問題
\(a\)が実数で\(a<1\)のとき、数列\(x_0, x_1, x_2, \cdots, x_n, \cdots, \)を\(\displaystyle{x_0 = a, x_n = \frac{1}{2-x_{n-1}} (n = 1, 2, 3, \cdots)}\)によって定義する。このとき
\((1)\) \(x_n\)を\(n\)と\(a\)で表わせ。
\((2)\) $$\lim_{n\to\infty}{n^2\left(x_n-1+\frac{1}{n}\right)}$$を求めよ。
方針
分数漸化式でも特性方程式の解を求めることが役に立つ。
解答
\((1)\) \(\displaystyle{x_n = \frac{1}{2-x_{n-1}}}\)を変形すると、\(\displaystyle{x_n-1=\frac{x_{n-1}-1}{2-x_{n-1}}}\)となる。ここで、\(x_n = 1\)となる\(n\)が存在すると仮定すると、上の漸化式から\(x_n = x_{n-1}=\cdots = x_0 = 1\)となる。これは\(x_0 = a < 1\)であることに反する。よって、すべての\(n\)に対して\(x_n\ne 1\)である。そこで\(\displaystyle{y_n = \frac{1}{x_{n}-1}}\)と置くと、上の変形式の逆数をとって、$$y_n = -1+y_{n-1}$$となる。これから、\(y_n -y_{n-1} =-1\)となり、$$\begin{eqnarray}y_n & = & y_0 + \sum_{k=1}^{n}{(-1)} \\ & = & -n + \frac{1}{x_0-1}\\ & = & \frac{1-n(a-1)}{a-1}\end{eqnarray}$$となる。よって、\(\displaystyle{x_n = 1+\frac{1}{y_n} = \frac{a-n(a-1)}{1-n(a-1)}}\)となる。これは\(n = 0\)でも成立する。
\((2)\) \((1)\)から、$$\begin{eqnarray}x_n-1 + \frac{1}{n} & = & \frac{a-1}{1-n(a-1)} + \frac{1}{n} \\ & = & \frac{1}{n\{1-n(a-1)\}} \\ & = & \frac{1}{n^2}\frac{1}{\frac{1}{n}-(a-1)}\end{eqnarray}$$である。これから、$$\begin{eqnarray}n^2\left(x_n-1+\frac{1}{n}\right) & = & \frac{1}{\frac{1}{n}-(a-1)} \\ & \to & \frac{1}{1-a} (n\to\infty) \end{eqnarray}$$となる。よって、求める極限は\(\displaystyle{\frac{1}{1-a}}\)である。
解説
\((2)\)の極限は理系の向けだが、出題当時は文系の問題として出題された。\((2)\)はおまけのようなもので、問題は\((1)\)である。いきなり\(x_n-1\)を持ち出してびっくりした人もいたかも知れない。ここでは以下の知識を用いている。
分数漸化式\(\displaystyle{x_{n+1} = \frac{cx_n+d}{ax_n+b} (n=1, 2, \cdots)}\)によって定められた数列\(\{x_n\}\)があるとする。このとき、二次方程式\(\displaystyle{t = \frac{ct+d}{at+b}}\)の解を\(\alpha, \beta\)として、\(\displaystyle{x_n-\alpha = \frac{1}{y_n}, x_n-\beta = \frac{1}{z_n}}\)とすると、\(\displaystyle{y_n, z_n}\)は\(\displaystyle{y_{n+1} = py_n + q, z_{n+1} = rz_n+s}\)の形になる。
ここで\(\displaystyle{\alpha\ne\beta}\)としている。ピンとこない人も多いと思うので、具体的にやってみよう。\(\displaystyle{x_{n+1} = \frac{4x_n-6}{x_n-1} (n=1, 2, \cdots)}\)で定められた数列の一般項を求める。二次方程式\(\displaystyle{t = \frac{4t-6}{t-1}}\)、すなわち$$t^2-5t+6 = 0$$の解は\(\displaystyle{t = 2, 3}\)である。この\(\displaystyle{t = 2}\)を用いて漸化式を変形(両辺から\(2\)を引く)すると\(\displaystyle{x_{n+1}-2 = \frac{2(x_n-2)}{x_{n}-1}}\)となる。初項は適当に定まっているものとすると、両辺の逆数をとることができて、\(\displaystyle{\frac{1}{x_{n+1}-2} = \frac{x_n-1}2({x_n-2)}}\)となり、\(\displaystyle{y_n = \frac{1}{x_n-2}}\)とすれば、\(\displaystyle{y_{n+1} = \frac{1}{2} + \frac{y_n}{2}}\)で、これは簡単に求めることが出来る。\(\displaystyle{y_n}\)を求めれば、\(\displaystyle{x_n}\)も求めることが出来る。\(\displaystyle{t = 3}\)を両辺から引いても同様にすることができる。
大学で線形代数を学ぶと、この\(\displaystyle{t = \frac{4t-6}{t-1}}\)をなぜ考えたのかをより深く理解することが出来るようになるだろう。この京都大学の問題では、\(\displaystyle{t = \frac{1}{2-t}}\)を解いて、解である\(\displaystyle{t = 1}\)を両辺から引いている。ほとんどの大学では分数の漸化式が出題される場合、誘導が付けられていると思うが、この問題のように全く誘導の無い場合もある。結果を暗記する必要はないが、しっかりと導き方を理解するのがよい。
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