[math][東京医科歯科大学][一次変換][積分]1990年東京医科歯科大学数学問題3

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問題

行列\(\displaystyle A = \begin{pmatrix}a & 0\\ -\frac{1}{a} & b\end{pmatrix}\ \ (a > 0, b > 0)\)の表す座標平面上の\(1\)次変換を\(f\)とし、曲線\(C_1: y = x^2+x\)と曲線\(\displaystyle C_1: y = \frac{4x}{1+x^2}\)を\(f\)で移してできる曲線をそれぞれ\(L_1, L_2\)とする。\(C_1, C_2\)とによって囲まれる図形の面積を\(S\)、\(L_1, L_2\)とによって囲まれる図形の面積を\(T\)とし、また\(L_1\)と\(L_2\)の原点以外の交点を\(P\)とする。
\((1)\) \(L_1\)と\(L_2\)の\(a, b,\)を含んだ方程式をそれぞれ求めよ。
\((2)\) 点\(P\)の座標を\(a, b\)を用いて表わせ。
\((3)\) \(T\)を\(a, b\)を用いて表わせ。
\((4)\) \(S\)と\(T\)が等しく、\(L_1\)と\(L_2\)の点\(P\)における接線が互いに直交するとき、\(a, b\)の値を求めよ。

方針

計算量はやや多いが、やることは単純である。

解答

\((1)\) 点\((x, y)\)が一次変換\(f\)によって移動する点を\((X, Y)\)とすると、$$\begin{pmatrix}X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}a & 0 \\ -\frac{1}{a} & b\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x \\ y\end{pmatrix}$$となる。したがって、$$\begin{eqnarray}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} & = & \frac{1}{ab}\begin{pmatrix}b & 0 \\ \frac{1}{a} & b\end{pmatrix}\begin{pmatrix}X\\ Y\end{pmatrix}\\ & = & \frac{1}{ab}\begin{pmatrix}bX\\ \frac{X}{a}+aY\end{pmatrix}\end{eqnarray}$$となる。これを\(C_1\)の方程式に代入して、$$\frac{1}{ab}\left(\frac{X}{a}+aY\right) = \frac{X^2}{a^2}+\frac{X}{a}$$となる。整理して、$$L_1: Y = \frac{b}{a^2}X^2+\frac{1}{a}\left(b-\frac{1}{a}\right)X$$となる。同様に\(C_2\)の方程式に\(X, Y\)を代入して、$$\frac{1}{ab}\left(\frac{X}{a}+aY\right) = \frac{4aX}{a^2+X^2}$$となる。整理して、$$L_2: Y = \frac{4abX}{a^2+X^2}-\frac{X}{a^2}$$となる。式を\((X, Y)\)から\((x, y)\)に戻して、答えは\(\displaystyle \underline{L_1: y = \frac{b}{a^2}x^2+\frac{1}{a}\left(b-\frac{1}{a}\right), L_2: y = \frac{4abx}{a^2+x^2}-\frac{x}{a^2}}\)となる。

\((2)\) \(C_1\)と\(C_2\)の方程式を連立させて、$$\begin{eqnarray}x^2+x & = & \frac{4x}{1+x^2}\\ x+1 & = & \frac{4}{1+x^2}\ \ (x\ne 0)\\ (x+1)(x^2+1) & = & 4\\ x^3+x^2+x-3 & = & 0\\ (x-1)(x^2+2x+3) & = & 0\\ (x-1)((x+1)^2+2)\end{eqnarray}$$となる。したがって、\(x = 1\)である。これを\(C_1\)の方程式に代入して、\(y = 2\)となるから、\(C_1\)と\(C_2\)の交点は\((1, 2)\)である。この点を一次変換\(f\)によって変換すると、$$\begin{pmatrix}a & 0 \\ -\frac{1}{a} & b\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1\\ 2\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}a\\ -\frac{1}{a}+2b\end{pmatrix}$$となる。よって、点\(P\)の座標は\(\displaystyle \underline{\left(a, -\frac{1}{a}+2b\right)}\)となる。

\((3)\) \(C_1\)と\(C_2\)によって囲まれる部分の面積は、下の図から$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{1}{\left(\frac{4x}{1+x^2}-(x^2+x)\right)dx} & = & \left[2\ln{(1+x^2)}-frac{x^3}{3}-\frac{x^2}{2}\right]_{0}^{1}\\ & = & 2\ln{2}-\frac{5}{6}\end{eqnarray}$$となる。行列\(A\)の行列式は\(ab\)で、これは正であるから、求める\(T\)の値は\(\displaystyle \underline{T = ab\left(2\ln{2}-\frac{5}{6}\right)}\)となる。

\(C_1, C_2\)の概形図。

\((4)\) \(S = T\)だから、\((3)\)から\(ab = 1\)がわかる。\((1)\)で求めた\(L_1, L_2\)の方程式を\(x\)で微分すると、$$\begin{eqnarray}L_1 : y^{\prime} & = & \frac{2b}{a^2}x+\frac{1}{x}\left(b-\frac{1}{a}\right)\\ L_2 : y^{\prime} & = & \frac{4ab((a^2+x^2)-x\cdot 2x)}{(a^2+x^2)^2}-\frac{1}{a^2}\\ & = & \frac{4ab(a^2-x^2)}{(a^2+x^2)^2}-\frac{1}{a^2}\end{eqnarray}$$となる。この式で、点\(P\)の\(x\)座標の値を代入して、点\(P\)における\(L_1\)と\(L_2\)の傾きが$$\begin{eqnarray}L_1 & : & \frac{3b}{a}-\frac{1}{a^2}\\ L_2 & : & -\frac{1}{a^2}\end{eqnarray}$$とわかる。直交条件から、$$\begin{eqnarray}\left(\frac{3b}{a}-\frac{1}{a^2}\right)\cdot -\frac{1}{a^2} & = & -1\\ \frac{3b}{a}-\frac{1}{a^2} & = & a^2\\ \frac{3}{a^2}-\frac{1}{a^2} & = & a^2\ \ (ab = 1)\end{eqnarray}$$となる。整理すると、\(a^4 = 2\)となるが、\(a > 0\)から\(\underline{a = \sqrt[4]{2}}\)となる。\(ab = 1\)から、\(\underline{b = \sqrt[-4]{2}}\)である。

解説

\((1)\) 文字数が多くて多少ごちゃごちゃするが、やっていることは単なる計算である。$$\begin{pmatrix}X\\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}a & 0 \\ -\frac{1}{a} & b\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix}$$として、\(X = \cdots, Y = \cdots\)の式をそのまま\(C_1, C_2\)の方程式に代入しないように気をつける。

\((2)\) \((1)\)で求めた\(L_1, L_2\)の方程式を連立させても良い。

\((3)\) 一般に、正方行列\(A\)で表される一次変換\(f\)によって、図形\(P\)が図形\(Q\)に移ったとすると、図形の面積は\(A\)の行列式を\(detA\)として、\(|detA|\)倍される。ただし、\(|detA|\)は\(detA\)の絶対値である。教科書にも掲載されているし、試験で断りなく用いても構わない。\((1)\)で求めた\(L_1, L_2\)の方程式から面積を出しても良いが、時間の無駄だろう。

\((4)\) 最後のおまけの計算問題になる。

関連問題

1978年東京大学理系数学問題3 法線の個数、共通部分の面積
1988東京医科歯科大学数学問題1 二次曲線と面積、微分
1991年東京医科歯科大学数学問題3 微分方程式と積分、面積
2022年東京大学理系数学問題4 3次関数と変曲点、面積についての論証

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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