問題
曲線\(\displaystyle C: y = \cos^3{x} \ \ \left(0\leq x\leq \frac{\pi}{2}\right)\)、\(x\)軸および\(y\)軸で囲まれる図形の面積を\(S\)とする。\(\displaystyle 0 < t < \frac{\pi}{2}\)とし、\(C\)上の点\(Q (t, \cos^3{t})\)と原点\(O\)、および\(P(t, 0), R(0, \cos^3{t})\)を頂点にもつ長方形\(OPQR\)の面積を\(f(t)\)とする。このとき、次の各問に答えよ。
\((1)\) \(S\)を求めよ。
\((2)\) \(f(t)\)は最大値をただひとつの\(t\)でとることを示せ。そのときの\(t\)を\(\alpha\)とすると、\(\displaystyle f(\alpha) = \frac{\cos^4{\alpha}}{3\sin{\alpha}}\)であることを示せ。
\((3)\) \(\displaystyle \frac{f(\alpha)}{S}<\frac{9}{16}\)を示せ。
方針
\((1)\) そのまま積分すれば良い。
\((2)\) どんどん式を置いていく。
\((3)\) 多少頭を使うことが必要で、\(\displaystyle 0<\alpha<\frac{\pi}{2}\)だけではうまくいかない。\((1), (2)\)の仮定から\(g(\beta) > 0\)となる\(\beta\)を発見できれば、\(\displaystyle \beta < \alpha < \frac{\pi}{2}\)と評価を狭めることができる。\(\beta\)の候補としては、\(\displaystyle \frac{\pi}{4}, \frac{\pi}{3}, \frac{\pi}{6}\)などが挙げられる。
解答
\((1)\) \(\cos{3x} = 4\cos^3{x}-3\cos{x}\)を利用して、$$\begin{eqnarray}S & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\cos^3{x}dx}\\ & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{\cos{3x} + 3\cos{x}}{4}dx}\\ & = & \left[\frac{\sin{3x}}{12}\right]_{0}^{\frac{\pi}{2}} +\left[\frac{3\sin{x}}{4}\right]_{0}^{\frac{\pi}{2}}\\ & = & -\frac{1}{12}+\frac{3}{4}\\ & = & \underline{\frac{2}{3}}\end{eqnarray}$$となる。
\((2)\) \(f(t) = t\cos^3{t}\)であるから、$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(t) & = & \cos^3{t}-3t\cos^2{t}\sin{t}\\ & = & \cos^2{t}(\cos{t}-3t\sin{t})\end{eqnarray}$$である。\(g(t) = \cos{t}-3t\sin{t}\)とすると、$$\begin{eqnarray}g^{\prime}(t) & = & -\sin{t}-3\sin{t}-3t\cos{t}\\ & = & -4\sin{t}-3t\cos{t}\end{eqnarray}$$となるが、これは\(\displaystyle 0<t<\frac{\pi}{2}\)で負となる。したがってこの範囲で\(g(t)\)は減少関数で、\(\displaystyle g(0) = 1, g\left(\frac{\pi}{2}\right) = -\frac{3\pi}{2} < 0\)となるから、区間\(\displaystyle 0<t<\frac{\pi}{2}\)に\(g(t) = 0\)となる\(t\)がただ一つ存在する。それが\(\alpha\)で、\(\alpha\)の前後で\(f^{\prime}(t) = \cos^2{t}g(t)\)は符号を正から負に変える。したがって、\(\cos{\alpha}-3\alpha\sin{\alpha} = 0\)であるが、$$\begin{eqnarray}f(\alpha) & = & {\alpha}\cos^3{\alpha}\\ & = & \frac{\cos{\alpha}}{3\sin{\alpha}}\cdot \cos^3{\alpha}\\ & = & \frac{\cos^4{\alpha}}{3\sin{\alpha}}\end{eqnarray}$$である。
\((3)\) \((1), (2)\)から$$\begin{eqnarray}\frac{f(\alpha)}{S} & = & \frac{\cos^4{\alpha}}{2\sin{\alpha}}\end{eqnarray}$$である。また、\(\displaystyle g\left(\frac{\pi}{6}\right) = \frac{2\sqrt{3}-\pi}{4} > 0\)だから、\(\displaystyle \frac{\pi}{6}<\alpha<\frac{\pi}{2}\)がわかる。\(\displaystyle h(t) = \frac{\cos^4{t}}{2\sin{t}}\)とすると、$$\begin{eqnarray}h^{\prime}(t) & = & \frac{4\cos^3{t}(-\sin{t})\sin
{t}-\cos^5{t}}{2\sin^2{t}}\\ & = & \frac{\cos^{3}{t}(-4\sin^2{t}-\cos^2{t})}{2\sin^2{t}}\\ & < & 0\end{eqnarray}$$である。したがって、\(h(t)\)は減少関数で、$$\begin{eqnarray}h(\alpha) & < & h\left(\frac{\pi}{6}\right) \\ & = & \frac{1}{2}\left(\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^4\cdot 2 \\ & = & \frac{9}{16}\end{eqnarray}$$である。
解説
下記の関連問題とそっくりであるが、誘導がない分この2022年の問題の方が難しい。問題になるのは\((3)\)だが、\((2)\)の答えを関数として置き直して改めて微分すると減少関数になる。そこで、\(\alpha\)を下から評価するのであるが、方針で書いた通り、\(\displaystyle t = \frac{\pi}{4}, \frac{\pi}{6}, \frac{\pi}{3}\)で\(g(t)\)の値がどうなるか、ある程度手を動かさないといけない。微分法だけでなく、式の扱い、三角関数についても習熟が必要で、決して易しい問題ではないだろう。
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