[math]1993年京都大学後期理系数学問題3

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問題

\(a\)は正の定数とする。不等式\(a^{x}\geq ax\)がすべての正の数\(x\)に対して成り立つという。このとき\(a\)はどのようなものか。

方針

「文字定数は分離せよ」。

解答

\(a, x\)は正だから、\(\log\)を取って考える。与えられた不等式の両辺の\(\log\)を考えると、$$x\log{a}\geq \log{a} + log{x}$$となる。変形すると$$(x-1)\log{a}\geq \log{x}$$である。同値変形したから、この不等式が成り立つような\(a\)を考えれば良い。

\((i)\) \(x > 1\)の時、不等式の両辺を\(x-1\)で割って、$$\log{a}\geq \frac{\log{x}}{x-1}$$である。ここで、\(x\to 1 + 0\)とすると、微分定数の定義から、\(\{\log{x}\}^{\prime}_{x=1} = \frac{1}{x}_{\mid x= 1} = 1\)であるから、特に\(\log{a}\geq 1\)、すなわち\(a\geq e\)が必要である。

\((ii)\) \(x < 1\)の時、同じく不等式の両辺を\(x-1\)で割って、$$\log{a}\leq \frac{\log{x}}{x-1}$$である。ここで、\(x\to 1-0\)とすると、これも\((i)\)と同様に\(\log{a}\leq 1\)、すなわち\(a\leq e\)が必要である。

\((i), (ii)\)から\(a = e\)が必要であるが、逆に\(a=e\)の時題意の不等式は\(e^x\geq ex\)となる。\(f(x) = e^x-ex (x > 0)\)とすると、\(f^{\prime}(x) = e^x-e\)だから、\(f(x)\)は\(x = 1\)の時に最小で、\(f(1) = 0\)であるから、\(x > 0\)の時\(e^x\geq ex\)が成り立つ。以上から、\(a = e\)である。

解説

なかなか難しい問題で、「文字定数は分離せよ」という受験界の格言が役に立つ。与えられた不等式の両辺の\(\log\)をとると、\(\log{a}\)を分離出来ることがわかるので、\(x-1\)の正負に注意して文字定数を分離する。ここから\(\frac{\log{x}}{x-1}\)の増減を考えても良いが、さらに工夫して必要条件を得ている。この必要条件が実際に十分であることを確かめれば終了となる。「\(a\)はどのようなものであるか」という変わった聞き方の意味が答えを出した後になって分かる。

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