[math]2007年東京医科歯科大学前期数学問題2

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問題

座標平面上の動点\(Q\)が以下の規則に従って\(1\)秒ごとに移動する。
\((a)\) 原点\((0, 0)\)を出発点とし、まず点\((1, 0)\)または点\((0, 1)\)または点\((0, -1)\)に、それぞれ確率\(\displaystyle \frac{1}{3}\)で移動する。
\((b)\) ある時刻に点\((x-1, y)\)から点\((x, y)\)に移動したならば、その\(1\)秒後には点\((x + 1, y)\)または点\((x, y+1)\)または点\((x, y-1)\)に、それぞれ確率\(\displaystyle \frac{1}{3}\)で移動する。
\((c)\) ある時刻に点\((x, 0)\)から点\((x, 1)\)に移動したならば、その\(1\)秒後には点\((x, 2)\)または点\((x+1, 1)\)に、それぞれ確率\(\displaystyle \frac{1}{2}\)で移動する。
\((d)\) ある時刻に点\((x, 0)\)から点\((x, -1)\)に移動したならば、そのその\(1\)秒後には点\((x, -2)\)または点\((x+1, -1)\)に、それぞれ確率\(\displaystyle \frac{1}{2}\)で移動する。
\((e)\) ある時刻に点\((x, 1)\)または点\((x, -1)\)から点\((x, 0)\)に移動したならば、その\(1\)秒後には点\((x+1, 0)\)に移動する。
\((f)\) 直線\(y = 2\)上の点または直線\(y = -2\)上の点に達した場合は停止する。
このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(n\)を正の整数とするとき、\(Q\)がある時刻に点\((n-1, 0)\)に位置し、かつその\(1\)秒後に点\((n, 0)\)に移動している確率を\(p_n\)とする。また\(Q\)がある時刻に点\((n-1, n)\)に位置し、かつその\(1\)秒後に点\((n, 1)\)に移動している確率を\(p^{\prime}_n\)とする。\(p_1, p_2, p^{\prime}_1, p^{\prime}_2\)をそれぞれ求めよ。
\((2)\) \(Q\)が直線\(x = 2\)上の点に達する確率、および直線\(x = 3\)上の点に達する確率をそれぞれ求めよ。
\((3)\) \(m\)を正の整数とするとき、\(Q\)が点\((m, 0)\)に達する確率を\(m\)で表わせ。

方針

厳しい出題で、試験場ではほとんどの受験生が白紙、もしくはかろうじて\((1)\)を確保という状況だったという。そもそも点\(Q\)がどのような動きかたをするのか把握するだけで大分時間が取られてしまう。試験場では必要以上に難しく見えてしまったことだろう。

解答

\((1)\) \(p_1\)は条件\((a)\)から\(\displaystyle \underline{\frac{1}{3}}\)となる。点\((1, 0)\)に達する確率は、\((0, 0)\to (1, 0)\)と進む場合と、\((0, 0)\to (0, 1)\to (1, 1)\to (1, 0)\)と進む場合、もしくは\((0, 0)\to (0, -1)\to (1, -1)\to (1, 1)\)と進む場合がある。
\((a)\) \((0, 0)\to (1, 0)\)と進み、さらに\((2, 0)\)に進む確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{3} = \frac{1}{9}\)である。
\((b)\) \((0, 0)\to (0, 1)\to (1, 1)\to(1, 0)\)と進み、さらに\((2, 0)\)に進む確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{2}\times \frac{1}{3}\times 1 = \frac{1}{18}\)である。
\((c)\) \((0, 0)\to (0, -1)\to (1, -1)\to (1, 1)\)と進み、さらに\((2, 0)\)に進む確率は、\((b)\)と同じで\(\displaystyle \frac{1}{18}\)である。

したがって、\(\displaystyle p_2 = \frac{1}{9}+\frac{1}{18}+\frac{1}{18} = \underline{\frac{2}{9}}\)である。

\(Q\)の移動概略図。

\(p^{\prime}_1\)は点\((0, 1)\)から点\((1, 1)\)に進む確率だから、条件\((a), (c)\)から\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{2} = \underline{\frac{1}{6}}\)である。

