[math]1994年京都大学後期数学文理共通問題1

Table of Contents

問題

\(a+b+c = 0\)を満たす実数\(a, b, c\)について、\((\mid a \mid + \mid b\mid + \mid c \mid)^2\geq 2(a^2+b^2+c^2)\)が成り立つことを示せ。また、ここで等号が成り立つのはどんな場合か。

方針

不等式の問題では一文字消去が原則ではあるが、対称性を崩さずに式変形を進めるのも良いアイデアである。

解答

示すべき不等式を変形すると、\(2(\mid ab\mid + \mid bc \mid + \mid ca \mid)\geq a^2 + b^2 + c^2\)となるので、これを示すことにする。右辺は、\(a+b+c = 0\)を用いると$$\begin{eqnarray}a^2+b^2+c^2 & = & (a+b+c)^2-2(ab+bc+ca) \\ & = & -2(ab+bc+ca) \end{eqnarray}$$だから、$$\mid ab \mid + \mid bc \mid + \mid ca \mid \geq -(ab+bc+ca)$$を示せば良い。一般に、実数\(x\)に対して\(\mid x\mid \geq -x\)であるから、\(\mid ab\mid\geq -ab, \mid bc\mid \geq -bc, \mid ca\mid \geq -ca\)が成り立ち、辺ごとに足すと\(\mid ab\mid + \mid bc\mid + \mid ca\mid \geq -(ab+bc+ca)\)が成立する。また、\(\mid x\mid \geq -x\)において等号が成立するのは\(x\leq 0\)の時である。したがって、与えられた不等式で等号が成立するのは、\(ab\leq 0, bc\leq 0, ca\leq 0\)すべてが成り立つ時である。これらをすべて掛け合わせると、\(a^2b^2c^2\leq0\)となる。よって、\(a, b, c\)のうち少なくともひとつは\(0\)であることが必要である。逆に、例えば\(a=0\)のとき\(b +c = -a = 0\)となり、\(bc\leq 0\)が満たされ、他の\(ab\leq0, ca\leq 0\)も成り立つから、与えられた不等式の等号が成立する。これは十分条件である。

解説

色々な解き方のある問題だが、見た目ほど易しくない。不等式の問題ではいきなり与えられた式を示すのではなく、簡単に出来る所まで簡単にしてから示すようにする。

等号成立の条件も簡単ではない。\(a^2b^2c^2\leq 0\)であることから、\(a, b, c\)の少なくとも1つは\(0\)でないといけない。これは必要条件でしかなく、十分条件であることも確かめなくてはならない。こういった問題で十分性を確かめなかった場合、\(0\)点にされても文句は言えない。採点官に何も分かっていないと思われても(実際にはそうでなくても)言い訳のしようがないからである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました