[math][東京医科歯科大学][複素数平面]1999年東京医科歯科大学数学問題2

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問題

以下の\((1), (2), (3)\)のそれぞれについて、与えられた式を満たす複素数\(z\)の集合を複素数平面上に図示せよ。ただし\(i\)は虚数単位を表し、\(\bar{z}\)は\(z\)と共役な複素数を表す。
\((1)\) \(z^2+{\bar{z}}^2 = 0\)
\((2)\) \(\displaystyle \left(\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)^2z^2+\left(\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)^2{\bar{z}}^2 = 0\)
\((3)\) \(3(1-\sqrt{3}i)z^2 + 3(1+\sqrt{3}i){\bar{z}}^2-20z\bar{z}+32 = 0\)

方針

\((3)\) 頭を使わないといけない。

解答

\((1)\) \(z = x+yi\)とすると、\(\bar{z} = x-yi\)で、$$\begin{eqnarray}z^2+{\bar{z}}^2 & = & (x^2-y^2+2xyi) + (x^2-y^2-2xyi)\\ & = & 2(x^2-y^2)\\ & = & 0\end{eqnarray}$$となる。したがって\(|x| = |y|\)で、これを図示すると以下の図のようになる。

\(z^2+{\bar{z}}^2 = 0\)を満たす図形。

\((2)\) \(\displaystyle p = \left(\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)z\)とすると、\(\displaystyle \bar{p} = \left(\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)\bar{z}\)である。与えられた式は$$p^2+{\bar{p}}^2 = 0$$となる。これは\(p = X+Yi\)としたとき、\((1)\)から\(X= Y\)であることが分かっている。したがって、\(\displaystyle z = \frac{1+\sqrt{3}i}{2}p\)と変形すると、\(z\)の動く図形は\((1)\)の直線を原点を中心に\(60^\circ\)回転させたものであるから、図示すると以下の図のようになる。

\((2)\)の解答。

\((3)\) \(\displaystyle \frac{1-\sqrt{3}i}{2} = \cos{(-60^\circ)}+i\sin{(-60^\circ)}\)に着目して、\(\alpha = \cos{(-30^\circ)}+i\sin{(-30^\circ)}\)とすると、\(\alpha\)は\(-30^\circ\)回転の複素数である。\(\alpha z = q\)とすると、\(z = \bar{\alpha}q\)であるから、\(z\)は\(q\)の動く範囲を原点を中心として\(30^\circ\)回転させた図形になる。また、$$\begin{eqnarray}\alpha & = & \frac{\sqrt{3}-i}{2}\\ {\alpha}^2 & = & \frac{1-\sqrt{3}i}{2}\\ \bar{\alpha} & = & \frac{\sqrt{3}+i}{2}\\ {\bar{\alpha}}^2 & = & \frac{1+\sqrt{3}i}{2}\end{eqnarray}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}3(1-\sqrt{3}i)z^2+3+(1+\sqrt{3}i){\bar{z}}^2-20z\bar{z}+32 & = & 6{\alpha}^2z^2+6{\bar{\alpha}}^2{\bar{z}}^2-20\alpha z\bar{\alpha}\bar{z} + 32 \ \ (\alpha\bar{\alpha} = 1)\\ & = & 6q^2+6{\bar{q}}^2-20q\bar{q}+32 \\ & = & 0\end{eqnarray}$$である。整理して、$$3q^2+3{\bar{q}}^2-10q\bar{q}+16 = 0$$である。\(q = x+yi\)とすると、この式は$$\begin{eqnarray}3(x^2-y^2+2xyi)+3(x^2-y^2-2xyi)-10(x^2+y^2)+16 & = & 0\\ \frac{x^2}{4}+y^2 & = & 1\end{eqnarray}$$となる。これは楕円であり、この楕円を原点を中心として\(30^\circ\)回転させた\(z\)の動く領域を図示すると、以下の図のようになる。

楕円を回転させた図形になる。

解説

\((1)\) \(z = x+yi\)と具体的に置いてしまうのが一番簡単だろう。\(x^2 = y^2\)という条件が出てくるが、グラフを書く時は注意しないといけない。また、グラフの軸の名称を\(x, y\)と書いてはいけない。「実軸、虚軸」あるいは\(Re z, Imz\)ときちんと書く。

\((2)\) \((1)\)を利用する。そのまま\(z = x+yi\)と代入しても十分解決する。

\((3)\) 今度は\((2)\)のようにそのまま代入してはうまくいかない。二乗して\(\displaystyle \frac{1-\sqrt{3}i}{2}\)になる複素数を設定する。ちなみにそのまま\(z = x+yi\)と代入して解こうとすると、$$7x^2-6\sqrt{3}xy+13y^2 = 16$$という式が出てくる。これが楕円であることが分かっても、正確な図を描ける受験生は少ないだろう。

ただし、二次形式についての知識があれば、以下のように解決できる。\(f(x, y) = 7x^2-6\sqrt{3}xy+13y^2\)を書き換えると、$$\begin{pmatrix}x & y\end{pmatrix}\begin{pmatrix}7 & -3\sqrt{3}\\ -3\sqrt{3} & 13\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix}$$である。\(A = \begin{pmatrix}7 & -3\sqrt{3}\\ -3\sqrt{3} & 13\end{pmatrix}\)とすると、固有方程式は\(\left|A-tE\right| =\begin{vmatrix}7-t & -3\sqrt{3}\\ -3\sqrt{3} & 13-t\end{vmatrix} = t^2-20t+64= 0\)であり、これを解いて固有値は\(t = 4, 16\)となる。単位固有ベクトルは順に\(\displaystyle u_1 = \frac{1}{2}\begin{pmatrix}\sqrt{3}\\ 1\end{pmatrix}, u_2 = \frac{1}{2}\begin{pmatrix}-\sqrt{3} \\ 1\end{pmatrix}\)となる。よって、直交行列\(\displaystyle U = \frac{1}{2}\begin{pmatrix}\sqrt{3} & -\sqrt{3}\\ 1 & 1\end{pmatrix}\)を用いて、\(U^{-1}AU = \begin{pmatrix}4 & 0 \\ 0 & 16\end{pmatrix}\)と対角化できる。すなわち、\(\begin{pmatrix}x \\ y\end{pmatrix} = U\begin{pmatrix}x^{\prime}\\ y^{\prime}\end{pmatrix}\)となる\(x^{\prime}, y^{\prime}\)を考えると、\(\begin{pmatrix}x & y\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}x^{\prime} & y^{\prime}\end{pmatrix}U^{T} = \begin{pmatrix}x^{\prime} & y^{\prime}\end{pmatrix}U^{-1}\)であるから、元の二次形式に代入して、$$\begin{eqnarray}\begin{pmatrix}x^{\prime} & y^{\prime}\end{pmatrix}U^{-1}AU\begin{pmatrix}x^{\prime}\\ y^{\prime}\end{pmatrix} & = & (x^{\prime}, y^{\prime})\begin{pmatrix}4 & 0 \\ 0 & 16\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x^{\prime} \\ y^{\prime}\end{pmatrix}\end{eqnarray}$$である。したがって、$$16 = 7x^2-6\sqrt{3}xy+13y^2 = 4{x^{\prime}}^2 + 16{y^{\prime}}^2$$となる。また、\(U^{-1}\)が\(30^\circ\)の回転行列であることもすぐに分かる。

関連問題

2002年度東京医科歯科大学前期数学問題1 ベクトルと軌跡、円と楕円、面積
2010年前期東京医科歯科大学数学問題3 二次曲線と楕円
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関連リンク

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