[math][東京医科歯科大学][微分方程式]1989年東京医科歯科大学数学問題2

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問題

\((1)\) \(f(x) = x, h(x) = x^2\sin{x}\)とするとき、次の条件\((a), (b)\)を満たす関数\(g(x)\)を求めよ。
\(\ \ (a)\) \(\displaystyle g\left(\frac{\pi}{2}\right) = \frac{\pi}{2}\)
\(\ \ (b)\) \(f(x)g^{\prime}(x) – f^{\prime}(x)g(x) = h(x)\)
\((2)\) 次の条件\((a), (b), (c)\)を同時に満たす関数\(g(x)\ \ (0\leq x\leq 4)\)を求めよ。
\(\ \ (a)\) \(g(4) = 16\)
\(\ \ (b)\) 区間\(0\leq x\leq 4\)において\(g^{\prime}(x) > 0 ,g(x)\geq x^2\)
\(\ \ (c)\) 曲線\(y = g(x)\ \ (0 < x < 4)\)上の任意の点\((x_0, y_0)\)に対し、次の\(2\)つの領域\(D_1, D_2\)の面積は等しい。$$\begin{eqnarray}D_1: 0\leq x\leq x_0, g(x)\leq y\leq y_0\\ D_2: 0\leq x\leq x_0, x^2\leq y\leq g(x)\end{eqnarray}$$

方針

計算が主体の微積の問題であるが、工夫の仕方でミスを減らすことはできる。

解答

\((1)\) 与えられた条件式\((b)\)と、\(f(x) = x, h(x) = x^2\sin{x}\)から、$$xg^{\prime}(x)-g(x) = x^2\sin{x} \tag{a}\label{a}$$となる。この両辺を\(x\)で微分して、$$g^{\prime}(x) + xg^{\prime\prime}(x)-g^{\prime}(x) = 2x\sin{x}+x^2\cos{x}$$となる。すなわち、$$xg^{\prime\prime}(x) = 2x\sin{x}+x^2\cos{x}$$である。どんな\(x\)についてもこれが成り立つので、$$g^{\prime\prime}(x) = 2\sin{x}+x\cos{x}$$となる。この式を\(x\)で積分すると、$$g^{\prime}(x) = -cos{x}+x\sin{x} + C \tag{b}\label{b}$$となる。ただし\(C\)は積分定数である。この定数を求めるために、\eqref{a}で\(\displaystyle x = \frac{\pi}{2}\)とすると、条件\((b)\)から\(\displaystyle g\left(\frac{\pi}{2}\right) = \frac{\pi}{2}\)であったから、$$\frac{\pi}{2}g^{\prime}\left(\frac{\pi}{2}\right)-\frac{\pi}{2} = \left(\frac{\pi}{2}\right)^2$$である。したがって、\(\displaystyle g^{\prime}\left(\frac{\pi}{2}\right) = \frac{\pi}{2} + 1\)である。\eqref{b}に代入して、\(C = 1\)がわかる。\(g^{\prime}(x) = x\sin{x}-\cos{x}+1\)を再度\(x\)で積分して、$$g(x) = -x\cos{x} + x + D$$となる。ただし\(D\)は積分定数である。\(\displaystyle g\left(\frac{\pi}{2}\right) = \frac{\pi}{2}\)から、\(D = 0\)である。以上から、\(\underline{g(x) = x(1-\cos{x})}\)となる。

