問題
実数の集合\(\{x\mid a<x<b\}\)を\(I\)とし、\(f(x)\)を\(I\)で定義された関数とする。\(x_1<x_2\)となる\(I\)の任意の\(2\)数\(x_1, x_2\)に対してつねに\(f(x_1)<f(x_2)\)が成立するとき、\(f(x)\)は\(I\)で増加するという。また\(x_1<x_2\)となる\(I\)の任意の\(2\)数\(x_1, x_2\)に対してつねに\(f(x_1)\leq f(x_2)\)が成立するとき、\(f(x)\)は\(I\)で非減少であるという。\(f(x)\)が\(I\)で微分可能なとき、次の命題はそれぞれ正しいか、理由をつけて答えよ。
\((1)\) \(I\)でつねに\(f^{\prime}(x)>0\)ならば、\(f(x)\)は\(I\)で増加する。
\((2)\) \(f(x)\)が\(I\)で増加するならば、\(I\)でつねに\(f^{\prime}(x)>0\)である。
\((3)\) \(I\)でつねに\(f^{\prime}(x)\geq 0\)ならば、\(f(x)\)は\(I\)で非減少である。
\((4)\) \(f(x)\)が\(I\)で非減少であるならば、\(I\)でつねに\(f^{\prime}(x)\geq 0\)である。
方針
ある定理の利用がカギになる。
解答
\((1)\) 平均値の定理から$$f(x_1)-f(x_2) = (x_1-x_2)f^{\prime}(x_3)$$となる\(x_3 (x_1<x_3<x_2)\)が存在する。\(f^{\prime}(x_3) > 0, x_1-x_2<0\)であるから、\(f(x_1)-f(x_2)<0\)である。したがって、\(I\)でつねに\(f^{\prime}(x)>0\)ならば\(f(x_1)<f(x_2)\)である。よって、題意は正しい。
\((2)\) \(f(x)=x^3 (-\infty < x< \infty)\)のとき、\(f(x)\)は増加であるが、\(f^{\prime}(x)=3x^2\)は\(x=0\)のとき\(0\)になる。よって、題意は正しくない。
\((3)\) \((1)\)の解答で\(>\)を\(\geq\)に変えれば、題意は正しいことがわかる。
\((4)\) \(x \in I , x+h\in I\)に対して、\(\displaystyle \delta = \frac{f(x+h)-f(x)}{(x+h)-x} = \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\)とおくと、\(h > 0\)のときにも\(h< 0\)のときにも\(\delta \geq 0\)であるから、\(\displaystyle f^{\prime}(x) = \lim_{h\to\infty}{\delta}\geq 0\)となる。よって、題意は正しい。
解説
基礎的で教科書に出てきそうな問題だが、決して試験場で易しい問題ではない。関数が増加する、とか減少する、とか言うときに基になっているのは平均値の定理である。解答のように、\(x_1<x_2\)であるならば、平均値の定理より\(f(x_1)−f(x_2)=(x_1−x_2)f^{\prime}(x_3)\)となる\(x_3\)が存在する。\(f^{\prime}(x_3)<0\)ならば\(f(x_1)−f(x_2) <0\)となり、\(f(x)\)は増加である。\(f^{\prime}(x_3) > 0\)ならば\(f(x_1)-f(x_2) > 0\)となり、\(f(x)\)は減少である。機械的に暗記して増加や減少を覚えるのではなく意味を理解するようにするといい。先に進んで凹凸を考え増減表を書くときに役に立つだろう。
平均値の定理はロルの定理(Rolle)から導かれる。ロルの定理は受験で使うことはほとんどなく、たまに使ったら便利という問題も出てくるが、平均値の定理で代用出来る(ロルの定理は平均値の定理の特殊な場合である)。\((4)\)を先に見て当然だと思っても、\((2)\)には手こずったかもしれない。\((4)\)の様においたときに、\(\delta > 0\)は言えるが、極限をとると、\(\displaystyle \lim_{h\to\infty}{\delta}\geq 0\)となってしまう。\(\displaystyle 1-\frac{1}{n}<1\)だが、\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\left(1-\frac{1}{n}\right)}=1\)となり、極限をとると\(<1\)とは言えなくなるのと同じである。基礎的な割には細かい部分が多少鬱陶しい問題で、すべてをきちんと答えることの出来た場合自信を持っても良い。
関連問題
1961年度東京工業大学数学問題6 関数と極限
1991年東京大学理系数学問題4 チェビシェフの多項式
2007年京都大学理系数学乙問題6 抽象関数
2020年東京大学前期理系数学問題1 二次関数と論証
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