問題
自然数\(n\)に対し、$$\begin{eqnarray}S_n & = & \int_{0}^{1}{\frac{1-(-x)^n}{1+x}dx}\\ T_n & = & \sum_{k=1}^{n}{\frac{(-1)^{k-1}}{k(k+1)}}\end{eqnarray}$$とおく。このとき以下の各問に答えよ。
\((1)\) 次の不等式を示せ。$$\left|S_n -\int_{0}^{1}{\frac{1}{1+x}dx}\right|\leq \frac{1}{n+1}$$
\((2)\) \(T_n-2S_n\)を\(n\)を用いて表わせ。
\((3)\) 極限値\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{T_n}\)を求めよ。
方針
\((2)\)はゴチャゴチャと式で考えるよりは、大きく紙に書いてしまったほうがわかりやすい。
解答
\((1)\) $$\begin{eqnarray}\left|S_n-\int_{0}^{1}{\frac{1}{1+x}dx}\right| & = & \left|\int_{0}^{1}{\frac{(-x)^{n}}{1+x}dx}\right| \\ & \leq & \int_{0}^{1}{x^n dx} \\ & = & \frac{1}{n+1}\end{eqnarray}$$となり、題意の不等式が成り立つ。
\((2)\) $$\begin{eqnarray}T_n & = & \sum_{k=1}^{n}{\frac{(-1)^{k-1}}{k(k+1)}}\\ & = & \sum_{k=1}^{n}{\left(\frac{(-1)^{k-1}}{k}-\frac{(-1)^{k-1}}{k+1}\right)} \\ S_n & = & \int_{0}^{1}{\frac{1-(-x)^{n}}{1+x}dx} \\ & = & \int_{0}^{1}{(1-x+x^2-\cdots +(-x)^{n-1})dx}\\ & = & \sum_{k=1}^{n}{\frac{(-1)^{k-1}}{k}}\end{eqnarray}$$であるから、$$\begin{eqnarray}T_n-2S_n & = & -\sum_{k=1}^{n}{(-1)^{k-1}\left(\frac{1}{k}+\frac{1}{k+1}\right)}\\ & = & -\left(1+\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}+\frac{1}{3}\right)-\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{4}\right)+\cdots + (-1)^{n}\left(\frac{1}{n}+\frac{1}{n+1}\right)\\ & = & \underline{-1+\frac{(-1)^{n}}{n+1}}\end{eqnarray}$$となる。
\((3)\) \((1)\)より\(n\to \infty\)で\(\displaystyle S_n\to \int_{0}^{1}{\frac{1}{1+x}dx} = [\log{(1+x)}]_{0}^{1}=\log{2}\)となる。また、\((2)\)から\(n\to \infty\)で\(T_n \to -1+2S_n\)となるから、\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{T_n} = \underline{-1+2\log{2}}\)となる。
解説
メルカトール級数・ライプニッツ級数を題材にした問題である。1987年の東京医科歯科大学の問題でほぼ同じ問題が出題されている。こちらも参考にすると良い。
関連問題
1972年東京医科歯科大学数学問題 部分積分法と積分の漸化式
1981年東京工業大学数学問題1 数列と極限、隠れた二進数
2005年前期東京大学理系数学問題1 微分と数列、\((-1)^n\)の現れる漸化式
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