[math]2019年東京医科歯科大学数学問題2

four assorted colour triangles math
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問題

三角形\(ABC\)において、頂点\(A, B, C\)の角の大きさをそれぞれ\(A, B, C\)、対辺の長さをそれぞれ\(a, b, c\)で表す。また\(a, b, c\)は、この順で正または\(0\)の公差をもつ等差数列をなす。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(\displaystyle C = \frac{2\pi}{3}\)のとき、\(\cos{A}\)の値を求めよ。
\((2)\) \(C = 2A\)のとき、\(\cos{A}\)の値を求めよ。
\((3)\) \(\displaystyle C = A + \frac{\pi}{3}\)のとき、\(\cos{A}\)の値を求めよ。

方針

色々な方法があるが、ここでは確実に解答に至る方法を選択したい。等差数列の条件から\(b-a = c-b\)である。これから\(1\)文字消去できると考え、\(2\)変数の問題にする。ただし、\((3)\)は難しく、一筋縄ではいかない。

解答

\(a, b, c\)が等差数列をなす条件から、\(b-a = c-b\ (\geq 0)\)である。したがって、\(2b = a+c\)である。両辺を\(b\)で割って、\(\displaystyle \frac{a}{b} = x, \frac{c}{b} = y\)とすると、$$x + y = 2 \tag{a}\label{a}$$である。ただし、\(\displaystyle x\leq 1, y\geq 1\)である。

\((1)\) \(\displaystyle C = \frac{2\pi}{3}\)であるから、$$\begin{eqnarray}\cos{C} & = & -\frac{1}{2} \tag{b}\label{b}\end{eqnarray}$$である。余弦定理から、$$\begin{eqnarray}\cos{C} & = & \frac{a^2+b^2-c^2}{2ab}\\ & = & \frac{1}{2}\left(\frac{a}{b} + \frac{b}{a}-\frac{c^2}{ab}\right)\\ & = & \frac{1}{2}\left(x + \frac{1}{x}-\frac{c}{b}\cdot \frac{c}{a}\right)\\ & = & \frac{1}{2}\left(x + \frac{1}{x}-\frac{y^2}{x}\right) \tag{c}\label{c}\end{eqnarray}$$である。\eqref{b}, \eqref{c}から$$-\frac{1}{2} = \frac{1}{2}\left(x + \frac{1}{x}-\frac{y^2}{x}\right)$$である。整理すると、$$x^2+x-y^2+1 = 0 \tag{d}\label{d}$$となる。\eqref{a}を\eqref{d}に代入すると、$$x^2+x-(2-x)^2+1 = 0$$となり、これから\(\displaystyle x = \frac{3}{5}\)となる。したがって、\eqref{a}から\(\displaystyle y = \frac{7}{5}\)となる。以上より、$$\begin{eqnarray}\cos{A} & = & \frac{1}{2}\cdot \frac{b^2+c^2-a^2}{bc}\\ & = & \frac{1}{2}\left(\frac{c}{b} + \frac{c}{b}-\frac{a}{b}\cdot \frac{a}{c}\right)\\ & = & \frac{1}{2}\left(\frac{1}{y} + y-\frac{x^2}{y}\right) \tag{e}\label{e}\\ & = & \underline{\frac{13}{14}}\end{eqnarray}$$となる。

\((2)\) \(C = 2A\)のとき、$$\begin{eqnarray}\cos{C} & = & \cos{2A}\\ & = & 2\cos^2{A}-1\end{eqnarray}$$である。\eqref{c}, \eqref{e}から$$\begin{eqnarray}\frac{1}{2}\left(x + \frac{1}{x} -\frac{y^2}{x}\right) & = & 2\cdot \frac{1}{4}\left(\frac{1}{y}+y-\frac{x^2}{y}\right)^2-1\\ \iff \frac{x^2+1-y^2}{x} & = & \frac{(1+y^2-x^2)^2}{y^2}-2\\ \iff \frac{(x+y)(x-y)+1}{x} & = & \frac{(1+(y-x)(y+x))^2}{y^2}-2 \tag{f}\label{f}\end{eqnarray}$$となるが、ここで\eqref{a}より\eqref{f}は$$\begin{eqnarray}\iff \frac{2(x-y)+1}{x} & = & \frac{(1+2(y-x))^2}{y^2}-2\\ \iff (2-x)^2(2x-2(2-x)+1) & = & x (1+2(2-x)-2x)^2-2x(2-x)^2\\ \iff (x^2-4x+4)(4x-3) & = & x(-4x+5)^2-2x(2-x)^2 \\\iff 4x^3-12x^2-16x^2+12x+16x-12 & = & 16x^3-40x^2+25x-2x-3+8x^2-8x \\ \iff 10x^3-13x^2+11x-12 & = & 0 \\ \iff (x+1)(2x-3)(5x-4) & = & 0 \end{eqnarray}$$である。したがって、\eqref{a}から\(\displaystyle (x, y) = \left(\frac{3}{2}, \frac{1}{2}\right), \left(\frac{4}{5}, \frac{6}{5}\right)\)となる。\(x, y\)に関する条件から、\(\displaystyle (x, y) = \left(\frac{4}{5}, \frac{6}{5}\right)\)である。このとき、\eqref{e}から\(\displaystyle \underline{\cos{A} = \frac{3}{4}}\)となる。

