[math]2000年京都大学前期数学問題理系問題3

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問題

\(\displaystyle \overrightarrow{a} = (1, 0, 0), \overrightarrow{b} = \left(\cos{\frac{\pi}{3}, \sin{\frac{\pi}{3}}}, 0\right)\)とする。
\((1)\) 長さ\(1\)の空間ベクトル\(\overrightarrow{c}\)に対し$$\cos{\alpha} = \overrightarrow{a}\cdot \overrightarrow{c}, \cos{\beta} = \overrightarrow{b}\cdot\overrightarrow{c} $$とおく。このとき次の不等式\(\text{(*)}\)が成り立つことを示せ。$$\text{(*)} \ \ \cos^2{\alpha}-\cos{\alpha}\cos{\beta}+\cos^2{\beta} \leq \frac{3}{4}$$
\((2)\) 不等式\(\text{(*)}\)を満たす\((\alpha, \beta)\ \ (0\leq \alpha\leq \pi, 0\leq \beta \leq \pi)\)の範囲を求めよ。

方針

以下の問題にそっくりである。\((1)\)は座標設定する。ただし、\((2)\)が難しい。三角関数の変形を行い、図示できる形まで持っていく。

関連問題。

解答

\((1)\) \(\overrightarrow{c} = (x, y, z)\)とする。ただし、\(x^2+y^2+z^2=1\)である。\(\displaystyle \overrightarrow{a}\cdot \overrightarrow{c} = x = \cos{\alpha}, \overrightarrow{b} \cdot \overrightarrow{c} = \frac{x+\sqrt{3}y}{2} = \cos{\beta}\)だから、$$\begin{eqnarray}\cos^2{\alpha}-\cos{\alpha}\cos{\beta}+\cos^2{\beta} & = & x^2-x\cdot \left(\frac{x+\sqrt{3}y}{2}\right)+\left(\frac{x+\sqrt{3}y}{2}\right)^2\\ & = & \frac{3}{4}(x^2+y^2)\\ & = & \frac{3}{4}(1-z^2)\\ & \leq & \frac{3}{4}\end{eqnarray}$$となり、示される。

\((2)\) \(\text{(*)}\)は変形すると、$$\left(\cos{\alpha}-\frac{1}{2}\cos{\beta}\right)^2+\frac{3}{4}\cos^2{\beta}\leq \frac{3}{4}$$となる。したがって、$$\left(\cos{\alpha}-\frac{1}{2}\cos{\beta}\right)^2\leq \frac{3}{4}(1-\cos^2{\beta}) = \frac{3}{4}\sin^2{\beta}$$である。よって、$$-\frac{\sqrt{3}}{2}\sin{\beta}\leq \cos{\alpha}-\frac{1}{2}\cos{\beta}\leq \frac{\sqrt{3}}{2}\sin{\beta}$$である。さらに変形して、$$\cos{\left(\beta + \frac{\pi}{3}\right)}\leq \cos{\alpha}\leq \cos{\left(\beta -\frac{\pi}{3}\right)}$$である。\(0\leq \alpha\leq \pi, 0\leq \beta \leq \pi\)に注意すると、$$\begin{cases}\displaystyle\beta + \frac{\pi}{3}\geq \alpha\geq \beta-\frac{\pi}{3}\\ \displaystyle \beta + \frac{\pi}{3}\leq 2\pi-\alpha\\ \displaystyle \beta-\frac{\pi}{3}\geq -\alpha\end{cases}$$となる。これを図示すると以下の図のようになる。ただし、境界をすべて含む。

図の線部が求める領域。境界をすべて含む。

解説

\((2)\)は難問で、わざわざ\((1)\)で\(\text{(*)}\)を示してるのになぜこんな問題を考えなくてはいけないのかと感じた受験生も多かっただろう。問題をよく読むと\((1), (2)\)は全く別の問題であることに気がつく。\((1)\)はこの様にべクトルと成す角を設定した時に、\(\text{(*)}\)が成り立つことを示す問題で、\((2)\)は\(\text{(*)}\)が成り立つような角度\(\alpha, \beta\)はどのようなものかという問題である。無関係な訳ではなく図形的な考察を行うと色々楽しめるが、解かされる側としてはたまったものではない。\(\cos\)は考えている範囲で減少関数であるから一番上の不等式は良いだろう。真ん中に関しては\(\cos{(2\pi-\alpha)} = \cos{\alpha}\)に注意して考えると良い。また、一番下に関しては\(\cos{(-\alpha) = \cos{\alpha}}\)であることを利用して条件を導いている。単位円を書いてじっくり考えて見ると良い。

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