答のように\(\tan{2x}\)の加法定理を利用して求めれば十分である。さらに、\(\tan{2x}\)の加法定理は$$\begin{eqnarray}\tan{2x} & = & \frac{\sin{2x}}{\cos{2x}}\\ & = & \frac{2\sin{x}\cos{x}}{\cos^2{x}-\sin^2{x}}\end{eqnarray}$$として、両辺を\(\cos^2{x}\)で割れば\(\displaystyle \tan{2x} = \frac{2\tan{x}}{1-\tan^2{x}}\)と得ることができる。\(\sin, \cos\)の加法定理については以下の記事を参照すると良い。
後は、任意の\(\theta\)、つまり任意の\(\alpha\)について式が成り立つような\(p\)を探せばよく、それには適当に\(\alpha\)に値を代入してしまえば良い。その際、\(\alpha\)に範囲の制限があることに気をつける。計算が多めでボリュームがあるので難しく感じるが、やっていること自体は基本が出来ていればそれ程のことはない。
関連問題
1978年東京大学理系数学問題3 法線の個数、共通部分の面積
2022年東京医科歯科大学医学科数学問題2 二次曲線と法線、準線、面積の有名事実
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