[math]1999年東京大学後期理系数学問題1

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問題

\(n\)を正の整数とする。\(\displaystyle -\frac{\pi}{2}\leq x\leq \frac{\pi}{2}\)の範囲において$$f_n(x) = \begin{cases}\displaystyle \frac{\sin{nx}}{\sin{x}} \left(-\frac{\pi}{2}\leq x\leq \frac{\pi}{2}, x\ne 0\right)\\ \\ c_n \ (x=0)\end{cases}$$とおくことにより定義される関数\(f_n(x)\)が、連続関数となるように定数\(c_n\)の値を定めよ。
\((2)\) \(f_3(x)\)は\(\cos{x}, \cos{2x}\)を用いて表せることを示し、定積分$$\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{f_3(x)dx}$$の値を求めよ。
\((3)\) 任意の正の整数\(n\)に対して、定積分$$\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{f_{2n-1}(x)dx}$$の値を求めよ。

方針

問題になるのは\((3)\)であるが、結論が予想できないと難しい。

解答

\((1)\) $$\begin{eqnarray}\lim_{x\to 0}{\frac{\sin{nx}}{\sin{x}}} & = & \lim_{x\to 0}{\left(\frac{\sin{nx}}{nx}\cdot \frac{x}{\sin{x}}\cdot n\right)}\\ & = & n\end{eqnarray}$$となるから、\(\underline{c_n = n}\)としたときのみ\(f_n(x)\)が連続関数になる。

\((2)\) \((1)\)から\(c_n = n\)と定め、\(f_n(x)\)が連続関数になることに注意する。$$\begin{eqnarray}f_3(x) & = & \frac{\sin{3x}}{\sin{x}}\\ & = & 3-4\sin^2{x}\\ & = & 3-4(1-\cos^2{x})\\ & = & 4\cos^2{x}-1\\ & = & 4\cdot \frac{\cos{2x}+1}{2}-1 \\ & = & 2\cos{2x}+1\end{eqnarray}$$となるから、$$\begin{eqnarray}\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{f_3(x)dx} & = & \int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{(2\cos{2x}+1)dx}\\ & = & [\sin{2x}+1]_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}\\ & = & \underline{\pi}\end{eqnarray}$$となる。

\((3)\) $$\begin{eqnarray}\sin{\alpha}-\sin{\beta} & = & \sin{\left(\frac{\alpha+\beta}{2}+\frac{\alpha-\beta}{2}\right)}-\sin{\left(\frac{\alpha+\beta}{2}-\frac{\alpha-\beta}{2}\right)}\\ & = & 2\cos{\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)}\sin{\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)}\end{eqnarray}$$を用いて、$$\sin{(2n+3)x}-\sin{(2n+1)x} = 2\cos{(2n+2)x}\sin{x}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{f_{2n+3}(x)dx}-\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{f_{2n+1}(x)dx} & = & \int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\sin{(2n+3)x}-\sin{(2n+1)x}}{\sin{x}}dx}\\ & = & \int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{2\cos{(2n+2)xdx}}\\ & = & \left[\frac{\sin{(2n+2)x}}{n+1}\right]_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}\\ & = & 0\end{eqnarray}$$となる。したがって、\(\displaystyle \int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{f_{2n+1}(x)dx}\)は定数列であるから、\((2)\)の結果から任意の正の整数\(n\)に対して\(\displaystyle \underline{\lim_{n\to\infty}{\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}}{f_{2n-1}(x)dx}} = \pi}\)となる。

解説

\((1)\)は\(\displaystyle \lim_{x\to 0}{\frac{\sin{x}}{x}}=1\)を用いる。\((2)\)は簡単だが、これでも東大の後期の問題である。ところが、\((3)\)が難しい。実はどんな\(n\)であっても問題の積分の値は一定になるが、実験をしないと気がつきにくい。予想出来れば解答のように差を作り、積分実行可能な形にして差が\(0\)になることを言えばおしまいになる。あっさり解けそうなのに解けず、色々な知識が頭をグルグルと回ってもどかしい思いをしたものも多かったのではないだろうか。このような問題では兎に角手を動かして実験してみるより方法はない。

関連問題

1972年東京医科歯科大学数学問題 部分積分法と積分の漸化式
1976年京都大学理系数学問題4 見かけは数列
1994年京都大学後期理系問題6 部分積分法、積分の漸化式、\((\log{x})^n\)の積分

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