[paper]24-Hour Urinary Sodium and Potassium Excretion and Cardiovascular Risk

mason jar filled with salt paper
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論文リンク

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NEJMの論文から。Harvard大学の公衆衛生や腎臓の共同グループから。

1分で分かる本論文のまとめ

忙しい人向け。

  1. 塩分(NaCl)と血圧・心疾患の関連は重要
  2. 塩分摂取量と心疾患リスクはこれまでコントラバーシャルであった
  3. 健康成人の24時間尿量からNaとKの排出を測定
  4. 10,709名の前向きコホート研究(6つのコホートを結合)
  5. 尿中Na\(\uparrow\)K\(\downarrow\)Na/K\(\uparrow\)すべてで冠動脈疾患、心筋梗塞、脳卒中のリスク\(\uparrow\)
  6. Dose responseも確認。有害事象なし。

この論文が出版されるまでの背景

もともと食事と血圧、心疾患の関連についてはFragmingham研究の時代から指摘されていた。1997年のNEJMの論文では、フルーツと野菜が多く、低脂質かつ飽和脂肪酸およびトータル脂質の少ない食事は血圧を低下させることが指摘されている。

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この論文のIntroductionですでに食事中のK摂取量増加が高血圧を予防する可能性について触れられている。

塩分摂取量と疾患

https://bmjopen.bmj.com/content/4/4/e004549

2010年代のHeらの記念碑的論文が上。英国での塩分摂取量低下が血圧低下に結びつき、脳卒中や心疾患などの有意な減少につながったとする論文。人口動態での変化をみた論文で、消費者が味の変化に気が付かないように数年かけて流通する食料の塩分を15%減少させた。脳卒中や心血管イベントの死亡率を40%低下させ、医療費は2600億円/年減少したとされる。すごい研究。

代替食塩の効果

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2021年コロナ禍の中、Break-through的な研究が北京大学のグループから発表された。2万人規模のRCTでNaClと代替食塩(75% NaCl, 25%KCl)の効果を比較。脳卒中発症、心血管イベント、死亡率ともに代替食塩の圧勝!(脳卒中14%、心血管イベント13%、死亡率12%減少)。フォローアップ率は100%!

中国の600の村をランダムに分けて、平均4年間食事や漬物など用いる食塩をすべて支給したという\(\cdots\)。どのくらいお金かかっているのか気になる。

このBreak-throughを受けてNEJMではReviewを掲載

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NEJMでは大きな論文が出たあとは必ずReviewを掲載してくれる。このReviewで面白かったのは以下。

Potassium Switch

体内でK不足のとき遠位尿細管でポタシウムスイッチが入り、KとNaを同時に体内で保持する。代替食塩摂取でKが増加すると、このスイッチがオフとなり、KとNaが保持されず、血圧が低下する。

そもそも代替食塩とはなにか

【味の素KK】「やさしお®」
塩分半分!おいしさそのまま!量も使い方もそのまま!「減塩」をサポートするお塩「やさしお®」公式サイト。

日本だと味の素の「やさしお」が一番流通しているかな。これは50%が塩化ナトリウムで、50%は塩化カルシウム。普通に使っても塩分を半分にすることができると謳っている。ただし値段は高くて、180gで約400円。食塩はおおよそ1kgで200-300円なので、7-11倍の値段になる。

塩分摂取量の基準

厚生労働省が2020年に出版した「日本人の食塩摂取基準」における1日の塩分摂取量(食塩摂取量)の基準は男性で7.5g未満、女性で6.5g未満となっている。ただし、WHOの基準では性別に関係なく1日5g未満が推奨されている。ちなみに、平成28年の日本人の1日の平均塩分摂取量は男性10.8g、女性9.2gとなっていて、かなり塩分摂取量は多い。画像は掲載しないが、ラーメン◯郎の大ラーメンはスープ込で塩分25gとなっている。

本論文の背景

  1. Spot尿の測定でNa摂取が低い群と高い群両方で心疾患リスク\(\uparrow\)との結果
  2. 測定の限界(摂取量の不正確さ)と基礎疾患、尿排泄との関連が矛盾する結果に
  3. 測定式が低Naの場合正確でなく、また1日の中でもNa排泄に変動があり、Spot尿では不十分
  4. 基礎疾患のある人ではNa摂取量\(\downarrow\)となっている

方法

NPFS (the Health Professionals Follow-up Study), NHS (the Nurse’s Health Study) NHS II (the Nurse’s Health Study II) PREVEND (the Prevention of Renal and Vascular End-Stage Disease) TOHP I and TOHP II (the Trials of Hypertension Prevention)という6つのコホートを結合。

HPFSとNHSは医療従事者のコホートで合計2,282+1,217人、PREVENDは8,592人、TOHPは2,182人。

被験者ごとに24時間尿の各サンプルを平均。Outcomeは冠動脈再灌流、致死的あるいは致死的でない心筋梗塞/脳血管障害。ランダム効果メタ解析(メタ解析にはfixed-effect modelとrandom-effect modelがある。random-effect modelでは個々の研究における問題設定は異なるものの、類似した問題設定をもつ研究が密接に関連する一群をなすと想定し、各々の研究はある問題に関するすべての研究からランダムにサンプリングされたものとして扱う)。

結果

Result1

どのコホートも白人が多数。HPFS, NHSは医療従事者コホートなので中卒はいない。医療従事者なのに意外と喫煙している人も多い。学歴、喫煙、飲酒、身体活動などで調整。

result1の続き。
result2. Main result

上がメインの結果。Na, K, Na/Kともにきれいな結果が出ている。dose responseも確認できている。

Main resultのグラフ化。

グラフにしたものが上。きれいな結果だね。

議論

これまでのメタ解析で示されていたNa摂取量と心血管イベントとの量的関係を確認。単回の尿中Na排泄での測定の限界を確認。白人メインの研究であることはLimitationでも言及あり。

その他減塩研究

面白かったのが以下の研究。電流を流し、舌への刺激で減塩食でも感じる味覚が1.5倍塩味を感じるようになるという。

減塩食の「塩味を1.5倍」にする箸型デバイス、キリンと明大が開発
キリンホールディングスと明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室は、減塩食品の味わいを増す、電気刺激を用いた箸型のデバイスを開発した。減塩食を食べたときに「感じる塩味が1.5倍程度に増す」ことを世界で初めて確認したという。

感想

コンビニのおにぎりとか塩分表示をみると1個で2g近くになるものも。すべての食品に代替食塩が使われるようになれば健康へのインパクトは大きい気がする。流通量が増えれば値段も下がるかな。宮古島の雪塩とかもミネラル多いのかな。

宮古島の雪塩
素晴らしい自然の恵みをそのままに、こだわりのおいしさにかえて皆さまのもとへお届けいたします。

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