[math]2006年東京工業大学前期数学問題4

orange cube math
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問題

空間内の四面体\(ABCD\)を考える。辺\(AB, BC, CD, DA\)の中点を、それぞれ\(K, L, M, N\)とする。
\((1)\) \(4\overrightarrow{MK}\cdot \overrightarrow{LN} = |\overrightarrow{AC}|^2-|\overrightarrow{BD}|^2\)を示せ。ここに\(|\overrightarrow{AC}|\)はベクトル\(\overrightarrow{AC}\)の長さを表す。
\((2)\) 四面体\(ABCD\)のすべての面が互いに合同であるとする。このとき\(|\overrightarrow{AC}| = |\overrightarrow{BD}|, |\overrightarrow{BD}| = |\overrightarrow{AD}|, |\overrightarrow{AB}| = |\overrightarrow{CD}|\)を示せ。
\((3)\) 辺\(AC\)の中点を\(P\)とし、\(|\overrightarrow{AB}| = \sqrt{3}, |\overrightarrow{BC}| = \sqrt{5}, |\overrightarrow{CA}| = \sqrt{6}\)とする。\((2)\)の仮定のもとで、四面体\(PKLN\)の体積を求めよ。

方針

\((1)\)は\((3)\)の誘導であるが、等面四面体の知識を用いると、無視して解くことができる。

解答

\((1)\) $$\begin{eqnarray}4\overrightarrow{MK}\cdot \overrightarrow{LN} & = & 4\cdot \frac{\overrightarrow{AB}-(\overrightarrow{AC} + \overrightarrow{AD})}{2}\cdot \frac{\overrightarrow{AD}-(\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{AC})}{2}\\ & = & (-\overrightarrow{BD}-\overrightarrow{AC})\cdot (\overrightarrow{BD}-\overrightarrow{AC})\\ & = & (\overrightarrow{AC} + \overrightarrow{BD})\cdot (\overrightarrow{AC}-\overrightarrow{BD})\\ & = & |\overrightarrow{AC}|^2-|\overrightarrow{BD}|^2\end{eqnarray}$$となる。よって題意が成り立つ。

立体の概略図。

\((2)\) \((i)\) 三辺の長さが異なるとき、\((ii)\) 二辺の長さが等しいとき、\((iii)\) 三辺の長さが等しいときの\(3\)通りが考えられる。図に書くと下の通りで、いずれの場合も\(|\overrightarrow{AC}| = |\overrightarrow{BD}|, |\overrightarrow{BC}| = |\overrightarrow{AC}|, |\overrightarrow{AB}| = |\overrightarrow{CD}|\)が成り立つ。\((iii)\)の場合は図を書くまでもなく明らかである。

小文字の数字は辺の長さを表す。

\((3)\) 点\(K, P, L\)はそれぞれ辺\(AB, AC, AD\)の中点であるから、三角形\(KPKN\)の面積は三角形\(BCD\)の面積の\(\displaystyle \frac{1}{4}\)である。また、平面\(KPN\)と平面\(BCD\)は平行であるから、その距離は点\(A\)から平面\(BCD\)に下ろした垂線の足と点\(A\)との距離の半分である.したがって、四面体\(PKLN\)の体積は四面体\(ABCD\)の体積の\(\displaystyle \frac{1}{8}\)である。四面体\(ABCD\)の体積を求める。四面体\(ABCD\)の面はすべて合同で、また$$\begin{cases}(\sqrt{3})^2+(\sqrt{5})^2 > (\sqrt{6})^2\\ (\sqrt{5})^2 + (\sqrt{6})^2 > (\sqrt{3})^2\\ (\sqrt{6})^2 + (\sqrt{3})^2 > (\sqrt{5})^2\end{cases}$$であるから、その面は鋭角三角形である。したがって、各々の辺の長さが\(x, y, z\)である直方体が存在し、四面体\(ABCD\)が図のように内接する。