点\((1, 1)\to (2, 1)\)と進むには、\((0, 0)\to (0, 1)\to (1, 1)\to (2, 1)\)というルートと、\((0, 0)\to (1, 0)\to (1, 1)\to (2, 1)\)というルートがある。前者の確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{2}\times \frac{1}{3} = \frac{1}{18}\)で、後者の確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{3}\times \frac{1}{2} = \frac{1}{18}\)であるから、\(\displaystyle p^{\prime}_2 = \frac{1}{18}+\frac{1}{18} = \underline{\frac{1}{9}}\)である。

\(Q\)の移動概略図。

\((2)\) 点\(Q\)が\(x = k \ (k = 0, 1, 2, \cdots, )\)で停止する確率を\(q_k\)とする。点\(Q\)が\(x = 0\)で停止する確率は、\((0, 0)\to (0, 1)\to (0, 2)\)と進む場合か、\((0, 0)\to(0, -1)\to(0, -2)\)と進む場合があり、どちらの確率も\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{2} = \frac{1}{6}\)である。したがって、\(\displaystyle q_0 = \frac{1}{6}\times 2 = \frac{1}{3}\)である。

点\(Q\)が\(x = 1\)で停止する確率を求める。点\(Q\)が\(x = 1\)において\(y = 2\)に触れる確率は、\((0, 0)\to (0, 1)\to (1, 1)\to (1, 2)\)と進む場合か、\((0, 0)\to (1, 0)\to (1, 1)\to (1, 2)\)と進む場合があり、前者の確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{2}\times \frac{1}{3} = \frac{1}{18}\)で、後者の確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{3}\times \frac{1}{2} = \frac{1}{18}\)である。したがって、点\(Q\)が\(x = 1\)で\(y = 2\)にふれる確率は\(\displaystyle \frac{1}{18}+\frac{1}{18} = \frac{1}{9}\)である。対称性から、点\(Q\)が\(x = 1\)で\(y = -2\)に触れる確率も\(\displaystyle \frac{1}{9}\)となるので、\(\displaystyle q_1 = 2\times \frac{1}{9} = \frac{2}{9}\)となる。以上から、点\(Q\)が\(x = 2\)上の点に達する確率は、\(\displaystyle 1-q_0-q_1 = 1-\frac{1}{3}-\frac{2}{9} = \underline{\frac{4}{9}}\)となる。

次に、点\(Q\)が\(x = 2\)で停止する確率を求める。点\(Q\)が\(x = 2\)で\(y = 2\)にふれるのは、\(\cdots \to (1, 1)\to (2, 1)\to (2, 2)\)と進む場合と、\(\cdots \to (1, 0)\to (2, 0)\to (2, 1)\to (2, 2)\)と進む場合がある。
\((a)\) \(\cdots \to (1, 1)\to (2, 1)\to (2, 2)\)と進む場合、確率は\(\displaystyle p^{\prime}_2\times \frac{1}{3}\)となる。
\((b)\) \(\cdots \to (1, 0)\to (2, 0)\to (2, 1)\to (2, 2)\)と進む場合、確率は\(\displaystyle p_2\times \frac{1}{3}\times \frac{1}{2}\)となる。

したがって、点\(Q\)が\(x = 2\)で\(y = 2\)n触れる確率は、\(\displaystyle \frac{p^{\prime}_2}{3} + \frac{p_2}{6}\)となる。対称性から、点\(Q\)が\(x = 2\)で\(y = -2\)に触れる確率も、\(\displaystyle \frac{p^{\prime}_2}{3} + \frac{p_2}{6}\)となるので、\(\displaystyle q_2 = 2\times \left(\frac{p^{\prime}_2}{3} + \frac{p_2}{6}\right) = \frac{4}{27}\)となる。以上から、点\(Q\)が\(x = 3\)上の点に達する確率は、\(\displaystyle 1-q_0-q_1-q_2 = 1-\frac{1}{3}-\frac{2}{9}-\frac{4}{27} = \underline{\frac{8}{27}}\)となる。

\((3)\) 点\(Q\)が\((n+1, 0)\)に達するのは、\(\cdots\to (n-1, 0)\to (n, 0)\to (n+1, 0)\)と進む場合と、\(\cdots \to (n, 1)\to (n, 0)\to (n+1, 0)\)と進む場合、または\(\cdots \to (n, -1)\to (n, 0)\to (n+1, 0)\)と進む場合がある。最初の確率は\(\displaystyle \frac{p^{\prime}_n}{3}\)であり、後二つの確率は\(\displaystyle \frac{p^{\prime}_n}{3}\)であるから、\(\displaystyle p_{n+1} = \frac{p_n}{3} + \frac{2}{3}p^{\prime}_n\)である。

