[math][東京医科歯科大学][一次変換]1996年東京医科歯科大学数学問題2

two person doing surgery inside room math
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問題

座標平面上の\(1\)次変換\(f\)が曲線\(x^2+4y^2 = 1\)をそれ自身に移している。次のそれぞれの場合について\(f\)を表す行列を求めよ。
\((1)\) \(f\)が点\((3, 2)\)をそれ自身に移すとき。
\((2)\) \(f\)が直線\(y = 2x\)をそれ自身に移すとき。

方針

結局は成分を置いて計算する必要がある。\((2)\)は楕円と直線の交点に着目すると良い。

解答

\(f\)を表す行列を\(\begin{pmatrix}a & b\\ c & d\end{pmatrix}\)とおく。\(x^2+4y^2=1\)を満たす\(x, y\)に対して$$\begin{pmatrix}a & b\\ c & d\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}ax+by\\ cx+dy\end{pmatrix}$$を考える。この点も同じ楕円上にあるので、$$(ax+by)^2+4(cx+dy)^2 = 1$$である。整理すると、$$(a^2+4c^2)x^2+(b^2+4d^2)y^2+2(ab+4cd)xy = 1 \tag{a}\label{a}$$である。\(x, y\)は\(x^2+4y^2 = 1\)を満たすので、特に\(\displaystyle (x, y) = (1, 0), \left(0, \frac{1}{2}\right)\)とすると、$$\begin{cases}a^2+4c^2 = 1\\ b^2+4d^2=4\end{cases}$$が必要である。すると、\eqref{a}は$$x^2+4y^2 + 2(ab+4cd)xy = 1$$となる。\(x^2+4y^2 = 1\)だから、\(ab+4cd = 0\)である。以上から、$$\begin{cases}a^2+4c^2 = 1 \\ b^2+4d^2=4 \\ ab+4cd = 0 \end{cases} \tag{b}\label{b}$$がわかる。

\((1)\) 点\((3, 2)\)が自身に移されるので、$$\begin{cases}3a+2b = 3\\ 3c + 2d = 2\end{cases} \tag{c}\label{c}$$である。変形すると、\(\displaystyle b = \frac{3}{2}(1-a), c = \frac{2}{3}(1-d)\)である。\eqref{b}に代入して、$$\begin{eqnarray}a^2 + 4\cdot \frac{4}{9}(1-d)^2 & = & 1 \tag{d}\label{d}\\ \frac{9}{4}(1-a)^2 + 4d^2 & = & 4 \tag{e}\label{e}\end{eqnarray}$$となる。\(\displaystyle \frac{9}{4}\times\)\eqref{d}\(-\)\eqref{e}を作ると、$$\frac{9}{4}(a^2-(1-a)^2) + 4((1-d)^2-d^2) = \frac{9}{4}-4$$となる。整理すると、\(\displaystyle 1-a = \frac{16}{9}(1-d)\)となる。これを再度\eqref{e}に代入して、$$\frac{9}{4}\frac{16^2}{9^2}(1-d)^2+4d^2 = 4$$である。整理して、$$\begin{eqnarray}35d^2-32d+7 & = & 0\\ (25d-7)(d-1) & = & 0\end{eqnarray}$$となる。よって、\(\displaystyle d = 1, \frac{7}{25}\)である。このとき、\(\displaystyle 1-a = \frac{16}{9}(1-d), b = \frac{3}{2}(1-a), c = \frac{2}{3}(1-d)\)から順に\(a, b, c\)が出る。これから計算すると、\(\displaystyle(a, b, c, d) = (1, 0, 0, 1), \left(-\frac{7}{25}, \frac{48}{25}, \frac{12}{25}, \frac{7}{25}\right)\)となる。よって、\(f\)を表す行列は\(\displaystyle \underline{\begin{pmatrix}1 & 0\\ 0 & 1\end{pmatrix}, \frac{1}{25}\begin{pmatrix}-7 & 48\\ 12 & 7\end{pmatrix}}\)となる。逆に\(a, b, c , d\)がこの値のとき、\eqref{b}と\eqref{a}から\(f\)は曲線\(x^2+4y^2 = 1\)を自身に移す。また、\eqref{c}も満たすので、求める行列はこれで良い。

