[math][京都大学]2024年京都大学理学部特色入試第4問

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問題

\(t\)を実数とする。投げたとき表と裏の出る確率がそれぞれ\(\displaystyle \frac{1}{2}\)であるコインを\(10\)回投げて、座標空間の点\(P_0, P_1, P_2, \cdots, P_{10}\)を以下で定める。

・\(P_0\)の座標は\((1, 2, 3)\)とする。
・\(n\)を\(1\leq n\leq 10\)を満たす任意の自然数とする。\(P_{n-1}\)の座標が\((x, y, z)\)であるとき、もし\(n\)回目のコイン投げで表が出たなら\(P_n\)の座標は\(((1-t)x+ty, x, z)\)とし、裏が出たなら\(P_n\)の座標は\((x, (1-t)y + tz, y)\)とする。

例えば\(t = -1\)のとき、\(1\)回目のコイン投げで表、\(2\)回目のコイン投げで裏が出たなら、\(P_0, P_1, P_2\)の座標はそれぞれ\((1, 2, 3), (0, 1, 3), (0, -1, 1)\)となる。また\(t = -1\)のとき、\(P_1\)が取りうる座標空間の点は\((0, 1, 3)\)と\((1, 1, 2)\)の\(2\)個である。以下の設問に答えよ。
\((1)\) \(t = -1\)のとき、\(P_3\)の座標が\((1, 0, 1)\)となる確率を求めよ。
\((2)\) \(P_{10}\)が取りうる座標空間の点の個数を\(N(t)\)とする。\(N(t)\geq 250\)となる実数\(t\)が存在するかどうかを判定せよ。

方針

\((1)\)は\((2)\)の大きなヒントになっている。

解答

\((1)\) \(t = -1\)のとき、\(((1-t)x+ty, x, z) = (2x-y, x, z)\)であり、また\((x, (1-t)y+tz, y) = (x, 2y-z, y)\)である。したがって、$$\begin{eqnarray}P_0: (1, 2, 3) & \rightarrow & P_1: \begin{cases}(0, 1, 3) \\ (1, 1, 2)\end{cases} \\ & \rightarrow & P_2: \begin{cases}(-1, 0, 3) \\ (0, -1, 1)\\ (1, 1, 2) \\ (1, 0, 1)\end{cases} \\ & \rightarrow & P_3: \begin{cases}(-2, -1, 3)\\ (-1, -3, 0)\\ (1, 0, 1)\\ (0, -3, -1)\\ (1, 1, 2)\\ (1, 0, 1)\\ (2, 1, 1) \\ (1, -1, 0)\end{cases}\end{eqnarray}$$となる。したがって、\(P_3\)の座標が\((1, 0, 1)\)となる確率は\(\displaystyle \frac{2}{8} = \underline{\frac{1}{4}}\)である。

\((2)\) 表、裏、表と出たときは、$$\begin{eqnarray}(x, y, z) & \rightarrow & ((1-t)x+ty, z, z) \\ \rightarrow & & ((1-t)x+ty, (1-t)x+tz, x) \\ \rightarrow & & ((1-t)^2x+t(1-t)y+t(1-t)x+t^2z, (1-t)x+ty, x)\\ & = & ((1-t)x + t(1-t)y+t^2z, (1-t)x+ty, x)\end{eqnarray}$$であり、裏、表、裏と出たときは$$\begin{eqnarray} (x, y, z) & \rightarrow & (x, (1-t)y+tz, y)\\ \rightarrow & & ((1-t)x+t(1-t)y + t^2z, x, y)\\ \rightarrow & & ((1-t)x+t(1-t)y+t^2z, (1-t)x+ty, x)\end{eqnarray}$$と同じ行き先に辿り着くから、表裏表と裏表裏は同一視できる。\(P_i (1\leq i\leq 10)\)が取りうる座標空間の個数を\(q_i\)とする。\((1)\)から、\(q_1 = 2, q_2 = 4, q_3 = 7\)がわかる。ここで、\(q_4\)は\(2\times q_3\)としたいが、\(P_4\)のうち、表表裏表と表裏表表、および裏表裏表と裏裏表裏は同一視しないといけない。すなわち\(2 = q_1\)通りは重複するので、異なる行き先の個数は\(2\times q_3 -q_1 = 12\)通りである。同様に、一般に\(q_{n+3}\)は、\(2\times q_{n+2}\)から行き先が同じ\(q_n\)を除いたものになるから、\(q_{n+3} = 2q_{n+2}-q_n\)となる。順に計算すると、$$\begin{eqnarray}q_5 & = & 2\times 12-4 \\ & = & 20\\ q_6 & = & 2\times 20-7 \\ & = & 33 \\ q_7 & = & 2\times 33 -12 \\ & = & 54 \\ q_8 & = & 2\times 54 – 20 \\ & = & 88 \\ q_9 & = & 2\times 88-33 \\ & = & 143\\ q_{10} & = & 2\times 143-54 \\ & = & 232\end{eqnarray}$$となる。したがって、\(N(t) = 232\)であるから、\(N(t)\geq 250\)となることはない。

