[math][東京医科歯科大学][一次変換]1993年東京医科歯科大学数学問題1

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問題

行列A=15(3443)で表される平面上の1次変換をfとする。
(1) fによってそれ自身に移される点をすべて求めよ。
(2) fによってそれ自身に移される直線をすべて求めよ。
(3) 曲線C:y=exfによる像をCとする。点PC上を、点QC上をそれぞれ動くとき、線分PQの長さの最小値を求めよ。

方針

(2),(3)はバリバリと計算する前に、(1)の結果を踏まえて図形的な考察をしてみると良い。

解答

(1) (xy)に対して、A(xy)=15(3443)(xy)=15(3x+4y4x+3y)である。この点がそれ自身に移されるとき、{x=15(3x+4y)y=15(4x+3y)である。この連立方程式を解くと、y=2xとなる。したがって、fによってそれ自身に移される点は(t,2t) (tは任意の実数)となる。

(2) tanθ=2  (0<θ<π2)とすると、cos2θ=2cos2θ1=21+tan2θ1=21+221=35sin2θ=1cos22θ=45となる。したがって、A=(cos2θsin2θsin2θcos2θ)である。これは直線y=(tanθ)x=2xに関する対称移動を表す行列である。したがって、fによってそれ自身に移される直線は、(1)で求めた直線y=2xと、y=2xに垂直なy=12x+t  (tは任意の実数)である。

(3) 曲線Cと直線y=2xとの位置関係は下の図のようになる。曲線Cは曲線Cを直線y=2xに関して対称移動させたものであるから、曲線C上の点(t,et)から直線2xy=0に下ろした垂線の長さをhとすると、(1),(2)から2hが求める線分PQの長さの最小値である。

y=exy=2xの位置関係。

h=|2tet|22+(1)2=et2t5であるから、dhdt=et25となる。t<log2においてdhdt<0であり、t=log2においてdhdt=0であり、なおかつt>log2においてdhdt>0であるから、ht=log2において最小値2(1log2)5をとる。よって、求めるPQの長さの最小値は2h=4(1log2)5である。

解説

(1) 普通に計算する。

(2) (1)の結果をよく吟味すると、ほとんど計算することなく結果を得ることができる。対称移動の行列については少し詳しく見てみよう。平面上直線y=mxについての対称移動を表す行列は、tanθ=mとしたとき、(cos2θsin2θsin2θcos2θ)と表すことができる。これは、まず回転行列(cos(θ)sin(θ)sin(θ)cos(θ))=(cosθsinθsinθcosθ)によって図形全体をθだけ回転させた後、x軸に関する対称移動行列(1001)を作用させて、その後図形全体をθ回転させて元に戻すこと、というようにステップごとに分解して考えると良い。この行列は、一次変換が左から順番に作用させることに注意して、(cosθsinθsinθcosθ)(1001)(cosθsinθsinθcosθ)となる。計算すると、(cos2θsin2θsin2θcos2θ)を得ることができる。なお、(1001)x軸に関する対称移動行列であることは、(1001)(xy)=(xy)であることからわかる。

y=mx=(tanθ)xに関する対称移動。

(3) 計算だけで推し進めようとすると到底解くことはできない。(1),(2)をヒントにして図形的に考える。一般に、ある曲線上の2点の最小距離を考える問題は、計算のみで押し切るのは難しく、図形的な考察がポイントになることが多い。

関連問題

1977年東京大学数学文理共通問題文系問題1理系問題1 最大値の最小値
1996年東京医科歯科大学数学問題3 領域と最小値、最大値、交わる曲線
2004年東京医科歯科大学前期数学問題3 距離の最小値、フェルマー点 Fermat Point
2015年東京医科歯科大学数学問題2 最大値の最小値

関連リンク

Science Tokyo 旧・東京医科歯科大学

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