[math]1973年京都大学理系数学問題3

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問題

正三角形\(ABC\)がある。点\(O\)を直線\(AB\)に関して\(C\)と反対側にとって\(\angle{AOB} = 60^\circ\)となるようにし、ベクトル\(\overrightarrow{OA},\overrightarrow{OB}, \overrightarrow{OC}\)をそれぞれ\(\mathbf{a, b, c}\)で表す。このとき、$$\mathbf{c} = \left|\frac{\mathbf{b}}{\mathbf{a}}\right|\mathbf{a} + \left|\frac{\mathbf{a}}{\mathbf{b}}\right|\mathbf{b}$$であることを証明せよ。ただし、\(|\mathbf{a}|, |\mathbf{b}|\)はそれぞれ\(\mathbf{a, b}\)の大きさを示す。

方針

\(\mathbf{a, b}\)は一次独立なので、\(\mathbf{c} = p\mathbf{a} + q\mathbf{b}\)などと置いて\(p, q\)を求める。

解答

\(\mathbf{a, b}\)は一次独立なので、\(\mathbf{c} = p\mathbf{a} + q\mathbf{b}\)としたとき、\(p, q\)は一意に定まる。\(|\mathbf{a}| = x, |\mathbf{b}| = y\)とすると、\(\angle{AOB} = 60^\circ\)なので、\(\displaystyle \mathbf{a}\cdot\mathbf{b} = \frac{xy}{2}\)である。\(|\overrightarrow{AC}| =|\mathbf{c}-\mathbf{a}| = |(p-1)\mathbf{a} + q\mathbf{b}|\)だから、$$\begin{eqnarray}|\overrightarrow{AC}|^2 & = & (p-1)^2x^2 + (p-1)qxy + q^2y^2 \tag{a}\label{a}\end{eqnarray}$$である。同様に、\(|\overrightarrow{BC}| =|\mathbf{c}-\mathbf{b}| = |p\mathbf{a} + (q-1)\mathbf{b}|\)だから、$$\begin{eqnarray}|\overrightarrow{BC}|^2 & = & p^2x^2 + (p-1)qxy + (q-1)^2y^2 \tag{b}\label{b}\end{eqnarray}$$である。また、\(|\overrightarrow{AB}| =|\mathbf{b}-\mathbf{a}|\)だから、$$\begin{eqnarray}|\overrightarrow{AB}|^2 & = & x^2 -xy + y^2 \tag{c}\label{c}\end{eqnarray}$$である。

\(ABC\)は正三角形なので、\(AB = BC = CA\)である。式\eqref{a}\(-\)\eqref{b}を作ると、$$(-2p+1)x^2+(p-q)xy + (2q-1)y^2 = 0 \tag{d}\label{d}$$である。さて、式\eqref{d}に\(\displaystyle p = \frac{y}{x}, q = \frac{x}{y}\)を代入すると$$\begin{eqnarray}(-2p+1)x^2+(p-q)xy + (2q-1)y^2 & = & (-2xy + x^2) + y^2-x^2 + (2xy – y^2) \\ & = & 0\end{eqnarray}$$となり、式\eqref{d}が成り立つ。さらに、式\eqref{a}, \eqref{b}にこの\(p, q\)の値を代入すると、$$\begin{eqnarray}(p-1)^2x^2+(p-1)xy + q^2y^2 & = & (x-y)^2+x(y-x) + x^2 \\ & = & x^2-xy+y^2\\ p^2x^2+p(q-1)xy + (q-1)^2y^2 & = & y^2 +y(x-y) + (x-y)^2\\ & = & x^2-xy+y^2\end{eqnarray}$$となり、式\eqref{c}と一致する。よって、\(\displaystyle \mathbf{c} = \frac{y}{x}\mathbf{a} + \frac{x}{y}\mathbf{b} = \left|\frac{\mathbf{b}}{\mathbf{a}}\right|\mathbf{a} + \left|\frac{\mathbf{a}}{\mathbf{b}}\right|\mathbf{b}\)となり、題意が成り立つ。

解説

立式までは簡単であるが、\eqref{a}, \eqref{b}, \eqref{c}の値は等しいのでここから\(p, q\)の値を求めてしまえば良い。しかし、この問題がべクトルの問題でしかも証明問題ということに思いを馳せると、その必要はないことに気がつく。一次独立性を上手く使うと解答のように実際に\(p, q\)の組をみつけて、\(3\)つの式を満たしていることが言えれば計算は必要ない。なかなか気がつきにくいかもしれないが、良い問題である。

なお、点\(O\)は\(\angle{AOB} = 60^\circ\)を満たす点というだけなので、特に\(\triangle{ABC}\)は正三角形にならないことに注意する。

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