問題
\(a\)を正の実数、\(m\)を実数とし、\(k_1 = m + \sqrt{m^2+1}, k_2 = m-\sqrt{m^2+1}\)とする。さらに、\(C_0, C_1, C_2\)を複素数平面上でそれぞれ$$\begin{eqnarray}C_0: & (m+i)z + (m-i)\bar{z} + 2a = 0, C_1:& (k_1+i)z + (k_1-i)\bar{z}-2a{k_1}^2 = 0 \\ C_2:& (k_2+i)z+(k_2-i)\bar{z} -2a{k_2}^2 = 0\end{eqnarray}$$を満たす点\(z\)の集合とする。ここで、\(i\)は虚数単位、\(\bar{z}\)は\(z\)と共役な複素数を表す。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(C_0, C_1, C_2\)がいずれも直線であることを示せ。
\((2)\) \(C_0\)と\(C_1\)の共有点を\(P_1\)とし、\(m\)を変化させたとき\(P_1\)が動く曲線を\(F_1\)とする。\(F_1\)はどのような曲線か。\(a\)を用いて答えよ。
\((3)\) \(m > 0\)のとき、\(C_1, C_2\)と虚軸で囲まれる領域の面積を\(T\)とし、\((2)\)の\(F_1\)と\(C_1, C_2\)、虚軸で囲まれる領域の面積を\(S\)とする。\(\displaystyle \frac{T}{S}\)が\(a\)によらず一定であることを示し、その極限値\(\displaystyle \lim_{m\to\infty}{\frac{T}{S}}\)を求めよ。
方針
\((1)\) 一般に複素数平面上の\(2\)点を通る直線は$$\bar{\alpha}z-\alpha \bar{z} + \beta = 0$$の形で表される。ここでは\((2)\)以降も視野に入れて座標を導入する。
\((2)\) \(x, y\)の関係式を求める。
\((3)\) \((2)\)の答えと、\(C_1, C_2\)のみ図に書くとわかりやすい。
解答
\((1)\) \(x, y\)を実数として、\(z = x + yi\)と置いて\(C_0\)の方程式に代入すると、$$\begin{eqnarray}(m+i)(x+yi) + (m-i)(x-yi)+2a & = & 0 \\ 2mx-2y+2a & = & 0\end{eqnarray}$$となるから、\(C_0: y = mx+a\)は直線になる。同様に\(C_1\)でも$$\begin{eqnarray}(k_1+i)(x+yi) + (k_1-i)(x-yi)-2a{k_1}^2 & = & 0 \\ 2k_1x-2y-2a{k_1}^2 & = & 0\end{eqnarray}$$となるから、\(C_1: y = k_1x-a{k_1}^2\)は直線になる。\(C_2\)も\(C_2: y = k_2x-a{k_2}^2\)で直線になる。
\((2)\) \((1)\)から\(C_0\)と\(C_1\)の方程式を連立させると、$$\begin{eqnarray}mx +a & = & k_1x-a{k_1}^2\\ \sqrt{m^2+1}x & = & a({k_1}^2+1)\\ & = & a(1 + m^2+2m\sqrt{m^2+1}+m^2+1)\\ & = & 2a\sqrt{m^2+1}(m+\sqrt{m^2+1})\end{eqnarray}$$であるから、\(x = 2a(m+\sqrt{m^2+1})\)となる。これから、$$\begin{eqnarray}\sqrt{m^2+1} & = & \frac{x}{2a}-m\\ m^2+1 & = & \left(\frac{x}{2a}-m\right)^2, \ \ \frac{x}{2a}-m \geq 0 \\ 1 & = & \frac{x^2}{4a^2}-\frac{mx}{a}\\ mx & = & \frac{x^2}{4a}-a\end{eqnarray}$$となる。\(C_0: y = mx+a\)に代入して、\(\displaystyle \underline{y = \frac{x^2}{4a}}\)である。これは放物線となる。また、$$\begin{eqnarray}x & = & 2a(m+\sqrt{m^2+1})\\ & = & 2a\frac{1}{\sqrt{m^2+1}-m} > 0\end{eqnarray}$$であるから、\(\underline{x > 0}\)の部分となる。
