自然数の和と積が等しいとき
自然数の和と積が等しい場合、すなわち$$x_1+x_2 + \cdots + x_n = x_1x_2\cdot x_n \tag{*}\label{*}$$について面白い記事を見つけたので、考察してみる。
制約
\eqref{*}において、一般性を失わずに\(x_1\leq x_2\leq \cdots \leq x_n\)としておく。\(n = 1\)はtrivialなので、今後は\(n\geq 2\)としておく。また、\eqref{*}の値を\(v\)とする。例えば、\(n = 3\)で\((1, 2, 3)\)の場合、\(v = 6\)となる。
簡単に見つかる解
\(x_1=x_2 = \cdots = x_{n-2} = 1, x_{n-1} = 2, x_{n} = n\)(以降これを\((1, 1, \cdots, 2, n-2)\)と表記する)が\eqref{*}を満たすことはすぐに分かる。これを「基本解」とする。例えば、\(n = 5\)のとき\((1, 1, 1, 2, 5)\)とすると、\(v = 10\)でこれは\eqref{*}を満たす。しかし、\(n = 5\)の場合、\((1, 1, 2, 2, 2)\)(\(v = 8\))および\((1, 1, 1, 3, 3)\)(\(v = 9\))も\eqref{*}を満たす。これらを「非典型解」としておく。
解の作成方法(\(n\)が定まってない場合)
例えば、\((1, 2, 2, 4)\)を考える。この和は\(9\)で、積は\(16\)である。\(16-9 = 7\)なので、\(7\)個の\(1\)を追加して、\((1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 2, 2, 4)\)を作ると、この和は\(16\)で、積も\(16\)になるので、$$x_1+x_2 + \cdots + x_{11} = x_1x_2\cdots x_{11}$$の解を見つけることができる。
\(1\)が\(n-2\)個の場合
\((1, 1, \cdots, 1, a, b)\)としておく。ただし、\(2\leq a\leq b\)である。ここで、以下を示す。
\(n-1\)が合成数のときのみ、\((1, 1, \cdots, 1, a, b)\)は\(v < 2n\)である非典型解を有する。
証明:\eqref{*}に\((1, 1, \cdots, a, b)\)を代入すると、\(n-2+a+b =ab\)となる。変形して、\((a-1)(b-1) = n-1\)である。\(2\leq a\leq b\)であるから、\(a = 2, b = n\)のときのみ\(n-1\)は素数になりうる。\(n > 2\)のときは基本解を有するし、\(n = 2\)のときも基本解\((2, 2)\)を有する。\(n-1\)が合成数のとき、\((a-1)(b-1) = n-1\)において、\(a-1 > 1\)かつ\(b-1 < n-1\)であるような\((a, b)\)を選択できる。このとき、\(a-1\geq 2\)かつ\(b-1 = (n-1)/(a-1)\leq (n-1)/2\)であるから、\(b\leq (n+1)/2 < n\)である。したがって、$$\begin{eqnarray}ab & = & (n-2) + a + b \\ & \leq & n-2+2b \\ & \leq & n-2+n+1 \\ & = & 2n-1 \\ & < & 2n\end{eqnarray}$$となる。
値の範囲を求める
例えばコンピュータで\eqref{*}のすべての解を求める場合、範囲を絞り込むことは有用である。\(m = x_1+x_2+\cdots + x_n = x_1x_2\cdots x_n\)とすると、まず\(v\leq 2n\)が成り立つ。また、等号が成り立つのは解のうち\(1\)の個数が\(2\)個の時のみである。
また、\(x_1\leq x_2\leq \cdots \leq x_n\)のとき、\(x_n\leq n\)である。これも、上と同様に解の中の\(1\)の個数が\(2\)個の時のみ等号が成り立つ。
これらを示してみる。以下の補題を考える。また、解のうち\(1\)の個数を\(k\)、\(1\)以外の個数を\(m\)としておく。すなわち、\(k + m = n\)である。
補題:\(m\geq 2, a_j\geq 1\)のときのとき、$$(a_1+1)(a_2+1)\cdots (a_m+1)\geq 2(a_1+a_2+\cdots + a_m)$$が成り立つ。