等面四面体。

$$\begin{cases}x^2+y^2=BC^2 = 5\\ y^2+z^2 = AC^2 = 6\\ z^2+x^2 = AB^2 = 3\end{cases}$$である。これから、\(x = 1, y = 2, z = \sqrt{2}\)となる。四面体\(ABCD\)の体積は上の直方体から\(4\)つの四面体(上の図では四面体\(OABC\))を除いた部分の体積になるから、$$\begin{eqnarray}V(ABCD) & = & xyz-\frac{4}{6}xyz\\ & = & \frac{xyz}{3}\end{eqnarray}$$となる。以上から、四面体\(PKLN\)の体積は\(\displaystyle \frac{1}{8}\cdot \frac{xyz}{3} = \underline{\frac{\sqrt{2}}{12}}\)となる。

解説

解答で用いている等面四面体の知識は、以下である。

三角形\(ABC\)が鋭角三角形だとすると、各面すべてが\(ABC\)に合同な四面体が存在する。

これは東京大学や京都大学では前提知識として問われることも多く、以下の出題を参照すると良い。

等面四面体についての京都大学の出題。

この知識を用いずに\((3)\)を解決しようとすると、\((1)\)の誘導を用いることになる。概略としては、例えば辺\(BD\)の中点を\(Q\)として、\((1)\)から\(\overrightarrow{ML}\cdot \overrightarrow{LN} = 0, \overrightarrow{PQ}\cdot \overrightarrow{MK} = 0, \overrightarrow{PQ}\cdot \overrightarrow{LN} = 0\)が分かるので、\(MK, LN, PQ\)はいずれも互いに中点で直交するということが言えて、これを座標に落とし込んでやると良い。解答とやっていることはほとんど同じであるが、知識を前面に押し出すことはない。三角形\(ABC\)が鋭角三角形となることには留意する。三角形が鋭角三角形になることの条件が抜けてしまっているものは以下の記事を参照すると良い。

三角形が鋭角三角形になる条件についても記載されている。

このように、難関大学の数学の問題を解くときには、基礎的な知識はさっと使えるように自分のものにしておく必要がある。

等面四面体の作り方であるが、まず直方体を描く。次に上の解答の点\(A\)に着目する。点\(A\)から直方体の表面をなぞるように\(3\)本の対角線が引ける。これを四面体の辺として、残りの点を破線で結べば完成する。各面すべてが合同であることを確かめると良い。慣れるまで何回か自分で書いてみるとわかりやすいだろう。近年は出題がさほど見られないが、特に難関大学では等面四面体について受験生が身に付けていて当然と考えている節がある。

なお、$$\begin{cases}x^2+y^2=BC^2 = 5\\ y^2+z^2 = AC^2 = 6\\ z^2+x^2 = AB^2 = 3\end{cases}$$の計算では、まず各辺をすべて足して、\(2(x^2+y^2+z^2) = 14\)となり、\(x^2+y^2+z^2=7\)を出してから計算を進めるとすぐに\(x, y, z\)の値がわかる。これもケアレスミスを減らす工夫の一つである。

関連問題

1999年東京大学前期文理共通問題文系問題1理系問題1 三角関数、加法定理、余弦定理、基本定理の証明
1999年京都大学後期理系数学問題4 等面四面体

東京大学では1993年の理系前期第\(1\)問題で以下の出題が見られる。

すべての面が合同な四面体\(ABCD\)がある。頂点\(A, B, C\)はそれぞれ\(x, y, z\)軸上の正の部分にあり、辺の長さは\(AB = 2l-1, BC = 2l, CA = 2l + 1\ (l > 2)\)である。四面体\(ABCD\)の体積を\(V(l)\)とするとき、次の極限値を求めよ。$$\lim_{l\to 2}{\frac{V(l)}{\sqrt{l-2}}}$$

答えは\(8\)になる。この年の第一問題ということで、やはり等面四面体は難関大学の受験生にとって必須の知識と考えた方が良いだろう。

関連リンク

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