[math]2016年東京医科歯科大学数学問題2

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問題

\(xyz\)空間において連立不等式\(|x|\leq 1, |y|\leq 1, |z|\leq 1\)の表す領域を\(Q\)とし、正の実数\(r\)に対して\(x^2+y^2+z^2\leq r\)の表す領域を\(S\)とする。また、\(Q\)と\(S\)のいずれか一方のみに含まれる点全体がなす領域を\(R\)とし、\(R\)の体積を\(V(r)\)とする。さらに、\(x\geq 1\)の表す領域と\(S\)の共通部分を\(S_x\)、\(y\geq 1\)の表す領域と\(S\)の共通部分を\(S_y\)、\(z\geq 1\)の表す領域と\(S\)の共通部分を\(S_z\)とし、\(S_x \neq \emptyset\)を満たす\(r\)の最小値を\(r_1\)、\(S_x \cap S_y \ne \emptyset \)を満たす\(r\)の最小値を\(r_2\)、\(S_x \cap S_y\cap S_z \ne \emptyset\)を満たす\(r\)の最小値を\(r_3\)とする。ただし、\(\emptyset\)は空集合を表す。このとき以下の各問に答えよ。
\((1)\) \(\displaystyle r = \frac{\sqrt{10}}{3}\)のとき、\(R\)の\(xy\)平面による断面を図示せよ。
\((2)\) \(r_1, r_2, r_3\)および\(V(r_1), V(r_3)\)を求めよ。
\((3)\) \(r\geq r_1\)のとき、\(S_x\)の体積を\(r\)を用いて表わせ。
\((4)\) \(0< r \leq r_2\)において、\(V(r)\)が最小となる\(r\)の値を求めよ。

方針

仰仰しい問題文だが、それほど難しくはない。\((1)\)は\((4)\)の良いヒントになっている。

解答

\((1)\) \(\displaystyle x^2+y^2 \leq \frac{10}{9}\)と\(|x|\leq 1, |y|\leq 1\)を\(xy\)平面上に描くと以下の斜線部の様になる。

\(R\)の\(xy\)平面での断面図。

境界については、実線部は含まれ、点線部は除かれる。

\((2)\) \(\underline{r_1 = 1}\)であることは簡単。\(x\geq 1\)かつ\(y\geq 1\)の領域に\(S\)が含まれるとき、\(r \geq \sqrt{1^2+1^2} = \sqrt{2}\)でなかればならない。したがって\(\underline{r_2 = \sqrt{2}}\)である。また、\(x \geq 1\)かつ\(y \geq 1\)かつ\(z\geq 1\)の領域に\(S\)が含まれるとき、\(r \geq \sqrt{1^2+1^2+1^2} = \sqrt{3}\)でなければならない。したがって\(\underline{r_3 = \sqrt{3}}\)である。

\(V(r_1)\)は\(1\)辺の長さが\(2\)の立方体の体積から半径\(1\)の球の体積を除いたもので、\(\displaystyle \underline{V(r_1) = 8-\frac{4}{3}\pi}\)である。

\(V(r_3)\)は半径\(\sqrt{3}\)の球の体積から\(1\)辺の長さが\(2\)の立方体の体積を除いたもので、\(\displaystyle V(r_3) = \frac{4}{3}\pi (\sqrt{3})^3-8 = \underline{4\sqrt{3}\pi-8}\)である。

\((3)\) \(r_1 = 1\leq t \leq r\)として、\(x\)軸に垂直な断面で\(S_x\)を切ると、断面は円で、下の図から半径は\(\sqrt{r^2-t^2}\)となる。求める体積は$$\begin{eqnarray}\int_{1}^{r}{(\sqrt{r^2-t^2})^2\pi dt} & = & \pi\left[r^2t-\frac{t^3}{3}\right]_{1}^{r}\\ & = & \underline{\pi\left(\frac{2}{3}r^3-r^2+\frac{1}{3}\right)}\end{eqnarray}$$となる。

\(x\)軸に垂直な平面で\(S_x\)を切る。

\((4)\) \(0 < r \leq 1\)のとき\(V(r)\)は\(1\)辺の長さが\(2\)の立方体の体積から半径\(r\)の球の体積を除いたものなので、\(\displaystyle V(r) = 8-\frac{4}{3}\pi r^3\)である。\(1 \leq r \leq \sqrt{2}\)のとき\(V(r)\)の体積は、\(1\)辺の長さが\(2\)の立方体の体積から、半径\(r\)の球の体積\(-\)\((3)\)の\(S_x\)の\(6\)倍を除き、さらに\(S_x\)の体積の\(6\)倍を加えたものである。したがってこのとき、\(\displaystyle V(r) = 8-\left(\frac{4}{3}\pi r^3- 6S_x\right) + 6S_x = 4\pi \left( \frac{5}{3}r^3 – 3 r^2 + 1\right)+8\)である。まとめると、$$V(r) = \begin{cases}\displaystyle 8-\frac{4}{3}\pi r^3\ \ \left(0 < r \leq 1\right)\\ \displaystyle 4\pi\left(\frac{5}{3}r^3 – 3r^2+1\right) + 8 \ \ (1\leq r\leq \sqrt{2})\end{cases}$$である。

\(0 < r\leq 1\)では\(V(r)\)は単調減少である。\(1\leq r\leq \sqrt{2}\)のとき、$$\begin{eqnarray}V^{\prime}(r) & = & 4\pi r(5r-6)\end{eqnarray}$$となる。したがって\(V(r)\)は\(\displaystyle 1\leq r\leq \frac{6}{5}\)で単調減少であり、\(\displaystyle r = \frac{6}{5}\)で極小値を取り、\(\displaystyle \frac{6}{5}\leq r\leq \sqrt{2}\)で単調増加である。以上より、\(0<r\leq r_2\)において\(V(r)\)が最小になるのは\(\displaystyle \underline{r = \frac{6}{5}}\)である。

解説

教育的な問題である。\((1), (2), (3)\)と順に思考を重ねることで\((4)\)の答えに到達できるようになっている。何度も記載しているが、空間・立体の問題、特に体積を求める問題の基本はまず可能な限り立体の方程式を求め、適当な平面で断面を考え、面積を求めてから、最後に体積を求めることである。具体的には\(x = t\)や\(y = t\)などと置いて、平面の面積の問題に落としてから、それを\(t\)について微分すれば良い。こちらの記事も参考にすると良い。

1983年東京大学理系数学第6問 斜回転体の体積

関連問題

1991年前期東京医科歯科大学数学問題2 空間図形と方程式
2006年東京大学後期数学問題2 空間座標と積分、形状が容易には分からない場合
2006年度前期東京医科歯科大学数学問題2 四面体、空間座標、体積
2010年東京医科歯科大学前期数学問題2 空間図形と体積
2012年東京医科歯科大学前期数学問題2 空間図形と求積、断面図

関連リンク

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