問題
\((1)\) \(f(x)\)は\(a\leq x\leq b\)で連続な関数とする。このとき、$$\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}{f(x)dx}=f(c)\\ a\leq c\leq b$$となる\(c\)が存在することを示せ。
\((2)\) \(y=\sin{x}\)の\(\displaystyle 0\leq x\leq \frac{\pi}{2}\)の部分と\(y=1\)および\(y\)軸が囲む図形を、\(y\)軸のまわりに回転してえられる図形を考える。この立体を\(y\)軸に垂直な\(n-1\)個の平面によって各部分の体積が等しくなるように\(n\)個に分割するとき、\(y=1\)に最も近い平面の\(y\)座標を\(y_n\)とする。このとき\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{n(1-y_n)}\)を求めよ。
方針
積分の平均値の定理では、関数の連続性を利用する。つまり、ある区間で最小値と最大値を有することを式で表す。
解答
\((1)\) \(f(x)\)は\(a\leq x\leq b\)で連続な関数であるから、最小値と最大値が存在する。これを順に\(m, M\)とすると、\(m\leq f(x)\leq M\)である。この式を\(a\)から\(b\)まで積分して$$m(b-a)\leq \int_{a}^{b}{f(x)dx}\leq M(b-a)$$となる。両辺を\(b-a\)で割って、$$m\leq \frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}{f(x)dx}\leq M$$となる。したがって、\(\displaystyle \frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}{f(x)dx}\)は\(m\)と\(M\)の間の値を取るので、\(=f(c)\)となるような\(c\)が\(a\leq x\leq b\)に存在する。
\((2)\) \(y = \sin{x}\)を\(x=\sin^{-1}{y}\)として、\(x=g(y)=\sin^{-1}{y}\)とすると、題意の立体の全体の体積\(V\)は、$$V = \pi\int_{0}^{1}{(g(y))^2dy}$$である。\(\sin^{-1}{y}=t\)と置換すると、\(\sin{t}=y\)であり、\(\cos{t}dt = dy\)だから、
$$\begin{eqnarray}V & = & \pi\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{t^2\cos{t}dt}\\ & = & \pi[t^2\sin{t}]_{0}^{\frac{\pi}{2}}-\pi\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{2t\cdot \sin{t}dt}\\ & = & \frac{{\pi}^2}{4}-2\pi\left([-t\cos{t}]_{0}^{\frac{\pi}{2}}-\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{(-\cos{t})dt}\right)\\ & = & \frac{{\pi}^3}{4}-2\pi\end{eqnarray}$$となる。一方、題意から$$\frac{V}{n}=\pi\int_{y_n}^{1}{(g(y))^2dy}$$である。\((1)\)から$$\frac{V}{n}=\pi(1-y_n)(g(y))^2$$を満たす\(z_n\ (y_n\leq z_n\leq 1)\)が存在する。\(n\to \infty\)のとき\(y_n\to 1\)であるから、\(z_n\to 1\)でもあり、\(\displaystyle g(1) = \frac{\pi}{2}\)であるから、$$\begin{eqnarray}n(1-y_n) & = & \frac{V}{\pi(g(y))^2}\\ & \to & \frac{V}{(g(1))^2}\ (n\to\infty)\\ & = & \frac{\frac{{\pi}^3}{4}-2\pi}{\pi}\cdot \frac{4}{{\pi}^2}\\ & = & \underline{1-\frac{8}{{\pi}^3}}\end{eqnarray}$$が答えになる。
解説
\((1)\)を積分の平均値の定理と言う。証明は上の通りである。大学入試で出てくるときは上のように小問として証明させるかあらかじめ用いてよい、と書いている筈である。一度も見たことが無いと証明も難しく感じてしまうだろう。連続性がポイントになる。
\((2)\))は\((1)\)を用いて計算を行う。\(y\)軸の周りの回転体なので関数を一度\(x=g(y)\)の形で表わしてしまう。計算するときに置換すれば良い。そのまま計算するよりは多少見通しが良くなる。\(V\)は直接求めることができて、体積が\(n\)等分されるという条件から$$\frac{V}{n} = \pi\int_{y_n}^{1}{(g(y))^2dy}$$となる。右辺は直接計算出来ないので、\((1)\)を用いて\(1-y_n\)が現れる形にする。\(n\)が大きくなると\(y_n\)はどんどん\(1\)に近づくことは直感的にすぐ分かる。すると、\(y_n\leq z_n\leq 1\)はさみうちの原理より、\(z_n\)も\(1\)に近づく。特に証明も必要ないだろう。残りは\(g(1) = \sin^{-1}{1}=a\)とすると、\(\sin{a}=1\)だから\(\displaystyle a = \frac{\pi}{2}\)というところぐらいか。
関連問題
1983年東京医科歯科大学数学問題1 平均値の定理と論証
1990年東京大学理系前期数学問題1 はさみうちの原理
1992年東京医科歯科大学前期数学問題1 不等式と積分、はさみうちの原理
2000年京都大学前期理系数学問題5 積分と有名極限、漸化式、はさみうちの原理
2012年東京医科歯科大学前期数学問題3 逆関数の積分とはさみうちの原理
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