問題
行列で表される平面上の次変換をとする。
によってそれ自身に移される点をすべて求めよ。
によってそれ自身に移される直線をすべて求めよ。
曲線のによる像をとする。点が上を、点が上をそれぞれ動くとき、線分の長さの最小値を求めよ。
方針
はバリバリと計算する前に、の結果を踏まえて図形的な考察をしてみると良い。
解答
に対して、である。この点がそれ自身に移されるとき、である。この連立方程式を解くと、となる。したがって、によってそれ自身に移される点はとなる。
とすると、となる。したがって、である。これは直線に関する対称移動を表す行列である。したがって、によってそれ自身に移される直線は、で求めた直線と、に垂直なである。
曲線と直線との位置関係は下の図のようになる。曲線は曲線を直線に関して対称移動させたものであるから、曲線上の点から直線に下ろした垂線の長さをとすると、からが求める線分の長さの最小値である。
との位置関係。
であるから、となる。においてであり、においてであり、なおかつにおいてであるから、はにおいて最小値をとる。よって、求めるの長さの最小値はである。
解説
普通に計算する。
の結果をよく吟味すると、ほとんど計算することなく結果を得ることができる。対称移動の行列については少し詳しく見てみよう。平面上直線についての対称移動を表す行列は、としたとき、と表すことができる。これは、まず回転行列によって図形全体をだけ回転させた後、軸に関する対称移動行列を作用させて、その後図形全体を回転させて元に戻すこと、というようにステップごとに分解して考えると良い。この行列は、一次変換が左から順番に作用させることに注意して、となる。計算すると、を得ることができる。なお、が軸に関する対称移動行列であることは、であることからわかる。
に関する対称移動。
計算だけで推し進めようとすると到底解くことはできない。をヒントにして図形的に考える。一般に、ある曲線上の点の最小距離を考える問題は、計算のみで押し切るのは難しく、図形的な考察がポイントになることが多い。
関連問題
1977年東京大学数学文理共通問題文系問題1理系問題1 最大値の最小値
1996年東京医科歯科大学数学問題3 領域と最小値、最大値、交わる曲線
2004年東京医科歯科大学前期数学問題3 距離の最小値、フェルマー点 Fermat Point
2015年東京医科歯科大学数学問題2 最大値の最小値
関連リンク
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