問題
\(a\)を\(1\)以上の実数とする。図のような長方形の折り紙\(ABCD\)が机の上に置かれている。ただし\(AD = 1, AB = a\)とする。\(P\)を辺\(AB\)上の点とし、\(AP = x\)とする。頂点\(D\)を持ち上げて\(P\)と一致するように折り紙を一回折ったとき、もとの長方形\(ABCD\)からはみ出る部分の面積を\(S\)とする。
\((1)\) \(S\)を\(a\)と\(x\)で表わせ。
\((2)\) \(a = 1\)とする。\(P\)が\(A\)から\(B\)まで動くとき、\(S\)を最大にするような\(x\)の値を求めよ。なお配布された白紙を自由に使ってよい(白紙は回収しない)。
方針
もちろん場合分けが必要になる。折返し線が四角形のどこを分割するかで\(3\)通りの場合分けが生じる。
解答
折返し線を\(QR\)とする。ちょうど点\(R\)と点\(C\)が一致するとき、下の図の三角形\(PBC\)に三平方の定理を利用して\((a-x)^2+1^2 = a^2\)である。これから、\(x = a-\sqrt{a^2-1}\)である。
\((i)\) 点\(Q\)が辺\(AD\)上に、点\(R\)が辺\(BC\)上にあるとき、\(0< x\leq a-\sqrt{a^2-1}\)である。図のように\(y\)をとると、三角形\(APQ\)に三平方の定理を利用して、\(x^2+(1-y)^2 = y^2\)であるから、\(\displaystyle y = \frac{x^2+1}{2}\)である。\(PE = z\)とすると、\(QA:QP = PB:PE\)であるから、\(1-y:y = a-x:z\)となり、\(\displaystyle z = \frac{1+x^2}{1-x^2}(a-x)\)である。したがって、\(\displaystyle EF=a-z = \frac{x(x^2-2ax+1)}{1-x^2}\)である。\(FE:FR = AP:AQ\)であるから、\(\displaystyle FR = \frac{AQ}{AP}FE = \frac{x^2-2ax+1}{2}\)である。これから、\(\displaystyle S = \frac{1}{2}FE\cdot FR = \underline{\frac{x(x^2-2ax+1)^2}{4(1-x^2)}}\)となる。
\((ii)\) 点\(Q\)が辺\(AD\)上に、点\(R\)が辺\(DC\)上にあるとき、\(a-\sqrt{a^2-1} < x\leq 1\)であり、このときの\(S\)の面積は\(0\)になる。
\((iii)\) 点\(Q\)が辺\(AB\)上に、点\(R\)が辺\(DC\)上にあるとき、\(1 < x\leq a\)であり、このとき、\(S\)は三角形\(QEP\)である。対称性から三角形\(QEP\)と三角形\(QAD\)は合同であり、\(AQ = y\)とすると、三角形\(QAD\)で三平方の定理を適応して、\(1+y^2=(x-y)^2\)である。したがって、\(\displaystyle y = \frac{x^2-1}{2x}\)となり、\(\displaystyle S = \frac{x^2-1}{4x}\)である。
以上から、$$\underline{S = \begin{cases}\displaystyle \frac{x(x^2-2ax+1)^2}{4(1-x^2)}\ \ (0<x\leq a-\sqrt{a^2-1})\\ 0 \ \ (a-\sqrt{a^2-1}< x\leq 1) \\ \displaystyle \frac{x^2-1}{4x}\ \ (1< x\leq a)\end{cases}}$$となる。
\((2)\) \(a = 1\)のとき\((1)\)の\(0 < x \leq a-\sqrt{a^2-1} = 1\)の場合で、\(\displaystyle S = \frac{x(1-x)^3}{4(1+x)}\)となる。\(\displaystyle f(x) = \frac{x(1-x)^3}{1+x}\)とすると、$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(x) & = & \frac{((1-x)^3-3x(1-x)^2)(1+x)-x(1-x)^3}{(1+x)^2}\\ & = & \frac{(1-x)^2}{(1+x)^2}\left(((1-x)-3x)(1+x)-x(1-x)\right)\\ & = & \frac{(1-x)^2}{(1+x)^2}(-3x^2-4x+1)\end{eqnarray}$$であり、\(f(x)\)の増減表は以下のようになる。\begin{array}{|c|*5{c|}}\hline x & 0& & \frac{-2+\sqrt{7}}{3} & & 1 \\ \hline f^{\prime}(x) & & + & 0 & & – \\ \hline f(x) & & \nearrow & & \searrow & \\ \hline \end{array}以上から、\(a = 1\)のとき\(S\)を最大にする\(x\)の値は\(\displaystyle \underline{x = \frac{-2+\sqrt{7}}{3}}\)である。
解説
なかなか複雑な問題で、特に\((1)\)はよほど注意深く考えないと、何かしらミスをしてしまいそうである。実際に試験場では白紙の長方形が渡されたとのことであるが、それでもすんなりと解答を書き上げられた受験生はそうそういなかったことであろう。平面の折返しの問題に関しては、座標平面を活用するのも一つの手である。なお、2001年度の問題\(4\)で以下のような問題が出題されている。余力のあるものは挑戦してみると良いだろう。
一辺の長さが\(1\)の正方形の紙を\(1\)本の線分に沿って折り曲げたとき二重になる部分の多角形を\(P\)とする。\(P\)が線対称な五角形になるように折るとき、\(P\)の面積の最小値を求めよ。
関連問題
1992年東京医科歯科大学数学問題3 座標平面と直線の回転
2006年東京大学前期数学問題3 直線に関する対称移動、\(\tan\)の\(3\)倍角の公式
2021年東京工業大学前期数学問題2 楕円と直線
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