\((3)\) \eqref{a}, \eqref{e}から$$\begin{eqnarray}\cos{A} & = & \frac{y^2-x^2+1}{2y}\\ & = & \frac{(y+x)(y-x)+1}{2y}\\ & = & \frac{-2x+2y+1}{2y}\\ & = & \frac{-4x+5}{2y} \tag{g}\label{g}\end{eqnarray}$$であり、\eqref{a}, \eqref{c}から$$\begin{eqnarray}\cos{C} & = & \frac{x^2-y^2+1}{2x}\\ & = & \frac{(x+y)(x-y)+1}{2x}\\ & = & \frac{2x-2y+1}{2x} & = & \frac{4x-3}{2x} \tag{h}\label{h}\end{eqnarray}$$である。\(\displaystyle C = A + \frac{\pi}{3}\)のとき、$$\begin{eqnarray}\cos{C} & = & \cos{\left(A +\frac{\pi}{3}\right)}\\ & = & \frac{1}{2}\cos{A}-\frac{\sqrt{3}}{2}\sin{A}\\ \iff \sqrt{3}\sin{A} & = & \cos{A}-2\cos{C}\end{eqnarray}$$である。両辺を二乗して、$$3(1-\cos^2{A}) = \left(\cos{A}-2\cos{C}\right)^2$$である。\eqref{g}, \eqref{h}から、$$\begin{eqnarray}3\left(1-\frac{(-4x+5)^2}{4y^2}\right) & = & \left(\frac{(-4x+5)}{2y}-\frac{4x-3}{x}\right)^2 \\ \iff 3x^2(4(2-x)^2-(-4x+5)^2) & = & (x(-4x+5)-2(2-x)(4x-3))^2 \\ \iff 3x^2(2(2-x)+(-4x+5))(2(2-x)-(-4x+5)) & = & (-4x^2+5x-2(-4x^2+11x-6))^2 \\ \iff 3x^2(-6x+9)(2x-1) & = & (4x^2-17x+12)^2\\ \iff 3x^2(-12x^2+24x-9) & = & 16x^4+289x^2+144-136x^3-408x+96x^2\end{eqnarray}$$である。さらに変形して、$$\begin{eqnarray}52x^4-208x^3+412x^2-408x+144 & = & 0 \\ 13x^4-52x^3+103x^2-102x+36 & = & 0\tag{i}\label{i}\end{eqnarray}$$となる。これが整数係数で因数分解できるとして、$$(13x^2+px+q)(x^2+rx+s) = 0$$と置く。ただし、\(p, q, r, s\)は整数である。展開すると、$$13x^4 + (p+13r)x^3 + (pr+q+13s)x^2+(ps+qr)x + qs = 0$$である。\eqref{i}と比較して、$$\begin{cases}p + 13r = -52\\ pr + q+13s = 103\\ ps+qr = -102\\ qs = 36\end{cases}$$である。これを満たす\(p, q, r, s\)の組として\(p = -26, q = 12, r = -2, s = 3\)がある。したがって、\eqref{i}は$$(13x^2-26x+12)(x^2-2x+3) = 0$$となる。\(\displaystyle x^2-2x+3 = (x-1)^2 + 2 > 0\)であるから、\(13x^2-26x+12 = 0\)を解くと\(\displaystyle x = 1\pm\frac{1}{\sqrt{13}}\)となるが、\(x < 1\)なので\(\displaystyle x = 1-\frac{1}{\sqrt{13}}\)である。\eqref{a}から\(\displaystyle y = 1+\frac{1}{\sqrt{13}}\)となり、\eqref{g}から$$\begin{eqnarray}\cos{A} & = & \frac{-4x+5}{2y}\\ & = & \frac{4+\sqrt{13}}{\sqrt{13}}\cdot \frac{\sqrt{13}}{2(\sqrt{13}+1)}\\ & = & \frac{(4+\sqrt{13})(\sqrt{13}-1)}{2\cdot 12}\\ & = & \underline{\frac{3+\sqrt{13}}{8}}\end{eqnarray}$$となる。

解説

いろいろな方法が考えられるが、\((1), (2)\)はある程度決まった方法で解決するだろう。ただし、\((3)\)は試行錯誤が必要で、あらぬ方向に行くと試験時間内に解ききることは難しいだろう。正弦定理を用いる解法でも、\((1), (2)\)は比較的スムーズに行くが、\((3)\)では三角関数の巧みな変形が必要になる。なお、\(a = p-q, b = p, c = p+q\)などと設定すると、\(\cos{A}, \cos{C}\)が対称的な形になり、\((3)\)がスムーズに進むが、思いつきにくいだろう。重要なのは、ある程度時間がかかっても、解答のように(あるいは三角関数の変形でも良いが)確実に進められると思える方針を選択することである。

\((3)\)の\eqref{i}に関しては、整数係数で因数分解が可能であるので助かるが、そうでなかった場合この方針ではお手上げになる。\(p, q, r, s\)も\eqref{i}が出た段階で諦めてしまった受験生もいたことだろう。整数範囲で因数分解できるはずと考えて、調べるしかない。

なお、余弦定理の証明については以下の記事を参照されたい。

基本定理の証明について。

関連問題

1979年東京大学理系数学問題4 距離の最大値、最小値と円、正三角形
1975年京都大学理系数学問題4 定円と三角形、ベクトル
2000年京都大学前期文理共通問題文系問題1理系問題1 正三角形、余弦定理、円
2011年東京医科歯科大学前期数学問題2 微分と図形

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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