[math]2020年東京医科歯科大学前期数学問題1

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問題

\(N\)を自然数として、表と裏が等確率で出るコインを\(N\)回投げる試行を考え、この試行の結果によって関数\(f(x)\)を次のように定義する。
\(1. \) \(x\leq 0\)のとき、\(f(x) = 0\)
\(2. \) \(x\)が\(N\)以下の自然数\(n\)に等しいとき、\(n\)回目に表が出れば\(f(n) = f(n-1)+1\)、裏が出れば\(f(n) = f(n-1)-1\)
\(3. \) \(x\)が\(0 < x < N\)を満たし、かつ自然数でないとき、\(n-1 < x < n\)を満たす自然数を\(n\)として、\(f(x) = (x-n+1)f(n) + (n-x)f(n-1)\)
\(4. \) \(x > N\)のとき、\(f(x) = f(N)\)
このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(N = 8\)のとき、試行の結果が「表、表、裏、裏、表、裏、裏、裏」の順となったとき、\(f(x)\)のグラフを描け。
\((2)\) 自然数\(N\)と\(0\)以上の整数\(k\)について、\(f(x)\)が極値をとる点の個数が\(k\)となる確率を\(P(k)\)とする。\(P(k)\)を\(N, k\)を用いて表わせ。
\((3)\) 自然数\(N\)と\(0\)以上の整数\(k\)について、\(f(x)\)が極大となる点の個数が\(k\)となる確率を\(Q(k)\)とする。\(Q(k)\)を\(N, k\)を用いて表わせ。
\((4)\) \((3)\)の\(Q(k)\)について\(\displaystyle \sum_{k=0}^{N}{kQ(k)}\)を\(N\)を用いて表わせ。

方針

\((1)\) 問題文が長いので、まずは様子を掴む。

\((2)\) コインの種類が変化するとき、極値をとる。

\((3)\) \((2)\)の結果が利用できる。極大値の個数を固定して考えると良い。

\((4)\) 組み合わせの公式に帰着させる。すなわち、$$\begin{eqnarray}\sum_{k=0}^{n}{_{n}{\mathbb{C}}_{k}} & = & 2^n\\ \sum_{k=0}^{n}{k{_{n}{\mathbb{C}}_{k}}} & = & n2^{n-1}\end{eqnarray}$$を使える形に持っていく。

解答

\((1)\) \(f(0) = 0\)で、\(f(1) = 1, f(2) = 2, f(3) = 1, f(4) = 0, f(5) = 1, f(6) = 0, f(7) = -1, f(8) = -2\)である。また、\(f(x) = (x-n+1)f(n) + (n-x)f(n-1)\)であるから、\(f(x)\)は点\((n-1, f(n-1))\)と\((n, f(n))\)を結ぶ直線になる。これを図示すると次の図のようになる。

解答図。

\((2)\) \(f(x)\)が極値をとるのは、コインの種類が変化するときである。\(N=1\)のときは\(\underline{P(0) = 1, P(k) = 0\ (k\geq 1)}\)となる。以降は\(N\geq 2\)とする。極値をとる点の個数として可能なのは\(k = 0, 1, \cdots, N-1\)のときであり、\(k \geq N\)のとき\(\underline{P(k) = 0}\)である。\(N-1\)箇所の中から\(k\)箇所のコインが変化する箇所を選ぶのは\(_{N-1}{\mathbb{C}}_{k}\)通りである。コインが表か裏かで\(2\)通りある。全てのコインの出方は\(2^N\)通りであるから、\(\displaystyle \underline{P(k) = \frac{_{N-1}{\mathbb{C}}_{k}}{2^{N-1}}}\)となる。これは\(k = 0\)のときにも成り立つ。

\(n = 6\)のとき。例えば\(k = 2\)とすると、上の\(5\)つの矢印から\(2\)つを選ぶ。左から\(2\)番目と\(3\)番目の矢印を選んだとき、「表表裏表表表」か「裏裏表裏裏裏」の\(2\)通りがある。

\((3)\) \(f(x)\)が極大値をとるのは、コインが表から裏に変化するときである。\(N=1\)のときは\(\underline{Q(0) = 1, Q(k) = 0\ (k\geq 1)}\)となる。以降は\(N\geq 2\)とする。極値をとる点の個数として可能なのは\(\displaystyle k = 0, 1, \cdots, \left[\frac{N}{2}\right]\)のときであり、\(\displaystyle k \geq \left[\frac{N}{2}\right]\)のとき\(\underline{P(k) = 0}\)である。極大値をとる点の個数が\(k\)個、極小値をとる点の個数が\(l\)個とする。\(|k-l| \leq 1\)であるから、\(k-l = -1, 0, 1\)の\(3\)通りが考えられる。極値の数が\(2k-1\)個のとき、\((l, k) = (k-1, k), (k, k-1)\)であり、極値の数が\(2k\)個のとき、\((l, k) = (k, k)\)であり、極値の数が\(2k+1\)個のとき、\((l, k) = (k, k+1), (k+1, k)\)である。対称性も考慮するとこれから、$$\begin{eqnarray}Q(k) & = & \frac{1}{2}P(2k-1) + P(k) + \frac{1}{2}P(2k+1)\\ & = & \frac{_{N-1}{\mathbb{C}}_{2k-1} + 2{_{N-1}{\mathbb{C}}_{2k}} + _{N-1}{\mathbb{C}}_{2k+1}}{2^{N}} \\ & = & \frac{(_{N-1}{\mathbb{C}}_{2k-1} + _{N-1}{\mathbb{C}}_{2k}) + (_{N-1}{\mathbb{C}}_{2k} + _{N-1}{\mathbb{C}}_{2k+1})}{2^N} \\ & = & \frac{_{N}{\mathbb{C}}_{2k} + _{N}{\mathbb{C}}_{2k+1}}{2^N} \\ & = & \underline{\frac{_{N+1}{\mathbb{C}}_{2k+1}}{2^N}}\end{eqnarray}$$となる。\(n > r\)のとき暗黙に\(_{n}{\mathbb{C}}_{r} = 0\)であることを認めれば、これはどんな\(N, k\)についても成立することが分かる。