\((2)\) 直線\(y = 2x\)を自身に移すので、\(y = 2x\)と\(x^2+4y^2 = 1\)との交点\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{17}}(1, 2), -\frac{1}{\sqrt{17}}(1, 2)\)は交点に移される。したがって、$$\begin{pmatrix}a & b\\ c & d\end{pmatrix}\frac{1}{\sqrt{17}}\begin{pmatrix}1\\ 2\end{pmatrix} = \frac{1}{\sqrt{17}}\begin{pmatrix}1\\ 2\end{pmatrix} \tag{f}\label{f}$$もしくは$$\begin{pmatrix}a & b\\ c & d\end{pmatrix}\frac{1}{\sqrt{17}}\begin{pmatrix}1\\ 2\end{pmatrix} = \frac{-1}{\sqrt{17}}\begin{pmatrix}1\\ 2\end{pmatrix} \tag{g}\label{g}$$である。
\eqref{f}が成り立つとき、\eqref{f}から\(a+2b = 1, c + 2d = 2\)である。変形して\(\displaystyle b = \frac{1-a}{2}, c = 2(1-d)\)である。これを\eqref{b}に代入して、$$\begin{eqnarray}a^2+4\cdot 4(1-d)^2 & = & 1 \tag{h}\label{h}\\ \frac{(1-a)^2}{4}+4d^2 & = & 4 \tag{i}\label{i}\end{eqnarray}$$である。\eqref{h}\(-4\times\)\(\eqref{i}\)を作ると、$$(a^2-(1-a)^2) + 16((1-d)^2-d^2) = 1-16$$である。整理すると、\(1-a = 16(1-d)\)となる。これを再度\eqref{i}に代入して、$$\frac{1}{4}\cdot 16^2(1-d)^2 + 4d^2 = 4$$である。整理して、$$\begin{eqnarray}17d^2-32d+15 & = & 0\\ (17d-15)(d-1) & = &0\end{eqnarray}$$となる。よって\(\displaystyle d = 1, \frac{15}{17}\)である。このとき\(\displaystyle 1-a = 16(1-d), b = \frac{1-a}{2}, c = 2(1-d)\)から順に\(a, b, c\)が出る。計算すると、\(\displaystyle (a, b, c, d) = (1, 0, 0, 1), \frac{1}{17}\left(-15, 16, 4, 15\right)\)となる。
\eqref{g}が成り立つとき、\eqref{g}から\(a+2b = -1, c + 2d= -2\)である。変形して\(\displaystyle b = -\frac{1+a}{2}, c = -2(1+d)\)である。これを\eqref{b}に代入して、$$\begin{eqnarray}a^2+4\cdot 4(1+d)^2 & = & 1 \tag{j}\label{j}\\ \frac{(1+a)^2}{4}+4d^2 & = & 4 \tag{k}\label{k}\end{eqnarray}$$である。\eqref{j}\(-4\times\)\(\eqref{k}\)を作ると、$$(a^2-(1+a)^2) + 16((1+d)^2-d^2) = 1-16$$である。整理すると、\(1+a = 16(1+d)\)となる。これを再度\eqref{k}に代入して、$$\frac{1}{4}\cdot 16^2(1+d)^2 + 4d^2 = 4$$である。整理して、$$\begin{eqnarray}17d^2+32d+15 & = & 0\\ (17d+15)(d+1) & = &0\end{eqnarray}$$となる。よって\(\displaystyle d = -1, -\frac{15}{17}\)である。このとき\(\displaystyle 1+a = 16(1+d), b = -\frac{1+a}{2}, c = -2(1+d)\)から順に\(a, b, c\)が出る。計算すると、\(\displaystyle (a, b, c, d) = (-1, 0, 0, -1), \frac{1}{17}\left(15, -16, -4, -15\right)\)となる。

逆に、\(a, b, c, d\)が上記の値を取るとき、\eqref{a}, \eqref{b}から\(f\)は\(x^2+4y^2 = 1\)を自身に移し、また\eqref{g}から直線\(y = 2x\)を自身に移す。よって、求める行列は\(\displaystyle \underline{\pm\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix}, \frac{\pm 1}{17}\begin{pmatrix}15 & -16\\ -4 & -15\end{pmatrix}}\)となる。

解説

計算がメインになるが、要領よくやらないと大変になる。

\((1)\) 解答ではあえて\(a, d\)を整理せずに\(1-a\)や\(1-d\)という固まりのままで計算している。多少だが計算は楽になる。\(a, b, c, d\)を出した後は実際に\(f\)が条件を満たす一次変換になっているかどうか確認する必要がある。

\((2)\) 交点の存在に気が付かないとやや厳しくなる。ここでも最後まで整理しきらず、\(1-a\)や\(1-d\)という固まりを残して計算を進めている。ここらへんは細かいテクニックであるが、身につけておくと答案の見通しが良くなる。

なお、もともとの楕円\(x^2+4y^2=1\)は$$\begin{pmatrix}x & y\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1 & 0\\ 0 & 4\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} = 1 \tag{l}\label{l}$$である。\(\displaystyle \begin{pmatrix}x^{\prime}\\ y^{\prime}\end{pmatrix} = f\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix}\)とすると\((x^{\prime}, y^{\prime})\)も同じ楕円上にある。つまり、$$\begin{pmatrix}x^{\prime} & y^{\prime}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 4\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x^{\prime}\\ y^{\prime}\end{pmatrix} = 1 \tag{m}\label{m}$$である。今、$$\begin{pmatrix}x^{\prime}\\ y^{\prime}\end{pmatrix}^{T} = \begin{pmatrix}x & y\end{pmatrix}f^{T}$$であることに注意すると、\eqref{m}は$$\begin{eqnarray}\begin{pmatrix}x & y\end{pmatrix}f^{T}\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 4\end{pmatrix}f\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} & = & 1 \end{eqnarray}$$となる。これを\eqref{l}と見比べると、$$f^{T}\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 4\end{pmatrix}f = \begin{pmatrix}1 & 0\\ 0 & 4\end{pmatrix}$$となる。\(f\)の成分を置くと\eqref{b}を得ることもできる。

関連問題

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関連リンク

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