[math][東京工業大学][確率]2017年東京工業大学数学問題4

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問題

\(n\)は正の整数とし、文字\(a, b, c\)を重複を許して\(n\)個並べてできる文字列すべての集合を\(A_n\)とする。\(A_n\)の要素に対し次の条件(*)を考える。
(*) 文字\(c\)が\(2\)つ以上連続して現れない。
以下\(A_n\)から要素を一つ選ぶとき、どの要素も同じ確率で選ばれるとする。
\((1)\) \(A_n\)から要素を一つ選ぶとき、それが条件(*)を満たす確率\(P(n)\)を求めよ。
\((2)\) \(n\geq 12\)とする。\(A_n\)から要素を一つ選んだところ、これは条件(*)を満たし、その\(7\)番目の文字は\(c\)であった。このとき、この要素の\(10\)番目の文字が\(c\)である確率を\(Q(n)\)とする。極限値\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{Q(n)}\)を求めよ。

方針

\((1)\) 漸化式を立てる。\(A_n\)の最後の文字に着目すると良い。

\((2)\) 条件付き確率を考える。

解答

\((1)\) \(A_n\)の要素の個数は\(3^n\)である。条件(*)を満たす\(A_n\)の要素に対して、末尾の文字が何になるかで場合分けする。条件(*)を満たす\(A_n\)の個数を\(p_n\)とし、\(p_n\)のうち末尾が\(a, b, c\)であるものの個数をそれぞれ\(a_n, b_n, c_n\)とする。すなわち、$$p_n = a_n+b_n+c_n \tag{a}\label{a}$$である。\(p_1 = 3, p_2 = 8\)である(\(n = 2\)のときは\(“cc”\)が条件を満たさない)。\(p_n\)の末尾に文字を追加し、\(p_{n+1}\)を作るとき、\(a_n, b_n\)には\(a, b, c\)のどれを追加しても条件を満たす。\(c_n\)は、\(a, b\)を追加したときだけ条件を満たす。したがって、$$p_{n+1} = 3(a_n+b_n) + 2c_n \tag{b}\label{b}$$である。

また、次の漸化式が成り立つ。$$\begin{cases}a_{n+1} & = & a_n + b_n + c_n\\ b_{n+1} & = & a_n + b_n + c_n\\ c_{n+1} & = & a_n+b_n\end{cases} \tag{c}\label{c}$$

さらに、対称性から$$a_n = b_n \tag{d}\label{d}$$である。

\eqref{d}を\eqref{c}に代入して、$$\begin{cases}a_{n+1} & = & 2a_n+c_n\\ c_{n+1} & = & 2a_n\end{cases} \tag{e}\label{e}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}a_{n+2} & = & 2a_{n+1}+c_{n+1}\\ & = & 2a_{n+1}+2a_{n}\end{eqnarray}$$である。\eqref{a}, \eqref{c}から、\(p_n = a_{n}+b_n+c_n = a_{n+1}\)であるから、\(p_{n+2} = 2p_{n+1}+2p_{n}\)である。この漸化式を解く。特性方程式\(t^2=2t+2\)を解くと、\(t = 1\pm \sqrt{3}\)となる。したがって、\(p_n = A(1-\sqrt{3})^{n-1} + B(1+\sqrt{3})^{n-1}\)の形で表すことができる。\(p_1 = 3, p_2 = 8\)であるから、$$\begin{cases}A+B & =& 3\\ A(1-\sqrt{3})+B(1+\sqrt{3}) & = & 8\end{cases}$$である。これから、\(\displaystyle A=\frac{1}{2}\left(3-\frac{5\sqrt{3}}{3}\right), B = \frac{1}{2}\left(3+\frac{5\sqrt{3}}{3}\right)\)となる。もう少し整理すると、\(\displaystyle (1-\sqrt{3})^3 = -2\sqrt{3}\left(3-\frac{3\sqrt{3}}{5}\right), (1+\sqrt{3})^3 = 2\sqrt{3}\left(3+\frac{3\sqrt{3}}{5}\right)\)であるから、\(\displaystyle A = -\frac{1}{4\sqrt{3}}(1-\sqrt{3})^3, B = \frac{1}{4\sqrt{3}}(1+\sqrt{3})^3\)となり、\(\displaystyle p_n = \frac{1}{4\sqrt{3}}(-(1-\sqrt{3})^{n+2}+(1+\sqrt{3})^{n+2})\)がわかる。以上から、\(\displaystyle P(n) = \frac{p_n}{3^n} = \underline{\frac{1}{4\sqrt{3}\cdot 3^n}(-(1-\sqrt{3})^{n+2}+(1+\sqrt{3})^{n+2})}\)である。

\((2)\) \(A_n\)から要素を一つ選び、それが条件(*)を満たし、かつその\(7\)番目の文字が\(c\)である確率を\(q_n\)とする。まず、\(6\)番目の文字は\(a\)か\(b\)でなくてはならず、また\(8\)番目の数字も\(a\)か\(b\)でなくてはならない。この確率は、\(\displaystyle q_n = \frac{p_5\cdot 2\cdot 1\cdot 2\cdot p_{n-8}}{3^n}\)である。また、\(A_n\)から要素を一つ選び、それが条件(*)を満たし、かつその\(7\)番目と\(10\)番目の数字が\(c\)である確率を\(r_n\)とする。このときも\(6,8, 9, 11\)番目の数字は\(a\)か\(b\)でなければならない。この確率は、\(\displaystyle r_n = \frac{p_5\cdot 2\cdot 1 \cdot 2\cdot 2\cdot 1\cdot 2\cdot p_{n-11}}{3^n}\)である。求める確率\(Q(n)\)は、条件付き確率\(Pr(r_n|q_n)\)である。簡単のため\(\displaystyle \alpha = 1-\sqrt{3}, \beta = 1+\sqrt{3}, \gamma = \frac{\alpha}{\beta}\)と置いておくと、\(|\gamma| < 1\)であり、$$\begin{eqnarray}Q(n) & = & Pr(r_n|q_n)\\ & = & \frac{r_n}{q_n} \\ & = & \frac{4p_{n-11}}{p_{n-8}}\\ & = & 4\cdot \frac{-{\alpha}^{n-9}+{\beta}^{n-9}}{-{\alpha}^{n-6}+{\beta}^{n-6}}\\ & = & 4\frac{-{\gamma}^{n-9}+1}{{\beta}^3(-{\gamma}^{n-9}{\alpha}^3+1)}\\ & \to & \frac{4}{{\beta}^3}\\ & = & \frac{4}{(1+\sqrt{3})^3} \\ & = & \frac{2}{5+3\sqrt{3}}\\ & = & \underline{3\sqrt{3}-5}\end{eqnarray}$$となる。

解説

\((1)\) 補助数列の設定はどのように行なっても良い。どのような解き方をしても、場合の数を求める過程で数列の漸化式が出てくるだろう。これを解く必要があるが、最終的にきれいな形にするのにやや手間がかかる。漸化式と特性方程式については、以下の関連問題の記事も参照してほしい。

\((2)\) 条件付き確率は\(Pr(\text{求める確率}|\text{条件})\)の形になる。\(7\)番目と\(10\)番目という考えやすい数字なので、それほど難しくないが、いきなり条件付き確率が出てきてぎょっとした受験生も多かったことだろう。

関連問題

1991年東京工業大学後期数学問題1 10進法と桁の問題、三項間漸化式と特性方程式
2005年前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、特性方程式

関連リンク

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