[math]2019年東京医科歯科大学数学問題1

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問題

\(n\)を\(2\)以上の自然数とし、ひとつのサイコロを\(n\)回くり返し投げるとする。\(n\)以下の自然数\(k\)について、\(k\)回目に\(1\)から\(4\)の目が出たら\(a_k = 1\)、\(5\)または\(6\)の目が出たら\(a_k = 0\)として、数列\(\{a_n\}\)を定義する。さらに数列\(\{b_n\}\)を、\(b_1 = 0\)、\(2\)以上\(n\)以下の自然数\(k\)について\(b_k = (a_k+a_{k-1})(2-a_k-a_{k-1})\)と定義する。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(k\)を\(2\)以上\(n\)以下の自然数とする。\(b_k = 0\)となる確率を求めよ。
\((2)\) \(b_2 = b_3 = \cdots = b_n = 1\)となる確率を\(n\)を用いて表わせ。
\((3)\) \(n\)が\(5\)以上のとき、\(\displaystyle S_n = \frac{b_2}{2}+\frac{b_3}{2^2}+\cdots + \frac{b_n}{2^{n-1}}\)とおく。このとき\(\displaystyle \frac{5}{8}\leq S_n<\frac{15}{16}\)となる確率を求めよ。

方針

\((1)\) \(b_k = 0\)となるのは\(a_{k} + a_{k-1} = 0\)または\(a_{k-1}+a_{k} = 2\)となるときである。

\((2)\) \((a_{k-1}, a_k)\)の値に対して\(b_k\)がどのような値を取るのか考える。

\((3)\) 二進法で\(\displaystyle \frac{5}{8}\)を表すと、$$\begin{eqnarray}\frac{5}{8} & = & \frac{1}{2} + \frac{1}{8}\\ & = & [0.101]_{2}\end{eqnarray}$$であり、\(\displaystyle \frac{15}{16}\)は$$\begin{eqnarray}\frac{15}{16} & = & \frac{1}{2} + \frac{7}{16}\\ & = & \frac{1}{2} + \frac{1}{4} + \frac{3}{16} \\ & = & \frac{1}{2} + \frac{1}{4} + \frac{1}{8} + \frac{1}{16}\\ & = & [0.1111]_{2}\end{eqnarray}$$となる。

解答

\((1)\) \(b_k = 0\)となるとき、\(a_k+a_{k-1} = 0\)または\(a_k+a_{k-1}= 2\)である。\(a_k+a_{k-1} = 0\)のとき、\(k-1\)回目に\(5\)または\(6\)の目が出て、かつ\(k\)回目に\(5\)または\(6\)の目が出れば良い。この確率は\(\displaystyle \frac{2}{6}\cdot \frac{2}{6} = \frac{1}{9}\)である。また、\(a_k+a_{k-1}=2\)のとき、\(k-1\)回目で\(1\)から\(4\)の目が出て、かつ\(k\)回目で\(1\)から\(4\)の目が出れば良い。この確率は\(\displaystyle \frac{4}{6}\cdot \frac{4}{6} = \frac{4}{9}\)である。この二事象は互いに排反であるから、求める確率は\(\displaystyle \frac{1}{9}+\frac{4}{9} = \underline{\frac{5}{9}}\)となる。

\((2)\) \(a_{k-1}, a_k\)の値に対して、\(b_k\)の値は以下のようになる。$$\begin{eqnarray}(a_{k-1}, a_k) = (0, 0) & \to & b_k = 0\\ (a_{k-1}, a_k) = (0, 1), (1, 0) & \to & b_k = 1\\ (a_{k-1}, a_k) = (1, 1) & \to & 0\end{eqnarray}$$したがって、\(a_{k-1}\)か\(a_k\)のどちらかが\(0\)でどちらかが\(1\)のとき\(b_k = 1\)となる。これは\(a_1 = 1, a_2 = 0, a_3 = 1, a_4 = 0, \cdots, \)となる場合と、\(a_1 = 0, a_2 = 1, a_3 = 0, a_4 = 1, \cdots, \)となる場合がある。前者の確率は\(\displaystyle \frac{2}{3}\cdot \frac{1}{3}\cdot \frac{2}{3}\cdot \frac{1}{3}\cdots = \frac{2^{\left[\frac{n+1}{2}\right]}}{3^n}\)、後者の確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\cdot \frac{2}{3}\cdot \frac{1}{3}\cdot \frac{2}{3}\cdots = \frac{2^{\left[\frac{n}{2}\right]}}{3^n}\)となる。求める確率は、\(\displaystyle \underline{\frac{2^{\left[\frac{n+1}{2}\right]}+2^{\left[\frac{n}{2}\right]}}{3^n}}\)である。ただし、\([x]\)は\(x\)を超えない最大の整数を表す。