\((4)\) \((3)\)から$$\begin{eqnarray}\sum_{k=0}^{N}{kQ(k)} & = & \frac{1}{2^N}\sum_{k=0}^{N}{k{_{N+1}{\mathbb{C}}_{2k+1}}}\\ & = & \frac{1}{2^N}\left(\frac{1}{2}\sum_{k=0}^{N}{(2k+1){_{N+1}{\mathbb{C}}_{2k+1}}}-\frac{1}{2}\sum_{k=0}^{N+1}{_{N+1}{\mathbb{C}}_{2k+1}}\right)\\ & = & \frac{1}{2^N}\left(\frac{1}{2}\sum_{k=0}^{N}{(N+1){_{N}{\mathbb{C}}_{2k}}}-\frac{1}{2}\sum_{k=0}^{N+1}{_{N+1}{\mathbb{C}}_{2k+1}}\right)\\ & = & \frac{1}{2^N}\left(\frac{N+1}{2}\cdot \frac{2^{N}}{2}-\frac{1}{2}\cdot \frac{2^{N+1}}{2}\right)\\ & = & \underline{\frac{N-1}{4}}\end{eqnarray}$$となる。

解説

いずれも高度で難しい。特に\((3)\)は一筋縄ではいかない。\((3)\)を解決しても、\((4)\)はおまけというわけにいかない。

\((1)\) $$\begin{eqnarray}0<x<1 & \to & x \\ 1<x<2 & \to & 2(x-1)+(2-x) \\ & = & x \\ 2<x<3 & \to & (x-2) + 2(3-x)\\ & = & -x+4 \\ 3 < x < 4 & \to & 4-x \\ 4 < x < 5 & \to & x-4 \\ 5 < x < 6 & \to & 6-x \\ 6 < x < 7 & \to & -(x-6) \\ & = & -x+6\\ 7 < x < 8 & \to & -2(x-7) -(8-x)\\ & = & -x+6\end{eqnarray}$$となる。

\((2)\) コインの配置の問題に置き換える。

\((3)\) ここでは極大値の個数を中心に考えるので、極大値の個数が例えば\(5\)個のとき、極小値の個数は極大値の個数と\(1\)個違いの値か等しいかのどちらかなので、極値の個数は\(5 + 4 = 9, 5 + 5 = 10, 5 + 6 = 11\)のいずれかになる。これと、\(P(2k+1)\)に対して、極大値の個数、極小値の個数が\((k, k+1)\)になる確率と、\((k+1, k)\)になる確率は対称性から等しいので、解答の立式となる。

\((4)\) 期待値を求めよという問題である。二項係数の和について、$$_{n}{\mathbb{C}}_{0}+_{n}{\mathbb{C}}_{2} + \cdots +_{n}{\mathbb{C}}_{2k} + \cdots = _{n}{\mathbb{C}}_{1} + _{n}{\mathbb{C}}_{3} + \cdots + _{n}{\mathbb{C}}_{2k+1}+\cdots$$が成り立つ。これは、二項係数の公式$$\sum_{k=0}^{n}{(1+x)^k} = _{n}{\mathbb{C}}_{0} + _{n}{\mathbb{C}}_{1}x + _{n}{\mathbb{C}}_{2}x^2 + \cdots + _{n}{\mathbb{C}}_{k}x^k + \cdots + _{n}{\mathbb{C}}_{n}x^n$$で\(x = -1\)とすれば導くことができる。また、途中の式変形で$$_{n}{\mathbb{C}}_{r} = \frac{n}{r}{_{n-1}{\mathbb{C}}_{r-1}}$$を用いている。これは二項係数を\(\displaystyle _{n}{\mathbb{C}}_{r} = \begin{pmatrix}n\\ r\end{pmatrix}\)と書くと、$$\begin{pmatrix}n\\ r\end{pmatrix} = \frac{n}{r}\begin{pmatrix}n-1 \\ r-1\end{pmatrix}$$となり覚えやすい。

関連問題

1997年京都大学理系前期数学2 整数、二項係数
2006年度前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、場合の数、置き換え
2021年東京工業大学数学問題3 整数と二項係数

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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