[math]1998年後期京都大学理系数学問題1

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問題

\(2\)次の正方行列\(X, Y\)は\(XY = Y X\)のとき交換可能であるという。\(2\)次の正方行列\(A\)と\(B\)は交換可能ではないが、\(A\)と\(AB\)は交換可能であり、\(A\)と\(BA\)を交換可能であるとする。このとき
\((1)\) \(A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \\ \end{pmatrix}\)とするとき、\(ad-bc = 0\)を示せ。
\((2)\) \(O\)を零行列とするとき、\(A^2 = O\)であることを示せ。

方針

ハミルトン・ケーリーの式を用いる。

解答

\((1)\) \(A\)と\(B\)は交換可能であるから、\(A\cdot AB = AB \cdot A\)である。\(ad-bc \ne 0\)とすると、\(A^{-1}\)が存在するので、\(A\cdot AB = AB\cdot A\)の左から\(A^{-1}\)を掛けて、\(AB = BA\)となる。これは\(A\)と\(B\)が交換可能でないことに反する。よって\(ad-bc = 0\)である。

\((2)\) \((1)\)より\(det(A) = ad-bc = 0\)であるから、ハミルトン・ケーリーの式から$$A^2-tr(A) = O$$である。\(tr(A) = p\)と置く。さて、\(A\)と\(BA\)も交換可能であるから、\(A\cdot BA = BA\cdot A\)である。これと\((1)\)の途中の式から、\(A^2B = BA^2\)がわかる。この式に\(A^2 = pA\)を代入して、\(pAB = pBA\)となる。\(p\ne 0\)とすると、\(AB = BA\)となり、これも\(A\)と\(B\)が交換可能でないことに反する。よって\(p=0\)であり、\(A^2 = O\)となる。

解説

\((1)\)は条件を活用する。なお、ハミルトン・ケーリーの定理に現れる$$A^2−(a+d)A+(ad−bc)=O$$の\(a+d\)を行列\(A\)のトレースといい、\(tr(A), trA\)などと表し、また、\(ad−bc\)を行列\(A\)の判別式といい、\(detA\)などと表す。\((2)\)はハミルトン⋅ケーリーの式がピンときたら簡単に解決する。

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