問題
\((1)\) 次の等式を示せ。$$\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{f(\sin{2x})\sin{x}dx} = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{f(\sin{2x})\cos{x}dx}$$
\((2)\) 次の等式を示せ。$$\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{f(\sin{2x})(\sin{x}+\cos{x})dx} = \int_{-1}^{1}{f(1-t^2)dt}$$
\((3)\) 次の定積分の値を求めよ。$$\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin{x}}{1+\sqrt{\sin{2x}}}dx}$$
方針
\((3)\) 誘導を利用するが、それだけではすぐに解けない。
解答
\((1)\) \(\displaystyle t = \frac{\pi}{2}-x\)とすると、$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{f(\sin{2x})\cos{x}dx} & = & \int_{\frac{\pi}{2}}^{0}{f\left(\sin{2\left(\frac{\pi}{2}-t\right)}\right)\cos{\left(\frac{\pi}{2}-t\right)}(-dt)}\\ & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{f(\sin{2t})\sin{t}dt}\end{eqnarray}$$である。
\((2)\) \(\sin{x} -\cos{x} = t\)と置くと、\(1-2\sin{x}\cos{x} =t^2\)であるから、\(\sin{2x} = 1-t^2\)である。\(x = 0\)のとき\(t = -1\)で、\(\displaystyle x = \frac{\pi}{2}\)のとき\(t = 1\)である。また、\((\cos{x}+\sin{x})dx = dt\)であるから、$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{f(\sin{2x})(\sin{x}+\cos{x})dx} & = & \int_{-1}^{1}{f(1-t^2)t}dt\end{eqnarray}$$となる。
\((3)\) 求める定積分の値を\(I\)とする。\(\displaystyle f(x) = \frac{1}{1+\sqrt{x}}\)とする。\((1), (2)\)から$$\begin{eqnarray}2I & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{f(\sin{2x})(\sin{x}+\cos{x})dx} & = & \int_{-1}^{1}{f(1-t^2)dt} \\ & = & \int_{-1}^{1}{\frac{dt}{1+\sqrt{1-t^2}}} \\ & = & 2\int_{0}^{1}{\frac{dt}{1+\sqrt{1-t^2}}} \end{eqnarray}$$である。したがって、\(\displaystyle I = \int_{0}^{1}{\frac{dt}{1+\sqrt{1-t^2}}}\)である。\(t = \sin{\theta}\)と再度置換すると、\(dt = \cos{\theta}d\theta\)であるから、$$\begin{eqnarray} I & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{1}{1+\cos{\theta}}\cos{\theta}d\theta} \\ & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\left(1-\frac{1}{1+\cos{\theta}}\right)d\theta}\end{eqnarray}$$である。\(\displaystyle J = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{d\theta}{1+\cos{\theta}}}\)と置く。$$\begin{eqnarray}J & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{1}{2\cos^2{\frac{\theta}{2}}}} \\ & = & \left[\tan{\frac{\theta}{2}}\right]_{0}^{\frac{\pi}{2}} \\ & = & 1\end{eqnarray}$$である。以上から、\(\displaystyle I = \frac{\pi}{2}-J = \underline{\frac{\pi}{2}-1}\)がわかる。
解説
一般に\(\sin{x}, \cos{x}\)の有理式の積分は\(\displaystyle t = \tan{\frac{x}{2}}\)と置換することでうまく積分できることが多い。本問題では\((3)\)でこのように置換してもなかなかきれいな形に持ち込めないので、誘導を利用する。誘導を利用した後も、何段階かステップを経る必要がある。
来年度は東京医科歯科大学は東京工業大学と合併し、東京科学大学となる。本問題を以て、東京医科歯科大学の数学の問題は長い歴史を終える。
関連問題
1999年東京医科歯科大学数学問題3 曲線の長さと三角関数の積分
2008年東京医科歯科大学前期数学問題3 抽象関数と関数方程式、面積と積分
2023年東京医科歯科大学数学問題3 微分積分と計算問題
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