[math]1989年東京大学数学文理共通問題1

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問題

\(k > 0\)とする。\(xy\)平面上の二曲面$$y = k(x-x^3), x = k(y-y^3)$$が第一象限に\(\alpha \ne \beta\)なる交点\((\alpha, \beta)\)をもつような\(k\)の範囲を求めよ。

方針

与えられた二曲線は変数についての\(3\)次関数なのでグラフを書くことができる。しかし、この問題の場合その情報はほとんど役に立たない。実際、当時東京大学を受験した次学生のほとんどがグラフを書こうという方針でこの問題に挑み、撃砕してしまったそうである。

解答

以下の式をみたす\(\alpha > 0, \beta > 0 (\alpha \ne \beta)\)が存在するような\(k\)の範囲を求めればよい。$$\beta = k(\alpha-{\alpha}^3), \alpha = k(\beta-{\beta}^3)$$

この二式の和、差を作り、次と同値である。$$\beta + \alpha = k(\beta+\alpha)(1+\alpha\beta-{\beta}^2-{\alpha}^2)$$ $$\beta-\alpha = k(\beta-\alpha)(-1+\alpha\beta+{\beta}^2+{\alpha}^2)$$\(\alpha + \beta\)も\(\alpha-\beta\)も\(0\)でないので、次と同値である。$$1 = k(1+\alpha\beta-{\beta}^2-{\alpha}^2)$$ $$1 = k(-1+\alpha\beta+{\beta}^2+{\alpha}^2)$$再度この二式の和、差を作り、次と同値である。$$2 = 2k\alpha\beta$$ $$0 = 2k(1-{\beta}^2-{\alpha}^2)$$ \(k > 0\)であるから、これは次と同値である。$$\alpha \beta = \frac{1}{k}$$ $${\beta}^2 + {\alpha}^2 = 1$$この下の式から、\(\alpha = \sin{\theta}, \beta = \cos{\theta}\)と置けて、上の式に代入すると、\(\sin{\theta}\cos{\theta} = \frac{1}{k}\)となる。よって、\(\sin{2\theta} = \frac{2}{k}\)となり、これを満たす実数\(\theta\)が存在するのは、\(k > 2\)の時である(\(k = 2\)の時は\(\alpha = \beta\)となる)。

解説

与えられた二曲線の式は\(x\)と\(y\)について対象だから、辺ごとの和や差を作ると簡単な形にすることができる。和と差を作ることで、与えられた二式から、より簡単な二式(しかも同値変形なので、余分な条件を考えなくてよい)が出てくる。何回かこの操作をくり返すことで考え易い形を導き、答えを出す。最後のところで、\(\sin{\theta} = a\)となる実数\(\theta\)が存在するのは\(\mid a\mid \leq 1\)のときであるという基本的な事実を用いている。\(xy\)平面上に二つの曲線を描いて交わる条件を考えても良い。

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