\((2)\) 与えられた条件を立式すると、下の図も参考にして、$$\begin{eqnarray}D_1: x_0y_0-\int_{0}^{x_0}{g(x)dx}\\ D_2: \int_{0}^{x_0}{(g(x)-x^2)dx}\end{eqnarray}$$となる。これから、$$x_0y_0-\int_{0}^{x_0}{g(x)dx} = \int_{0}^{x_0}{(g(x)-x^2)dx}$$である。整理して、$$2\int_{0}^{x_0}{g(x)dx} = x_0g(x_0)+\frac{{x_0}^3}{3}$$であるが、簡単のためにこれを$$2\int_{0}^{x}{g(t)dt} = xg(x)+\frac{x^3}{3} \tag{c}\label{c}$$と書いておく。\eqref{c}を\(x\)で微分して、$$2g(x) = g(x)+xg^{\prime}(x)+x^2$$である。整理して、$$xg^{\prime}(x) = g(x)-x^2 \tag{d}\label{d}$$である。ここで、\(x = 4\)を代入して、条件\((a)\)の\(g(4) = 16\)を使って、\(g^{\prime}(4) = 0\)が分かる。\eqref{d}の両辺を\(x\)で微分して、$$g^{\prime}(x)+xg^{\prime\prime}(x) = g^{\prime}(x)-2x$$である。すなわち、$$xg^{\prime\prime}(x) = -2x$$である。どんな\(x\)についてもこの式が成り立つので、\(g^{\prime\prime}(x) = -2\)である。これから、$$g^{\prime}(x) = -2x + E$$となり、\(g^{\prime}(4) = 0\)から\(E = 8\)である。さらに、$$g(x) = -x^2+8x+F$$となり、\(g(4) = 0\)から\(F = 0\)である。よって、\(\underline{g(x) = -x^2+8x}\)となる。この関数が条件\((b)\)を満たしていることはすぐに分かる。

図形の概形図。

解説

\((1)\) 与えられた条件\((b)\)の左辺は、商の微分の分子に現れる式であることに気がつけば、条件\((b)\)を$$\left(\frac{g(x)}{f(x)}\right)^{\prime} = \frac{h(x)}{(f(x))^2}$$と変形して、答えを求めることもできる。積分をしなくても良いので計算が楽になるが、解答のように微分をしてから積分、という方法でも十分である。解答では\(g^{\prime\prime}(x) = 2\sin{x}+x\cos{x}\)を積分する場面でいきなり答えが出てくるが、これを少し詳しく解説しよう。この場合、\(g^{\prime\prime}(x)\)の式をじっと眺めて、$$g^{\prime}(x) = ax\sin{x}+b\cos{x}+C$$という形になるのではと予想する。この式を微分すると、$$g^{\prime\prime}(x) = (a-b)\sin{x}+ax\cos{x}$$となる。最初の式と比較すると、\(a-b = 2, a = 1\)となり、積分を求める事ができる。\(g^{\prime}(x)\)を積分するところでも同様に部分積分せずに直接求めている。一般に、積分を行うよりも微分をするほうが簡単であるので、この方法を覚えておくと試験場できっと役に立つ。試しに\(e^{-x}\sin{x}\)を積分せよ、という問題を考えてみると良い。普通に部分積分を繰り返すと高い確率でミスをする。ここは式をじっと眺めて、積分の結果が\(e^{-x}(a\sin{x}+b\cos{x})\)という形になることを予想し、これを微分して$$\begin{eqnarray} & = & -e^{-x}(a\sin{x}+b\cos{x})+e^{-x}(a\cos{x}-b\sin{x})\\ & = & e^{-x}((-a-b)\sin{x}+(a-b)\cos{x})\end{eqnarray}$$とする。後はこれを\(e^{-x}\sin{x}\)と比べて定数\(a, b\)を定めてやればよい。この過程は答案用紙に書く必要はない。

\((2)\) これも\((1)\)と同じく微分してから積分するのが簡単である。$$2\int_{0}^{x_0}{g(x)dx} = x_0g(x_0)+\frac{{x_0}^3}{3}$$のままだとゴチャゴチャするので、添字は外してしまう。出てきた答えは条件\((a), (b)\)を用いて導いたものなので、最後に条件\((b)\)を満たしていることを確認しておく。

関連問題

1991年東京医科歯科大学数学問題3 微分方程式と積分、面積
2017年東京医科歯科大学数学問題3 微分方程式

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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