[math][東京医科歯科大学][微分方程式]1991年東京医科歯科大学数学問題3

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問題

微分方程式\(\displaystyle \left(y + \frac{dy}{dx}\right)\sin{x} = y\cos{x}\)について、次の各問いに答えよ。
\((1)\) 一般解を求めよ。
\((2)\) この微分方程式の解\(y = f(x)\)で、区間\(0\leq x \leq \pi\)において曲線\(y = f(x)\)と\(x\)軸によって囲まれる図形の面積が\(e^{-\pi} + 1\)となるものを求めよ。
\((3)\) \((2)\)で求めた関数\(y = f(x)\)に対し、関数\(y = |f(x)|\)が極値をとるような\(x\)の値をすべて求めよ。

方針

微分方程式は\(x, y\)を分離するのが鉄則になる。

解答

\((1)\) \(\displaystyle \left(y + \frac{dy}{dx}\right)\sin{x} = y\cos{x}\)を変形して、$$\frac{dy}{dx} = y\left(\frac{\cos{x}}{\sin{x}}-1\right)$$である。したがって、$$\frac{dy}{y} = \left(\frac{\cos{x}}{\sin{x}}-1\right)dx$$である。両辺を各々の変数で積分して、$$\begin{eqnarray}\ln{|y|} & = & \ln{|\sin{x}|}-x + C\\ & = & \ln{(|\sin{x}|e^{-x}e^{C})}\end{eqnarray}$$となる。ただし、\(C\)は積分定数である。これから、$$|y| = |C^{\prime}e^{-x}\sin{x}|$$となる。ただし、\(C^{\prime} = e^{C}\)である。これを改めて\(C\)とする。以上から、\(\underline{y = Ce^{-x}\sin{x}}\)が求める一般解となる。

\((2)\) 区間\(0\leq x\leq \pi\)において、\(y = f(x)\)と\(x\)軸によって囲まれる部分の面積を\(S\)とすると、この区間において\(\sin{x}\geq 0\)であるから、$$S = |C|\int_{0}^{\pi}{e^{-x}\sin{x}dx}$$となる。積分\(\displaystyle \int{e^{-x}\sin{x}dx}\)を簡単に求めるために、$$\int{e^{-x}\sin{x}dx} = e^{-x}(a\cos{x}+b\sin{x})+D \tag{a}\label{a}$$とおいて、定数\(a, b\)を求める。ただし、\(D\)は積分定数である。\eqref{a}の両辺を\(x\)で微分して、$$\begin{eqnarray}e^{-x}\sin{x} & = & e^{-x}(a\cos{x}+b\sin{x})+e^{-x}(-a\sin{x}+b\cos{x})\\ & = & e^{-x}((-a+b)\cos{x}+(-a-b)\sin{x})\end{eqnarray}$$となる。両辺を比較して、$$\begin{cases}-a+b = 0\\ -a-b = 1\end{cases}$$である。すなわち、\(\displaystyle a = b = -\frac{1}{2}\)とすれば良い。これから、$$\begin{eqnarray}S & = & -\frac{|C|}{2}[\cos{x}+\sin{x}]_{0}^{\pi}\\ & = & -\frac{|C|}{2}(e^{-\pi}(-1+0)-e^{0}(1+0))\\ & = & \frac{|C|}{2}(e^{-\pi}+1)\end{eqnarray}$$と計算できる。この値が\(e^{-\pi}+1\)と等しいので、\(C = \pm 2\)である。よって、\(\underline{f(x) = \pm 2e^{-x}\sin{x}}\)が求める答えである。

\((3)\) \((2)\)から、\(f^{\prime}(x) = \pm 2e^{-x}(-\sin{x} + \cos{x})\)である。\(f^{\prime}(x) = 0\)となるのは、\(\sin{x} = \cos{x}\)、すなわち\(\displaystyle x = n\pi + \frac{\pi}{4} \)の時である。ここで\(n\)は整数である。さて、\(x = n\pi\)で\(f(x) = 0\)であり、\(x = n\pi\)の近傍において、任意の\(x\)に対して\(|f(x)|\geq f(n\pi) = 0\)であるから\(y = |f(x)|\)は\(x = n\pi\)において極小になる。以上から、\(y = |f(x)|\)が極値を取る\(x\)は、$$\underline{x = \begin{cases}n\pi + \frac{\pi}{4}\text{(極大値)}\\ n\pi \text{(極小値)}\end{cases}}$$となる。

解説

\((1)\) 解答に積分定数が現れるが、一般解であるから構わない。

\((2)\) 積分定数がプラスにもマイナスにもなりうることに注意する。\(y = 2e^{-x}\sin{x}\)のみを答えとしてしまった場合、減点は免れない。\(\displaystyle \int{e^{-x}\sin{x}dx}\)を求める部分では、簡単なテクニックを持ちているが、普通に部分積分をくり返してもよい。このテクニックは計算ミスを減らすことができるので、試験場では重宝する。

\((3)\) 極大値をとる\(x\)の値はすぐに分かるが、極小値の方は見落としやすいと思う。極値の定義は大学の解析学の授業できちんと習うので、高校の範囲ではあやふやになりやすい。「微分して\(0\)になる点」と思っているとこの問題では痛い目を見る。以下の記事で極値の定義を確認しておくとよい。

極値 - Wikipedia

関連問題

1999年京都大学理系後期数学問題6 積分の平均値の定理
2000年京都大学理系後期数学問題6 置換積分法と面積、\(\tan\)の逆関数
2002年東京医科歯科大学数学問題3 ガンマ関数と積分、漸化式
2017年東京医科歯科大学数学問題3 微分方程式
2022年東京大学理系前期数学問題1 積分と計算、\(\displaystyle \frac{1}{\cos{x}}\)の積分

関連リンク

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