[math]1999年東京工業大学後期数学問題1

問題

極限値$$\lim_{n\to\infty}{\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin^2{nx}}{1+x}dx}}$$を求めよ。

方針

極限を求めることは出来ないので、「相方」を持ち出す。

解答

\(\displaystyle A_n = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin^{2}{nx}}{1+x}dx}, B_n = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\cos^{2}{nx}}{1+x}dx}\)と置く。すると、$$\begin{eqnarray}A_n+B_n & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin^2{nx} + \cos^2{nx}}{1+x}dx} \\ & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{1}{1+x}dx} \\ & = & [\log{(1+x)}]_{0}^{\frac{\pi}{2}}\\ & = & \log{\left(1+\frac{\pi}{2}\right)}\end{eqnarray}$$である。また、$$\begin{eqnarray}B_n-A_n & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\cos^2{nx} – \sin^2{nx}}{1+x}dx} \\ & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\cos{2nx}}{1+x}dx} \\ & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\left(\frac{\sin{2nx}}{2n}\right)^{\prime} \frac{1}{1+x}dx} \\ & = & \left[\frac{\sin{2nx}}{2n}\cdot \frac{1}{1+x}\right]_{0}^{\frac{\pi}{2}}-\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin{nx}}{2n}\cdot \left(-\frac{1}{(1+x)^2}\right)} \\ & = & \frac{1}{2n}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin{2nx}}{(1+x)^2}dx}\end{eqnarray}$$である。ここで、$$\begin{eqnarray}\frac{1}{2n}\left| \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin{nx}}{(1+x)^2}dx} \right| & \leq & \frac{1}{2n}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{1}{(1+x)^2}dx} \\ & \to & 0\ (n\to\infty)\end{eqnarray}$$だから、\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\mid B_n-A_n\mid} = 0\)である。以上より、\(\displaystyle A_n = \frac{(A_n+B_n) – (B_n-A_n)}{2}\)と変形して、\(\displaystyle \underline{\lim_{n\to\infty}{\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin^2{nx}}{1+x}dx}} = \frac{1}{2}\log{\left(1+\frac{\pi}{2}\right)}}\)となる。

解説

積分を実行するのは難しそうだから、他の方法を考えなくてはいけない。こういった問題では、区間の分割というマジックが知られておりそちらで考えても良いが、解答ではペアにあたる積分\(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\cos^2{nx}}{1+x}dx}\)を引っ張りだしてきている。\(A_n+B_n\)が簡単に計算出来そうなので計算した後、\(B_n-A_n\)が問題となる。こちらも積分は実行出来ないが、部分積分法を用いて計算を進めると\(0\)に収束することが示せる。となると、\(A_n, B_n\)の極限は等しく、\(A_n+B_n\)の計算と合わせて答えが求まるという訳である。部分積分法という発想が難しく多くの受験生は手も足も出ずに時間だけが過ぎていってしまったという。

関連問題

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