\((3)\) \(\displaystyle \frac{5}{8} = [0.101]_{2}, \frac{15}{16} = [0.1111]_{2}\)である。\(b_k\)は\(0\)か\(1\)のみの値を取るから、\(\displaystyle \frac{5}{8}\leq S_n< \frac{15}{16}\)となるのは以下の場合である。
\((i)\) \(b_2 = 1, b_3 = 0, b_4 = 1\)かつ\(b_5\)以降は何が出ても良い場合
\((ii)\) \(b_2 = 1, b_3 = 1, b_4 = 0\)かつ\(b_5\)以降は何が出ても良い場合
\((iii)\) \(b_2 = 1, b_3 = 1, b_4 = 1, b_5 = 0\)かつ\(b_6\)以降は何が出ても良い場合
のいずれかになる。

\((i)\)の場合、\(b_2 = 1, b_3 = 0, b_4 = 1\)となるのは、\(a_1 = 0, a_2 = 1, a_3 = 1, a_4 = 0\)か\(a_1 = 1, a_2 = 0, a_3 = 0, a_4 = 1\)である。前者の確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\cdot \frac{2}{3}\cdot \frac{2}{3}\cdot \frac{1}{3} = \frac{4}{81}\)であり、後者の確率は\(\displaystyle \frac{2}{3}\cdot \frac{1}{3}\cdot \frac{1}{3}\cdot \frac{2}{3} = \frac{4}{81}\)である。したがって、\((i)\)の場合の確率は\(\displaystyle \frac{8}{81}\)である。

\((ii)\)の場合、\(b_2 = 1, b_3 = 1, b_4 = 0\)となるのは、\(a_1 = 0, a_2 = 1, a_3 = 0, a_4 = 0\)か\(a_1 = 1, a_2 = 0, a_3 = 1, a_4 = 1\)である。前者の確率は\(\displaystyle \frac{2}{81}\)であり、後者の確率は\(\displaystyle \frac{8}{81}\)である。したがって、\((ii)\)の場合の確率は\(\displaystyle \frac{10}{81}\)である。

\((iii)\)の場合、\(b_2 = 1, b_3 = 1, b_4 = 1, b_5 = 0\)となるのは、\(a_1 = 0, a_2 = 1, a_3 = 0, a_4 = 1, a_5 = 1\)か\(a_1 = 1, a_2 = 0, a_3 = 1, a_4 = 0, a_5 = 0\)である。前者の確率は\(\displaystyle \frac{8}{243}\)であり、後者の確率は\(\displaystyle \frac{4}{243}\)である。したがって、\((iii)\)の場合の確率は\(\displaystyle \frac{12}{243} = \frac{4}{81}\)である。

以上から、求める確率は\(\displaystyle \frac{8+10+4}{81} = \underline{\frac{22}{81}}\)となる。

解説

\((1)\) 少し計算すると、\(b_k\)は\(0\)か\(1\)かしか取らない事がわかる。

\((2)\) 求める確率は\(n\)が奇数のとき、\(\displaystyle \frac{2^{\frac{n-1}{2}}}{3^{n-1}}\)、\(n\)が偶数のとき\(\displaystyle \frac{2^{\frac{n}{2}+1}}{3^n}\)となる。

\((3)\) 面白いことに、求める確率は\(n\)に依らない。ちまちま計算するといくら時間があっても足りないので、二進数を用いるのが良いだろう。

関連問題

1981年東京工業大学数学問題1 数列と極限、隠れた二進数
1991年東京大学前期理系数学問題1 確率と漸化式、対称性
2007年東京医科歯科大学前期数学問題2 確率と座標平面、漸化式
2011年東京医科歯科大学前期数学問題1 確率と漸化式

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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