証明は帰納法による(省略)。これを用いると、まず、\(x_1=x_2 = \cdots = x_k = 1\)なので、$$\begin{eqnarray}\prod_{i=1}^{n}{x_i} & = & \prod_{i=k+1}^{n}{x_i} \\ & = & \prod_{i=k+1}^{n}{((x_i-1)+1)} \\ & = & \prod_{j=1}^{m}{((x_{k+j}-1)+1)}\end{eqnarray}$$である。\(j = 1, 2, \cdots, m\)に対して、\(a_{j} = x_{k+j}-1\geq 1\)と置くと、補題により$$\prod_{j=1}^{m}{((x_{k+j}-1)+1)}\geq 2\sum_{j=1}^{m}{(x_{k+j}-1)}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}v & \geq & 2\sum_{j=1}^{m}{(x_{k+j}-1)} \\ & = & 2\sum_{i=1}^{n}{x_i}-2k-2m = 2v-2n\end{eqnarray}$$であり、変形して\(v\leq 2n\)となる。また、補題で等号が成り立つのは\(m = 2\)のときのみであるから、基本解でのみ\(v = 2n\)となることがわかる。
後半の証明は、\(m > 2\)のとき少なくとも\(2\)個\(1\)でない解の要素が存在するので、それを\(x_{k+1}, x_n\)とすると、$$2x_n\leq \prod_{i=1}^{n}{x_i} = v\leq 2n$$から、\(x_n\leq n\)を得る。これも、等号が成り立つのは\(m = 2\)の基本解の時のみである。
その他で非典型解を有するケース
今までの議論から、\(n-1\)が合成数のときは非典型解を有することがわかるので、\(n-1\)が素数で、基本解以外の解を有するケースを考察する。簡単なケースとして、\(n-3\)個が\(1\)で、\(x_{n-2}, x_{n-1}, x_n\)が\(1\)ではないケースを考える。添字が面倒なので、\(p, q, r\)としておく。\eqref{*}は$$n-3 + p+q+r = pqr$$である。変形して、$$n-1 = pqr-(p+q+r) + 2$$である。ここで、\(n-1\)は奇数の素数であるから、少なくとも\(p, q, r\)の内の一つは奇数でなくてはならない。簡単な例として、\((1, 1, \cdots, 2, 2, 2j+1)\)を考える。
すなわち、\(n-1 = 2\cdot 2\cdot (2j+1)-(2+2+2j+1)+2 = 6j+1\)が素数のとき、少なくとも1つの非典型解が存在する。この場合、\(v = 8j+4\)となる。また、\(1\)の個数は\(k = n-3 = 6j-1\)である。
\(5\)以上の素数はいずれも\(6j+1\)あるいは\(6j+5\)の形になるので、さらに探求するには、\(n-1\)が素数で\(6j+5\)の形のときを考えれば良い。言い換えれば、まだ見つかっていない唯一の例外的な値は、\(6\)の整数倍、特に素数より\(1\)多い倍数の中に隠れているに違いない。
実は、以下の予想が知られている。
典型解のみを有する\(n\)は、\(n = 2, 3, 4, 6, 24, 114, 174, 444\)のみである。
2000年半ばの時点で、コンピュータシミュレーションによって\(n=316,200,000\)までこの予想が正しいことが確認されており、その後さらに、\(10,000,000,000\)まで確認されている。
最も小さいProduct Sum Numberの求め方
上記の解の作成方法が参考になる。\(n\)が大きいとき、ほとんどが\(1\)になる筈。
def prodsum(p, s, c, start):
k = p - s + c # product - sum + number of factors
if k < kmax:
if p < n[k]: n[k] = p
for i in range(start, kmax//p*2 + 1):
prodsum(p*i, s+i, c+1, i)
kmax = 12001
n = [2*kmax] * kmax
prodsum(1, 1, 1, 2)
print(sum(set(n[2:])))
積引く和足す要素数を\(k\)とすると、\(k\)個\(1\)を足したものは\eqref{*}を満たすので、これを基に再帰で探していく。つまり、\(p-s\)を作っておいて、それが必要な\(1\)の数。必要な\(1\)の数に対して、現在の要素数を合計すると、\(p-s = 0\)になるセットを作ることができる。
探す範囲をstartから始めることで、探索の範囲を狭め、すでに探索した組み合わせを再度探索するのを防いでいる。kmaxは上限の設定。\(p\)が大きくなると、kmaxの範囲内で有効な数のセットが減少するので、こちらも探索の範囲を狭めることができる。
具体的には、\(kmax = 12\)で\(p = 4\)の例を考えてみる。
- \(kmax//p = 12//4 = 3\)
- その後、探索範囲は\(range(start, 3*2 + 1) = range(start, 7)\)となる。
これによって、\(p\)が大きい場合でも探索範囲が適切に制限され、計算の効率が向上する。
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