解説

\((1)\)でわかることは、適当に\(t\)を定めると、表裏表と裏表裏以外の行き先は、異なる座標にできるということである。しかし、どんな\(t\)であっても表裏表と裏表裏の行き先は同一になる。ある点\((x, y, z)\)から移動する先は、表か裏かで\(2\)通りある。\(P_{n+3}\)のうち、重複するのは\(P_{n}\)から出発し、表裏表と出たものと、裏表裏と出たものであるから、これを除いて考えることで解答の漸化式を得る。

解答の漸化式は特性方程式\(t^3 = 2t^2-1\)の解\(\displaystyle 1, \frac{1+\sqrt{5}}{2}, \frac{1-\sqrt{5}}{2}\)を用いて\(\displaystyle q_n = \alpha + \beta \left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^n + \gamma \left(\frac{1-\sqrt{5}}{2}\right)^n\)と書くことができる。\(q_0 = 1, q_1 = 2, q_2 = 4\)から\(\displaystyle \alpha = -1, \beta = 1+\frac{2}{\sqrt{5}}, \gamma = 1-\frac{2}{\sqrt{5}}\)となる。簡単のために\(\displaystyle \phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2}\)と置くと、\(\displaystyle \frac{1-\sqrt{5}}{2} = 1-\phi = (-\phi)^{-1}\)である。

さて、\(F_0 = 0, F_1 = 1, F_{n+2} = F_{n+1} + F_{n}\)によって定まる数列をフィボナッチ数列というが、この数列の一般項は\(\displaystyle F_{n} =\frac{1}{\sqrt{5}}({\phi}^n – (-\phi)^{-n})\)で表される。

これを用いて\(q_n\)を変形すると、$$\begin{eqnarray}q_n & = & -1+\left(\frac{(1+\sqrt{5})+1}{\sqrt{5}}\right)(\phi)^n + \left(\frac{-(1-\sqrt{5})-1}{\sqrt{5}}\right)(-\phi)^{-n} \\ & = & -1 + \frac{2\phi + 1}{\sqrt{5}}{\phi}^n+\frac{-2(\phi)^{-1}-1}{\sqrt{5}}(-\phi)^{-n} \\ & = & -1+\frac{2}{\sqrt{5}}({\phi}^{n+1}-(-\phi)^{-(n+1)}) + \frac{1}{\sqrt{5}}(\phi^{n}-(-\phi)^{-n}) \\ & = & -1 + 2F_{n+1} + F_n \\ & = & -1 + F_{n+1} + (F_{n+1} + F_n)\\ & = & -1 + F_{n + 1} + F_{n + 2}\\ & = & -1 + F_{n+3}\end{eqnarray}$$である。

関連問題

1992年東京大学前期文系数学問題3 場合の数とフィボナッチ数列
2015年東京大学理系数学問題4 整数、Fibonacci数列

関連リンク

フィボナッチ数 - Wikipedia
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