問題
\(xyz\)空間において、\(3\)点\((0, 0, 0), (1, 0, 0), (0, 1, 0)\)を通る平面\(\pi_1\)と、\(3\)点\((1, 0, 0), (0, 1, 0), (0, 0, 1)\)を通る平面\(\pi_2\)を考える。\(x_0 = 1, y_0 = 2, z_0 = -2\)として、点\(P_0(x_0, y_0, z_0)\)から初めて、次の手順で順に点\(P_1(x_1, y_2, z_1), P_2(x_2, y_2, z_2)\cdots\)を決める。
\(\ \ \text{・}\)\(k\)が偶数のとき、\(\pi_1\)上の点で点\(P_k(x_k, y_k, z_k)\)からの距離が最小となるものを\(P_{k+1}(x_{k+1}, y_{k+1}, z_{k+1})\)とする。
\(\ \ \text{・}\)\(k\)が奇数のとき、\(\pi_2\)上の点で点\(P_k(x_k, y_k, z_k)\)からの距離が最小となるものを\(P_{k+1}(x_{k+1}, y_{k+1}, z_{k+1})\)とする。
このとき以下の各問に答えよ。
\((1)\) \(\pi_2\)に直行するベクトルのうち、長さが\(1\)で\(x\)成分が正のもの\(\overrightarrow{n_2}\)を求めよ。
\((2)\) \(x_{k+1}, y_{k+1}, z_{k+1}\)をそれぞれ\(x_k, y_k, z_k\)を用いて表わせ。
\((3)\) \(\displaystyle \lim_{k\to\infty}{x_k}, \lim_{k\to\infty}{y_k}, \lim_{k\to\infty}{z_k}\)を求めよ。
方針
誘導があるので自分で考える部分は少ない。
解答
\((1)\) 平面\(\pi_2\)は\(\displaystyle x+y+z=1\)である。この平面の法線ベクトルは\((1, 1, 1)^T\)であるから、\(\displaystyle \underline{\overrightarrow{n_2} = \frac{1}{\sqrt{3}}\begin{pmatrix}1\\ 1\\ 1\end{pmatrix}}\)となる。
\((2)\) \(k\)が偶数のとき、\(\underline{P_{k+1} = (x_k, y_k, 0)}\)である。\(k\)が奇数のとき$$P_{k+1} = P_{k} + t\overrightarrow{n_2}$$と置くことができる。計算すると、$$\begin{eqnarray}P_{k+1} & = & \begin{pmatrix}x_k\\ y_k \\ z_k\end{pmatrix} + \frac{t}{\sqrt{3}}\begin{pmatrix}1\\ 1\\ 1\end{pmatrix}\\ & = & \begin{pmatrix}x_k + \frac{t}{\sqrt{3}}\\ y_k + \frac{t}{\sqrt{3}}\\ z_k + \frac{t}{\sqrt{3}}\end{pmatrix} \end{eqnarray}$$である。\(P_{k+1}\)は平面\({\pi}_2\)上にあるから、$$x_k+\frac{t}{\sqrt{3}}+y_k+\frac{t}{\sqrt{3}}+z_k+\frac{t}{\sqrt{3}} = 1$$となる。したがって、\(\displaystyle t = \frac{1-x_k-y_k-z_k}{\sqrt{3}}\)となる。これから\(\displaystyle \underline{P_{k+1} = \frac{1}{3}\begin{pmatrix}2x_k-y_k-z_k+1\\ -x_k+2y_k-z_k+1\\ -x_k-y_k+2z_k+1\end{pmatrix}}\)となる。
\((3)\) \((2)\)から\(l\)を整数として、$$\begin{cases}x_{2l+1} & = & x_{2l}\\ y_{2l+1} & = &y_{2l}\\ z_{2l+1} & = & 0 \end{cases} \tag{a}\label{a}$$および$$\begin{cases}x_{2l+2} & = & \displaystyle \frac{1}{3}(2x_{2l+1}-y_{2l+1}-z_{2l+1}+1)\\ y_{2l+2} & = & \displaystyle \frac{1}{3}(-x_{2l+1}+2y_{2l+1}-z_{2l+1}+1)\\ z_{2l+2} & = & \displaystyle \frac{1}{3}(-x_{2l+2}-y_{2l+1}+2z_{2l+1}+1)\end{cases} \tag{b}\label{b}$$となる。