\((3)\) まず\(C_1\)と\(C_2\)の共有点を求める。\((1)\)から\(C_1\)と\(C_2\)の方程式を連立させると、$$\begin{eqnarray}k_1x-a{k_1}^2 & = & k_2x-a{k_2}^2\\ (k_1-k_2)x & = & a(k_1+k_2)(k_1-k_2)\\ x & = & a(k_1+k_2)\\ & = & 2am\end{eqnarray}$$である。\(C_1\)の虚軸との切片は\(C_1\)の方程式で\(x = 0\)として\(-a{k_1}^2\)で、\(C_2\)の虚軸との切片は\(C_2\)の方程式で\(x = 0\)として\(-a{k_2}^2\)となる。したがって、\(T\)は$$\begin{eqnarray}T & = & 2am\cdot |-a{k_1}^2+a{k_2}^2| \\& = & 2a^2m\cdot ({k_1}^2-{k_2}^2) \\ & = & 2a^2m\cdot 2m\sqrt{m^2+1}\\ & = & 4a^2m^2\sqrt{m^2+1}\end{eqnarray}$$である。一方下の図から$$\begin{eqnarray}S + T & = & \int_{0}^{2ak_1}{\left(\frac{x^2}{4a}-(k_1x-a{k_1}^2)\right)dx}\\ & = & \frac{1}{4a}\int_{0}^{2ak_1}{(x^2-4ak_1x+4a^2{k_1}^2)dx}\\ & = & \frac{1}{4a}\int_{0}^{2ak_1}{(x-2ak_1)^2dx}\\ & = & \frac{1}{4a}\left[\frac{(x-2ak_1)^3}{3}\right]_{0}^{2ak_1}\\ & = & \frac{1}{4a}\cdot \frac{8a^3{k_1}^3}{3}\\ & = & \frac{2a^2{k_1}^3}{3}\\ & = & \frac{2a^2}{3}(m+\sqrt{m^2+1})^3\end{eqnarray}$$である。
したがって、$$\begin{eqnarray}\frac{S+T}{T} & = & \frac{1}{6}\cdot \frac{(m+\sqrt{m^2+1})^2}{m^2\sqrt{m^2+1}} \\ & = & \frac{1}{6}\cdot \frac{\left(1+\sqrt{1+\frac{1}{m^2}}\right)^3}{\sqrt{1+\frac{1}{m^2}}}\\ & \to & \frac{4}{3}\ \ (m\to\infty)\end{eqnarray}$$となる。これから、\(\displaystyle \underline{\lim_{m\to\infty}{\frac{T}{S}} = 3}\)である。
解説
\((1)\) 複素数平面上の\(2\)点\(\alpha, \beta\)を通る直線を考えると、\(\displaystyle \frac{z-\beta}{z-\alpha}\)は実数であるから、$$\begin{eqnarray}\frac{z-\beta}{z-\alpha} & = & \overline{\frac{z-\beta}{z-\alpha}}\\ \iff (z-\beta)(\bar{z}-\bar{\alpha}) & = & (\bar{z}-\bar{\beta})(z-\alpha)\\ \iff -z\bar{\alpha}-\beta\bar{z}+\bar{\alpha}\beta & = & -\alpha\bar{z}-\bar{\beta}z+\alpha\bar{\beta}\end{eqnarray}$$ となる。これから、$$(-\bar{\alpha}+\bar{\beta})z – (-\alpha+\beta)\bar{z}+\bar{\alpha}\beta-\alpha\bar{\beta} = 0$$である。したがって、改めて書き直すと一般に複素数平面上の直線は$$\bar{\alpha}z-\alpha\bar{z} + \beta = 0$$の形で表される。ただし、解答ではこの知識を用いていない。
\((2)\) \(x, y\)の関係を求めるので、\(m\)を消去する。
\((3)\) \(m\)で表すよりも\(k_1\)を用いて計算を進めた方が楽になる。全体を通じて、複素数平面とは名ばかりで、座標の問題として考えるのがやりやすい。
関連問題
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