点\(Q\)が\((n+1, 1)\)に達するのは、\(\cdots \to (n-1, 1)\to (n, 1)\to (n+1, 1)\)と進む場合と、\(\cdots \to (n, 0)\to (n, 1)\to (n+1, 1)\)と進む場合がある。最初の確率は\(\displaystyle \frac{p^{\prime}_n}{3}\)であり、後の確率は\(\displaystyle \frac{p_n}{3}\times \frac{1}{3}\times \frac{1}{2} = \frac{p_n}{6}\)であるから、\(\displaystyle p^{\prime}_{n+1} = \frac{p^{\prime}_n}{3} + \frac{p_n}{6}\)である。まとめると、$$\begin{cases}\displaystyle p_{n+1} = \frac{p_n}{3} + \frac{2}{3}p^{\prime}_n\\ \displaystyle p^{\prime}_{n+1} = \frac{p^{\prime}_n}{3} + \frac{p_n}{6}\end{cases}$$である。これをみると、\(\displaystyle p^{\prime}_{n+1} = \frac{p_{n+1}}{2}\)が分かる。つまり、\(\displaystyle p^{\prime}_n = \frac{p_n}{2}\)である。これは\(n = 1\)でも成立する。上の式に代入して、\(\displaystyle p_{n+1} = \frac{2}{3}p_n\)である。\(\displaystyle p_1 = \frac{1}{3}\)であったから、\(\displaystyle p_n = \frac{1}{3}\left(\frac{2}{3}\right)^{n-1}\)となる。したがって、\(\displaystyle p^{\prime}_{n} = \frac{1}{6}\left(\frac{2}{3}\right)^{n-1}\)である。

さて、点\((m, 0)\)に達するには、\((m-1, 0)\to (m, 0)\)と進む場合(確率は\(p_m\))と、\((m, 1)\to (m, 0)\)と進む場合(確率は\(\displaystyle p^{\prime}_n \times \frac{1}{3}\))、および\((m, -1)\to (m, 0)\)と進む場合(確率は同じく\(\displaystyle p^{\prime}_m\times \frac{1}{3}\))の\(3\)通りがある。よって、求める確率は\(\displaystyle p_m + \frac{p^{\prime}_m}{3}\times 2 = \underline{\left(\frac{2}{3}\right)^{m+1}}\)となる。

解説

\((1)\) 具体的に考えてみるという問題であるが、\(p_2, p^{\prime}_1\)を考え始めるあたりで頭痛がしてくる。\(p_1\)は条件\((a)\)そのままなのでこれだけでも記述しておきたい。 グラフを書き条件をよく読むと、点\((2, 0)\)に進むのも点\((2, 1)\)に進むのもそれほど多くの進み方はないことがわかる。具体的にルートを書き上げてしまうとよい。

\((2)\) 補助として、点\(Q\)が\(x = k\)で停止する確率を持ち出す。そのような確率を\(q_k\ \ (k = 0, 1, 2, \cdots)\)とすると、\(Q\)が\(x = n\)に達する確 率は、$$1-\sum_{k=0}^{n-1}{q_k}$$となる。ここまで設定できたら後は実際に\(q_0, q_1, q_2\)を求めてし まうのが早い。その際、\((1)\)の\(p_2, p^{\prime}_2\)が利用できる。

\((3)\) 漸化式を設定する。立ててみようという気にさえなれば、漸化式は簡単に解けるが、そこまで辿り着かなかったものも大勢いたことだろう。余談であるがこの問題の出来は大変悪かったようで、受験生のみならず、予備校の解答作成も苦労したという。大手予備校(Y, K, S) の内K の解答が一番優れている(問題作成者談)」とのことである。今現在ネット上でこの解答を読むことはできない。

関連問題

1987年東京医科歯科大学数学問題2 場合の数と置き換え
2001年東京医科歯科大学前期数学問題3 場合の数、誘導の利用
2006年度前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、場合の数、置き換え
2009年東京医科歯科大学前期数学問題2 整式と整数、場合の数
2011年東京医科歯科大学前期数学問題1 確率と漸化式
2021年東京医科歯科大学数学問題1 場合の数と数え上げ、重複組み合わせの考え方

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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