[math]1984年京都大学理系数学問題4

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問題

空間に三角形\(ABC\)があるとし、空間の原点\(O\)は、この三角形が決定する平面上にはないものとする。
\((1)\) 実数\(v, u, w\)が等式\(u\overrightarrow{OA}+v\overrightarrow{OB}+w\overrightarrow{OC} = \overrightarrow{0}\)を満たすならば、\(u = v = w = 0\)であることを示せ。
\((2)\) 辺\(BC, CA, AB\)の長さを、それぞれ\(a, b, c\)とし、三角形\(ABC\)の内接円の中心を\(P\)とすると、等式\(\overrightarrow{OP} = u\overrightarrow{OA} + v\overrightarrow{OB} + w\overrightarrow{OC}\)が成立するという。\(u, v, w\)を\(a, b, c\)を用いて表わせ。

方針

\((1)\) いきなり空間で示さず、まずは平面で示してみる。

解答

\((1)\) 平面上の平行でない二つのベクトル\(\overrightarrow{OX}, \overrightarrow{OY}\)に対して、\(x\overrightarrow{OX}+y\overrightarrow{OY} = \overrightarrow{0}\)であるならば\(x = y = 0\)であることを示す。\(x\ne 0\)とすると、\(\displaystyle \overrightarrow{OX} = -\frac{y}{x}\overrightarrow{OY}\)となり、二つのベクトルが平行でないことに反する。よって\(x = 0\)で、このとき\(y = 0\)となる。与えられた関係式$$u\overrightarrow{OA} + v\overrightarrow{OB} + w\overrightarrow{OC} = \overrightarrow{0}$$を変形すると、$$-u\overrightarrow{AO}+v(\overrightarrow{AB}-\overrightarrow{AO}) +w(\overrightarrow{AC}-\overrightarrow{AO})= \overrightarrow{0}$$となる。整理すると$$(u+v+w)\overrightarrow{AO} = v\overrightarrow{AB} + w\overrightarrow{AC}$$である。\(u+v+w = 0\)とすると、$$\overrightarrow{AO} = \frac{v\overrightarrow{AB} + w\overrightarrow{AC}}{u+v+w}$$となり、点\(O\)が三角形\(ABC\)の作る平面上にないことに反する。したがって\(u+v+w = 0\)で、このとき\(v\overrightarrow{AB} + w\overrightarrow{AC} = \overrightarrow{0}\)だから、上の準備から\(v = w = 0\)である。よって\(u = 0\)となり、結局\(u = v = w = 0\)となる。

\((2)\) 下図のように線分\(AP\)と\(BC\)との交わりを\(D\)として、\(BD = d\)とする。すると、\(\angle{BAD} = \angle{CAD}\)であるから、\(AB:AC = BD:CD\)となる。よって、\(c(a-d) = bd\)から\(\displaystyle d = \frac{ca}{b+c}\)である。

図形概略図。図の黒い丸と白い丸の角度は等しい。

また、\(\angle{DAP} = \angle{ABP}\)であるから、\(BD:BA = DP:AP\)である。以上から\(\displaystyle \overrightarrow{AD} = \frac{b\overrightarrow{AB} + c\overrightarrow{AC}}{b+c}\)となり、$$\begin{eqnarray}\overrightarrow{AP} & = & \frac{c}{d+c}\overrightarrow{AD}\\ & = & \frac{c}{\frac{ca}{b+c}+c}\left(\frac{b\overrightarrow{AB} + c\overrightarrow{AC}}{b+c}\right)\\ & = & \frac{b\overrightarrow{AB} +c\overrightarrow{AC} }{a+b+c}\end{eqnarray}$$となる。これを変形すると、$$\overrightarrow{OP}-\overrightarrow{OA} = \frac{b(\overrightarrow{OB}-\overrightarrow{OA})+c(\overrightarrow{OC}-\overrightarrow{OA})}{a+b+c}$$であり、つまり\(\displaystyle \overrightarrow{OP} = \frac{a\overrightarrow{OA} + b\overrightarrow{OB}+c\overrightarrow{OC}}{a+b+c}\)であるが、この表し方で一意にベクトル\(\overrightarrow{OP}\)が定まることは\((1)\)で見た通りである。よって、\(\displaystyle \underline{u = \frac{a}{a+b+c}, v = \frac{b}{a+b+c}, w = \frac{c}{a+b+c}}\)である。

解説

基本的ですあるが良い問題である。\((1)\)は空間内では\(3\)つのべクトルが一次独立であるということを示す問題であるが、きっちりと示さないと減点になるだろう。意外に初めて解くものも多いのかも知れない。一回やっておけばもう問題ないと思うので、出来なくても気にせず復習をすれば良い。

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