[math][東京医科歯科大学][場合の数]1989年東京医科歯科大学数学問題3

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問題

集合\(A = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}\)から\(A\)自身への写像\(g: A\rightarrow A\)に対して、集合\(\{x| x\in A, g(x) = x\}\)を\(K(g)\)と表すことにする。いま、さいころを\(6\)回投げて\(i\)回目に出た目を\(f(i)\ \ (i = 1, 2, 3, 4, 5, 6)\)とする。このようにしてつくられる写像\(f: A\rightarrow A\)について、次のそれぞれの確率を求めよ。
\((1)\) \(f\)が\(1\)対\(1\)の写像となる確率
\((2)\) \(K(f) = \{1, 2\}\)となる確率
\((3)\) \(f\)が\(A\)の上への写像となっているという条件ものとで、\(K(f) = \{1, 2\}\)となる確率
\((4)\) \(f\)が\(1\)対\(1\)の写像であることがわかっているとき、\(K(f)\)が空集合かつ\(K(f^\circ f) = A\)となる確率

方針

難問で、集合\(x| x\in A, g(x) = x\)の意味を掴むまで時間がかかる。たとえば、\(f(1) = 2, f(2) = 3, f(3) = 6, f(4) = 4, f(5) = 1, f(6) = 2\)だったとき、\(f(i) = i\)となっているのは、\(i = 4\)のときだけであるので、\(K(f)\)は\(\{4\}\)になる。

解答

\((1)\) \(6\)回とも違うサイコロの目が出る確率だから、\(\displaystyle 1\times \frac{5}{6}\times \frac{4}{6}\times\frac{3}{6}\times \frac{2}{6}\times \frac{1}{6} = \underline{\frac{5}{324}}\)が求める答えになる。

\((2)\)\(f(1) = 1, f(2) = 2, f(i)\ne i\ \ (i = 3, 4, 5, 6)\)となる確率である。これは、\(\displaystyle \frac{1}{6}\times \frac{1}{6}\times \left(\frac{5}{6}\right)^4 = \underline{\frac{625}{46656}}\)が求める答えになる。

\((3)\) \(f\)が\(A\)の上への写像になっているという事象を\(X\)として、\(K(f) = \{1, 2\}\)となる事象を\(Y\)とする。求める確率は条件付き確率\(P(Y|X)\)である。\((1)\)から\(\displaystyle P(X) = \frac{5}{324}\)である。\(P(X\cap Y)\)を求める。たとえば\(f(3) = 4\)のときを考えてみると、事象\(Y\)となるサイコロの目の出方は、$$\begin{eqnarray}\{f(4) = 3, f(5) = 6, f(6) = 5\}, \{f(4) = 6, f(5) = 3, f(6) = 5\}, \{f(4) = 5, f(5) = 6, f(6) = 3\}\end{eqnarray}$$の\(3\)通りである。\(f(3) = 5, f(3) = 6\)のときも同じように列挙すると、それぞれ\(3\)通りの目の出方があることが分かる。したがって、\(Y\)となるサイコロの目の出方は\(9\)通りである。以上から、$$P(X\cap Y) = \frac{1}{6}\times \frac{1}{6}\times \frac{9}{6^4}$$である。よって、$$\begin{eqnarray}P(Y|X) & = & \frac{P(X\cap Y)}{P(X)}\\ & = & \frac{9/6^4}{5/324}\\ & = & \underline{\frac{1}{80}}\end{eqnarray}$$である。

\((4)\) \(K(f^\circ f) = A\)ということは、たとえば\(f(i)\)のどの\(2\)つを見ても、\(f(1) = 4, f(4) = 1\)のようなペアになっているということである。たとえば、\(f(1) = 2, f(2) = 1\)となっている場合を考えてみる。ただし、\(f(1) = 1, f(2) = 2\)は\(K(f)\)が空集合という条件に適合しないので、最初から除いて考える。このとき題意に適するのは、$$\begin{eqnarray}\{f(3) = 4, f(4) = 3, f(5) = 6, f(6) = 5\}, \{f(3) = 5, f(4) = 6, f(5) = 3, f(6) = 4\}, \\ \{f(3) = 6, f(4) = 5, f(5) = 4, f(6) = 3\}\end{eqnarray}$$となっている\(3\)通りのみである。\(f(1) = 3, f(1) = 4, f(1) = 5, f(1) = 6\)のそれぞれの場合についても同じように題意に適する\(3\)通りの組がある。したがって、\(3\times 5 = 15\)通りの場合が\((4)\)の条件を満たすことが分かる。\(f\)が\(1\)対\(1\)の写像であるような場合の数は\(6!\)通りであるから、求める確率は\(\displaystyle \frac{15}{6!} = \underline{\frac{1}{48}}\)となる。

解説

\((1)\)問題の意味がわからなくてもこれは確保しておきたい。

\((2)\) 文字がチカチカするので、試験場では\((2)\)以降全滅、という受験生も少なくはなかっただろう。題意がわかれば\((2)\)は難しくはないが、焦ってしまうかもしれない。

\((3)\)これも問題の意図が読み取れれば必ずしも難問ではないが、時間制限のある試験会場では厳しい。条件付き確率は出題範囲外の大学もあるが、定義は抑えておく必要がある。過去にも東京大学や防衛医科大学校など、実質的に出題されている大学も多い。この問題の場合、\(A\)から\(A\)への写像であるから、上への写像になっているときには\(1\)対\(1\)の写像になる。したがって、\((1)\)で求めた確率が利用できる。なお、上への写像という言葉は高校数学では用いられず、簡単に全射という。

\((4)\) \(K(f^\circ f) = A\)という条件は強いので、助けられる。ちなみに、他の大学では\(K(f)\)が空集合になる確率を求めさせる問題がしばしば出題される。この場合の数を完全順列あるいはモンモール数と呼び、一般の場合は大変難しいが、余裕があれば確かめておくと良い。

完全順列 - Wikipedia

関連問題

1987年東京医科歯科大学数学問題2 場合の数と置き換え
1993年東京医科歯科大学数学問題2 場合の数と数え上げ
2001年東京医科歯科大学前期数学問題3 場合の数、誘導の利用

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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