問題
実数全体を定義域にもつ微分可能な関数\(f(t), g(t)\)が次の\(6\)つの条件を満たしているとする。$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(t) = -f(t)g(t),\ g^{\prime}(t) = \{f(t)\}^2, \\ f(t) > 0,\ |g(t)| < 1,\ f(0) = 1,\ g(0) = 0\end{eqnarray}$$このとき、$$p(t) = \{f(t)\}^2 + \{g(t)\}^2,\ q(t) = \log{\frac{1+g(t)}{1-g(t)}}$$とおく。
\((1)\) \(p^{\prime}(t)\)を求めよ。
\((2)\) \(q^{\prime}(t)\)は定数関数であることを示せ。
\((3)\) \(\displaystyle \lim_{t\to\infty}{g(t)}\)を求めよ。
\((4)\) \(f(T) = g(T)\)となる正の実数\(T\)に対して、媒介変数表示された平面曲線\((x, y) = (f(t), g(t))\ (0\leq t\leq T)\)の長さを求めよ。
方針
誘導に従う。
解答
\((1)\) $$\begin{eqnarray}p^{\prime}(t) & = & 2f^{\prime}(t)f(t)+2g^{\prime}(t)g(t) \\ & = & -2\{f(t)\}^2g(t) + 2\{f(t)\}^2g(t) \\ & = & 0\end{eqnarray}$$となる。
\((2)\) \((1)\)から\(p(t)\)は定数で、\(f(0) = 1, g(0) = 0\)であるから、\(p(t) = 1\)である。したがって、\(\{f(t)\}^2 + \{g(t)\}^2 = 1\)となる。$$\begin{eqnarray}q^{\prime}(t) & = & \frac{g^{\prime}(t)}{1+g(t)}-\frac{-g^{\prime}(t)}{1-g(t)} \\ & = & \frac{2g^{\prime}(t)}{1-\{g(t)\}^2} \\ & = & \frac{2\{f(t)\}^2}{1-\{g(t)\}^2} \\ & = & 2\end{eqnarray}$$となり、これは定数関数である。
\((3)\) \((2)\)から、\(q(t) = 2t+ C\)と置ける。\(q(0) = 0\)であるから、\(C = 0\)がわかる。したがって、\(\displaystyle \log{\frac{1+g(t)}{1-g(t)}} = 2t\)となり、変形すると、\(\displaystyle g(t) = \frac{e^{2t}-1}{e^{2t}+1}\)となる。更に変形すると、\(\displaystyle g(t) = \frac{1-e^{-2t}}{1+e^{-2t}}\)で、\(t\to\infty\)のとき\(e^{-2t}\to 0\)であるから、\(\displaystyle \lim_{t\to\infty}{g(t)} = 1\)となる。
\((4)\) \(f(T) = g(T)\)であるから、\(\displaystyle \frac{2}{e^T+e^{-T}} = \frac{e^T-e^{-T}}{e^T+e^{-T}}\)となる。したがって、\(e^{T}-e^{-T} = 2\)である。変形して、\(e^{2T}-2e^{T}-1 = 0\)であるから、\(e^T = 1+\sqrt{2}\)となる。また、\(\{f(t)\}^2 + \{g(t)\}^2 = 1\)であるから、\((3)\)から$$\begin{eqnarray}\{f(t)\}^2 & = & 1-\{g(t)\}^2 \\ & = & 1-\left(\frac{e^{t}-e^{-t}}{e^{t}+e^{-t}}\right)^2 \\ & = & \frac{4}{(e^t+e^{-t})^2} \end{eqnarray}$$となる。\(f(t) > 0\)であるから、\(\displaystyle f(t) = \frac{2}{e^t+e^{-t}}\)となる。求める曲線の長さを\(l\)とすると、$$\begin{eqnarray}l & = & \int_{0}^{T}{\sqrt{\{f^{\prime}(t)\}^2 + \{g^{\prime}(t)\}^2}dt} \\ & = & \int_{0}^{T}{\sqrt{\{f(t)\}^2\{g(t)\}^2 + \{f(t)\}^4}dt} \\ & = & \int_{0}^{T}{f(t)\sqrt{\{f(t)\}^2+\{g(t)\}^2}dt} \\ & = & \int_{0}^{T}{f(t)dt} \\ & = & \int_{0}^{T}{\frac{2}{e^{t}+e^{-t}}dt} \\ & = & \int_{0}^{t}{\frac{2e^t}{e^{2t}+1}dt}\end{eqnarray}$$である。最後の積分で、\(e^t = s\)と置く。すると、$$\begin{eqnarray}l & = & \int_{1}^{e^T}{\frac{2s}{s^2+1}\cdot \frac{ds}{s}} \\ & = & \int_{1}^{1+\sqrt{2}}{\frac{2ds}{s^2+1}}\end{eqnarray}$$である。さらに\(s = \tan{\theta}\)と置く。$$\begin{eqnarray}l & = & \int_{\frac{\pi}{4}}^{\theta_0}{\frac{2}{\tan^2{\theta}+1}\cdot \frac{1}{\cos^2{\theta}}d\theta} \\ & = & 2\left[\theta \right]_{\frac{\pi}{4}}^{\theta_0} \\ & = & 2\theta_0-\frac{\pi}{2}\end{eqnarray}$$である。ただし、\(\displaystyle \tan{\theta_0} = 1+\sqrt{2}\)である。したがって、\(\displaystyle \underline{l = 2\tan^{-1}{(1+\sqrt{2})}-\frac{\pi}{2}}\)である。
解説
こちらの問題も、2024年度の京都大学の理系数学と同じく、双曲線関数を題材にしたものである。問題としては丁寧な誘導がつけられていて、それほど難しくはない。
ところで、\(\tan{\theta_0}=1+\sqrt{2}\)となる\(\theta_0\)についてであるが、\(\displaystyle \tan^2{\frac{x}{2}} = \frac{1-\cos{x}}{1+\cos{x}}\)(\(\tan\)の半角の公式)で\(\displaystyle x = \frac{3}{4}\pi\)とすると、\(\displaystyle \tan^2{\frac{3}{8}\pi} = \frac{1+\frac{1}{\sqrt{2}}}{1-\frac{1}{\sqrt{2}}} = (1+\sqrt{2})^2\)であるから、\(\displaystyle \tan{\frac{3}{8}\pi} = 1+\sqrt{2}\)となる。よって、解答の\(\displaystyle \theta_0 = \frac{3}{8}\pi\)であり、\(\displaystyle l = \frac{\pi}{4}\)となる。ここまでやらずに、上記の解答の記述で止めた場合、どの程度減点されるのかは不明である。
関連問題
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