[math][東京工業大学][確率]2023年東京工業大学数学問題3

red dice stacked on table on terrace math
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問題

(\(60\)点)
実数が書かれた\(3\)枚のカード\(\fbox{0}, \fbox{1},\)\(\fbox{\(\sqrt{3}\)}\)から、無作為に\(2\)枚のカードを順に選び、出た実数を順に実部と虚部にもつ複素数を得る操作を考える。正の整数\(n\)に対して、この操作を\(n\)回繰り返して得られる\(n\)個の複素数の積を\(z_n\)で表す。
\((1)\) \(|z_n| < 5\)となる確率\(P_n\)を求めよ。
\((2)\) \({z_n}^2\)が実数となる確率\(Q_n\)を求めよ。

方針

作られる複素数の候補は、\(i, i\sqrt{3}, 1, 1+i\sqrt{3}, \sqrt{3}, \sqrt{3}+i\)の\(6\)通りで、絶対値は順に\(1, \sqrt{3}, 1, 2, \sqrt{3}, 2\)になる。

解答

\((1)\) まず\(n = 1, 2\)のときは、常に\(|z_n| < 5\)であるから\(P_1 = 1, P_2 = 1\)である。\(n\geq 3\)のとき、絶対値が\(1\)である複素数が出る回数を\(a\)回、絶対値が\(\sqrt{3}\)である複素数が出る回数を\(b\)回、絶対値が\(2\)である複素数が出る回数を\(c\)回とする。それぞれの絶対値になる確率は、いずれも\(\displaystyle \frac{1}{3}\)である。
\(\ \ (i)\) \(a = n\)のとき、\(z_n\)の絶対値は\(1\)で、そのようになる確率は\(\displaystyle \left(\frac{1}{3}\right)^n = \frac{1}{3^n}\)である。
\(\ \ (ii)\) \(a = n-1, b = 1\)のとき、\(z_n\)の絶対値は\(\sqrt{3}\)で、そのようになる確率は\(\displaystyle _{n}{\mathbb{C}}_{1}\left(\frac{1}{3}\right)^{n-1}\cdot \frac{1}{3} = \frac{n}{3^n}\)である。
\(\ \ (iii)\) \(a = n-1, c = 1\)のとき、\(z_n\)の絶対値は\(2\)で、そのようになる確率は\(\displaystyle _{n}{\mathbb{C}}_{1}\left(\frac{1}{3}\right)^{n-1}\cdot \frac{1}{3} = \frac{n}{3^n}\)である。
\(\ \ (iv)\) \(a = n-2, b = 1, c = 1\)のとき、\(z_n\)の絶対値は\(2\sqrt{3}\)で、そのようになる確率は\(\displaystyle 2\cdot _{n}{\mathbb{C}}_{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n-2}\cdot \frac{1}{3} \cdot \frac{1}{3} = \frac{n(n-1)}{3^n}\)である。
\(\ \ (v)\) \(a = n-2, b = 2\)のとき、\(z_n\)の絶対値は\(3\)で、そのようになる確率は\(\displaystyle _{n}{\mathbb{C}}_{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n-2}\cdot \left(\frac{1}{3}\right)^2 = \frac{n(n-1)}{2\cdot 3^n}\)である。
\(\ \ (vi)\) \(a = n-2, c = 2\)のとき、\(z_n\)の絶対値は\(4\)で、そのようになる確率は\(\displaystyle _{n}{\mathbb{C}}_{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n-2}\cdot \left(\frac{1}{3}\right)^2 = \frac{n(n-1)}{2\cdot 3^n}\)である。
\(\ \ (vii)\) \(b \geq 2\)かつ\( c \geq 1\)のとき、\(|z_n| > 5\)である。

以上から、求める確率は$$\begin{eqnarray}P_n & = & \frac{1}{3^n} + 2\cdot \frac{n}{3^n}+ \frac{n(n-1)}{3^n} + 2\cdot \frac{n(n-1)}{2\cdot 3^n}\\ & = & \underline{\frac{2n^2+1}{3^n}} \end{eqnarray}$$である。これは、\(n = 1, 2\)のときにも成立する。

\((2)\) \(i, i\sqrt{3}, 1, 1+i\sqrt{3}, \sqrt{3}, \sqrt{3}+i\)の偏角は順に\(90^\circ, 90^\circ, 0^\circ, 60^\circ, 0^\circ, 30^\circ\)である。したがって、この\(6\)個の複素数を二乗したものの偏角は順に\(\displaystyle 180^\circ, 180^\circ, 0^\circ, 120^\circ, 0^\circ, 60^\circ\)となる。\(z_n^2\)が実数でないとき、取りうる偏角の値はこれらの組み合わせである\(60^\circ, 120^\circ, 240^\circ, 300^\circ\)のいずれかである。下の表のように、いずれの偏角に対しても、\(z_{n+1}^2\)が実数になるような複素数がただ一つ存在する。

\(z_n^2\)複素数\(z_{n+1}^2\)
\(60^\circ\)\(120^\circ\)\(180^\circ\)
\(120^\circ\)\(60^\circ\)\(180^\circ\)
\(240^\circ\)\(120^\circ\)\(360^\circ\)
\(300^\circ\)\(120^\circ\)\(360^\circ\)
\(z_n^2\)と\(z_{n+1}^2\)

したがって、次の漸化式が成り立つ。$$\begin{eqnarray}Q_{n+1} & = & Q_{n}\times \frac{4}{6} + (1-Q_{n})\times \frac{1}{6} \\ & = & \frac{1}{2}Q_n + \frac{1}{6}\end{eqnarray}$$この式を変形すると、$$\begin{eqnarray}Q_{n+1}-\frac{1}{3} & = & \frac{1}{2}\left(Q_n-\frac{1}{3}\right)\end{eqnarray}$$である。\(\displaystyle Q_1 = \frac{4}{6} = \frac{2}{3}\)であるから、求める答えは$$\begin{eqnarray}Q_n & = & \frac{1}{3}+\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}\left(\frac{2}{3}-\frac{1}{3}\right)\\ & = & \underline{\frac{1}{3}\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1} + \frac{1}{3}}\end{eqnarray}$$となる。

解説

難しくはないが、受験生の実力を図るのに良い問題であろう。\((1)\)は場合を分けて数え上げ、\((2)\)は漸化式の立式と状況に応じた解法が求められている。

\(2\)は偏角に応じて細かく場合分けしてもよいが、解答の程度で十分である。

関連問題

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1991年東京大学前期理系数学問題1 確率と漸化式、対称性
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関連リンク

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