[math][東京医科歯科大学][一次変換]1993年東京医科歯科大学数学問題1

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問題

行列\(\displaystyle A = \frac{1}{5}\begin{pmatrix}-3 & 4\\4 & 3\end{pmatrix}\)で表される平面上の\(1\)次変換を\(f\)とする。
\((1)\) \(f\)によってそれ自身に移される点をすべて求めよ。
\((2)\) \(f\)によってそれ自身に移される直線をすべて求めよ。
\((3)\) 曲線\(C: y = e^x\)の\(f\)による像を\(C^{\prime}\)とする。点\(P\)が\(C\)上を、点\(Q\)が\(C^{\prime}\)上をそれぞれ動くとき、線分\(PQ\)の長さの最小値を求めよ。

方針

\((2), (3)\)はバリバリと計算する前に、\((1)\)の結果を踏まえて図形的な考察をしてみると良い。

解答

\((1)\) \(\begin{pmatrix}x & y\end{pmatrix}\)に対して、$$\begin{eqnarray}A\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} & = & \frac{1}{5}\begin{pmatrix}-3 & 4\\ 4 & 3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix}\\ & = & \frac{1}{5}\begin{pmatrix}-3x+4y \\ 4x + 3y\end{pmatrix}\end{eqnarray}$$である。この点がそれ自身に移されるとき、$$\begin{cases}x & = & \displaystyle \frac{1}{5}(-3x+4y)\\ y & = & \displaystyle \frac{1}{5}(4x+3y)\end{cases}$$である。この連立方程式を解くと、\(y = 2x\)となる。したがって、\(f\)によってそれ自身に移される点は\(\underline{(t, 2t)}\ (t\text{は任意の実数})\)となる。

\((2)\) \(\displaystyle \tan{\theta} = 2\ \ \left(0 < \theta < \frac{\pi}{2}\right)\)とすると、$$\begin{eqnarray}\cos{2\theta} & = & 2\cos^2{\theta}-1\\ & = & \frac{2}{1+\tan^2{\theta}}-1\\ & = & \frac{2}{1+2^2} -1\\ & = & -\frac{3}{5}\\ \sin{2\theta} & = & \sqrt{1-\cos^2{2\theta}}\\ & = & \frac{4}{5}\end{eqnarray}$$となる。したがって、\(\displaystyle A = \begin{pmatrix}\cos{2\theta} & \sin{2\theta}\\ \sin{2\theta} & -\cos{2\theta}\end{pmatrix}\)である。これは直線\(y = (\tan{\theta})x = 2x\)に関する対称移動を表す行列である。したがって、\(f\)によってそれ自身に移される直線は、\((1)\)で求めた直線\(\underline{y = 2x}\)と、\(y = 2x\)に垂直な\(\displaystyle \underline{y = -\frac{1}{2}x + t\ \ (t\text{は任意の実数})}\)である。

\((3)\) 曲線\(C\)と直線\(y = 2x\)との位置関係は下の図のようになる。曲線\(C^{\prime}\)は曲線\(C\)を直線\(y = 2x\)に関して対称移動させたものであるから、曲線\(C\)上の点\((t, e^{t})\)から直線\(2x-y = 0\)に下ろした垂線の長さを\(h\)とすると、\((1), (2)\)から\(2h\)が求める線分\(PQ\)の長さの最小値である。

\(y = e^x\)と\(y = 2x\)の位置関係。

$$\begin{eqnarray}h & = & \frac{|2t-e^t|}{\sqrt{2^2+(-1)^2}}\\ & = & \frac{e^t-2t}{\sqrt{5}}\end{eqnarray}$$であるから、$$\frac{dh}{dt} = \frac{e^t-2}{\sqrt{5}}$$となる。\(t < \log{2}\)において\(\displaystyle \frac{dh}{dt} < 0\)であり、\(t = \log{2}\)において\(\displaystyle \frac{dh}{dt} = 0\)であり、なおかつ\(t > \log{2}\)において\(\displaystyle \frac{dh}{dt} > 0\)であるから、\(h\)は\(t = \log{2}\)において最小値\(\displaystyle \frac{2(1-\log{2})}{\sqrt{5}}\)をとる。よって、求める\(PQ\)の長さの最小値は\(\displaystyle \underline{2h = \frac{4(1-\log{2})}{\sqrt{5}}}\)である。

解説

\((1)\) 普通に計算する。

\((2)\) \((1)\)の結果をよく吟味すると、ほとんど計算することなく結果を得ることができる。対称移動の行列については少し詳しく見てみよう。平面上直線\(y = mx\)についての対称移動を表す行列は、\(\tan{\theta} = m\)としたとき、\(\displaystyle \begin{pmatrix}\cos{2\theta} & \sin{2\theta}\\ \sin{2\theta} & -\cos{2\theta}\end{pmatrix}\)と表すことができる。これは、まず回転行列$$\begin{pmatrix}\cos{(-\theta)} & \sin{(-\theta)}\\ \sin{(-\theta)} & \cos{(-\theta)} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}\cos{\theta} & \sin{\theta}\\ -\sin{\theta} & \cos{\theta}\end{pmatrix}$$によって図形全体を\(-\theta\)だけ回転させた後、\(x\)軸に関する対称移動行列\(\displaystyle \begin{pmatrix}1 & 0\\ 0 & -1\end{pmatrix}\)を作用させて、その後図形全体を\(\theta\)回転させて元に戻すこと、というようにステップごとに分解して考えると良い。この行列は、一次変換が左から順番に作用させることに注意して、$$\begin{pmatrix}\cos{\theta} & -\sin{\theta}\\ \sin{\theta} & \cos{\theta}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1 & 0\\ 0 & -1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\cos{\theta} & \sin{\theta}\\ -\sin{\theta} & \cos{\theta}\end{pmatrix}$$となる。計算すると、\(\displaystyle \begin{pmatrix}\cos{2\theta} & \sin{2\theta}\\ \sin{2\theta} & -\cos{2\theta}\end{pmatrix}\)を得ることができる。なお、\(\displaystyle \begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & -1\end{pmatrix}\)が\(x\)軸に関する対称移動行列であることは、$$\begin{pmatrix}1 & 0\\ 0 & -1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}x\\ -y\end{pmatrix}$$であることからわかる。

\(y = mx = (\tan{\theta})x\)に関する対称移動。

\((3)\) 計算だけで推し進めようとすると到底解くことはできない。\((1), (2)\)をヒントにして図形的に考える。一般に、ある曲線上の\(2\)点の最小距離を考える問題は、計算のみで押し切るのは難しく、図形的な考察がポイントになることが多い。

関連問題

1977年東京大学数学文理共通問題文系問題1理系問題1 最大値の最小値
1996年東京医科歯科大学数学問題3 領域と最小値、最大値、交わる曲線
2004年東京医科歯科大学前期数学問題3 距離の最小値、フェルマー点 Fermat Point
2015年東京医科歯科大学数学問題2 最大値の最小値

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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