[math]2010年東京医科歯科大学前期数学問題1

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問題

\(a, b, c\)を相異なる正の実数とするとき、以下の各問に答えよ。
\((1)\) 次の\(2\)数の大小を比較せよ。$$a^3+b^3, a^2b+b^2a$$
\((2)\) 次の\(4\)数の大小を比較し、小さい方から順に並べよ。$$(a+b+c)(a^2+b^2+c^2), (a+b+c)(ab+bc+ca), 3(a^3+b^3+c^3), 9abc$$
\((3)\) \(x, y, z\)を正の実数とするとき$$\frac{y+z}{x} + \frac{z+x}{y} + \frac{x+y}{z}$$の取り得る値の範囲を求めよ。

方針

大小比較の鉄則として、適当な数字を代入して、あたりをつけるということがある。例えば、\(a^3+b^3, a^2b+b^2a\)の大小を比較する場合、\(a=1, b=2\)などとすると、$$\begin{eqnarray}a^3+b^3 & = & 1+8 \\ & = & 9 \\ a^2b+b^2a & = & 2+4 \\ & = & 6\end{eqnarray}$$となり、\(a^3+b^3 > a^2b+b^2a\)が予想される。この部分は解答に記述する必要はない。

解答

\((1)\) $$\begin{eqnarray}a^3+b^3-(a^2b+b^2a) & = & a^2(a-b)-b^2(b-a)\\ & = & (a-b)(a^2-b^2)\\ & = & (a-b)^2(a+b) \\ & > & 0\end{eqnarray}$$であるから、\(\underline{a^3+b^3 > a^2b+b^2a}\)となる。

\((2)\) \(a=1, b = 2, c = 3\)として、$$\begin{eqnarray}(a+b+c)(a^2+b^2+c^2) & = & 84\\ (a+b+c)(ab+bc+ca) & = & 66 \\ 3(a^3+b^3+c^3) & = & 108 \\ 9abc & = & 54\end{eqnarray}$$となるから、大小を予想して、$$\begin{eqnarray}3(a^3+b^3+c^3)-(a+b+c)(a^2+b^2+c^2) & = & 3(a^3+b^3+c^3)\\ & & -a^3-ab^2-ac^2-ba^2 \\ & & -b^3-bc^2-ca^2-cb^2-c^3\\ & = & a^2(a-b)+a^2(a-c) \\ & & +b^2(b-c)+b^2(b-a)\\ & & +c^2(c-a)+c^2(c-b)\\ & = & (a-b)(a^2-b^2)+(b-c)(b^2-c^2)\\ & & +(c-a)(c^2-a^2)\\ & = & (a-b)^2(a+b)+(b-c)^2(b+c) \\ & & +(c-a)^2(c+a) \\ & > & 0\end{eqnarray}$$となる。よって\(3(a^3+b^3+c^3) > (a+b+c)(a^2+b^2+c^2)\)である。また、$$\begin{eqnarray}(a+b+c)(a^2+b^2+c^2)-(a+b+c)(ab+bc+ca) & = & a^3+ab^2+ac^2 \\ & & +ba^2+b^3+bc^3 \\ & & +ca^2+cb^2+c^3 \\ & & -a^2b-abc-ca^2\\ & & -ab^2-bc^2-abc\\ & & -abc-bc^2-c^2a \\ & = & a^3+b^3+c^3-3abc \\ & = & (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\\ & = & (a+b+c)\frac{1}{2}((a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2) & > & 0\end{eqnarray}$$である。また、$$\begin{eqnarray}(a+b+c)(ab+bc+ca)-9abc & = & a^2b+abc+ca^2 \\ & & +ab^2+b^2c+abc \\ & & +abc+bc^2+c^2a -9abc \\ & = & a^2b+ca^2+ab^2 \\ & & +ac^2+b^2c+c^2b-6abc \\ & = & a(b^2-2bc+c^2) \\ & & +b(c^2-2ca+a^2)\\ & & +c(a^2-2ab+b^2) \\ & = & a(b-c)^2 + b(c-a)^2+c(a-b)^2 \\ & > & 0\end{eqnarray}$$である。以上から、小さい順に\(\underline{9abc, (a+b+c)(ab+bc+ca), (a+b+c)(a^2+b^2+c^2), 3(a^3+b^3+c^3)}\)である。

\((3)\) 相加平均は相乗平均よりも大きいことから、\(x, y\)が正であることに注意して、$$\frac{y}{x}+\frac{x}{y}\geq 2\sqrt{\frac{y}{x}\cdot \frac{x}{y}} = 2$$である。同様に、$$\begin{eqnarray}\frac{z}{y}+\frac{y}{z} & \geq & 2 \\ \frac{x}{z}+\frac{z}{x} & \geq & 2\end{eqnarray}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}\frac{y+z}{x}+\frac{z+x}{y}+\frac{x+y}{z} & = & \frac{y}{x}+\frac{x}{y}+\frac{z}{y}+\frac{y}{z}+\frac{x}{z}+\frac{z}{x} \\ & \geq & 6\end{eqnarray}$$である。等号は\(x=y=z\)のときに成立する。また、上の式を\(y, z\)を固定して\(x\)の関数とみると、\(x\to\infty\)のときに式の値は\(\to \infty\)となる。よって、\(\displaystyle \underline{\frac{y+z}{x}+\frac{z+x}{y}+\frac{x+y}{z}\geq 6}\)が求める範囲である。

解説

\((3)\)は\((1), (2)\)の流れと無関係に解くことができる。むしろ使わない方が簡単である。式を\(\displaystyle \frac{x^2+y^2+z^2+xy+yz+zx}{xyz}\)と変形すると\((2)\)を用いることもできる。

関連問題

1978年京都大学文理共通数学問題1 相加平均、相乗平均の不等式
1986年京都大学文理共通問題1 大小関係の感覚と不等式
1988年京都大学文系B日程問題1 不等式と置き換え
1969年東京工業大学数学問題1 コーシー・シュワルツの不等式、式の超難問
2008年度前期東京工業大学数学問題3 コーシーシュワルツの不等式

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