\eqref{a}, \eqref{b}から、$$\begin{cases}x_{2l+2} & = & \displaystyle \frac{1}{3}(2x_{2l}-y_{2l}+1)\\ y_{2l+1} & = & \displaystyle \frac{1}{3}(-x_{2l}+2y_{2l}+1)\\ z_{2l+2} & = & \displaystyle \frac{1}{3}(-x_{2k}-y_{2l}+1)\end{cases} \tag{c}\label{c}$$である。\eqref{c}から、$$\begin{cases}x_{2l+2}+y_{2l+2} & = & \displaystyle \frac{1}{3}(x_{2l}+y_{2l}+2) \\ x_{2l+2}-y_{2l+2} & = & x_{2l}-y_{2l}\\ x_{2l+2}+y_{2l+2}+z_{2l+2} & = & 1 \end{cases}\tag{d}\label{d}$$となる。\(x_{2l}+y_{2l} = w_{2l}\)とすると、\(w_0 = 3\)であり、\eqref{d}の一番上の式から\(3w_{2l+2} = w_{2l}+2\)である。変形して、\(\displaystyle w_{2l+2}-1 = \frac{1}{3}\left(w_{2l}-1\right)\)であるから、\(\displaystyle w_{2l}-1=\left(\frac{1}{3}\right)^{l}\left(3-1\right)\)となる。よって、\(\displaystyle x_{2l}+y_{2l} = 2\left(\frac{1}{3}\right)^{l}+1\)である。\eqref{d}の真ん中の式から、\(x_{2l}-y_{2l} = x_0-y_0 = -1\)であるから、\(\displaystyle x_{2l} = \left(\frac{1}{3}\right)^{l}, y_{2l} = \left(\frac{1}{3}\right)^{l}+1\)である。また、\eqref{d}の下の式から、\(\displaystyle z_{2l} = -2\left(\frac{1}{3}\right)^{l}\)となる。これは\(l = 0\)で成り立つ。以上から、\(k\)が偶数のとき、$$x_{k} = \left(\frac{1}{3}\right)^{\frac{k}{2}}, y_{k} = \left(\frac{1}{3}\right)^{\frac{k}{2}}+1, z_{k} = -2\left(\frac{1}{3}\right)^{\frac{k}{2}}$$であり、\(k\)が奇数のとき$${x_{k} = \left(\frac{1}{3}\right)^{\frac{k-1}{2}}, y_{k} = \left(\frac{1}{3}\right)^{\frac{k-1}{2}}+1, z_{k} = 0}$$である。極限は、$$\underline{\lim_{k\to\infty}{x_k} = 0, \lim_{k\to\infty}{y_k} = 1, \lim_{k \to\infty}{z_k} = 0}$$である。
解説
\((1)\) \(xy\)平面上の直線\(ax+by = 1\)に垂直なベクトルは\(\displaystyle \begin{pmatrix}a\\ b\end{pmatrix}\)である。これは、ある一方向のベクトルと、ある一点を決めれば直線が決定されることからすぐに分かる。どういうことかというと、図のようにある直線と垂直なベクトル\(\displaystyle \begin{pmatrix}a\\ b\end{pmatrix}\)と、直線上の点\((x_0, y_0)\)を定めれば、直線上の点\((x, y)\)に対して$$\begin{pmatrix}x-x_0\\ y-y_0\end{pmatrix}\cdot\begin{pmatrix}a\\ b\end{pmatrix} = 0$$となり、これを整理すると\(ax+by = 1\)の形になる。
全く同様に、\(xyz\)空間上の平面\(ax+by+cz = 1\)に垂直なベクトルは\(\displaystyle \begin{pmatrix}a\\ b\\ c\end{pmatrix}\)となる。
\((2)\) 奇遇で場合分けする。数列の漸化式についてはどんな解き方でも良いだろう(推測して帰納法でも十分)。
\((3)\) 偶数奇数で極限が一致するかどうかに注意する。
関連問題
1989年京都大学前期理系数学問題4 空間座標とベクトル
2009年東京医科歯科大学前期数学問題1 格子点と座標平面、座標空間
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