[math]2007年東京大学前期理系数学問題6

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問題

以下の問に答えよ。
\((1)\) \(0 < x < a\)をみたす実数\(x, a\)に対し、次を示せ。$$\frac{2x}{a} < \int_{a-x}^{a+x}{\frac{1}{t}dt} < x\left(\frac{1}{a+x} + \frac{1}{a-x}\right)$$
\((2)\) \((1)\)を利用して、次を示せ。$$0.68 < \log{2} < 0.71$$ただし、\(\log{2}\)は\(2\)の自然対数を表す。

方針

関数の凸性を利用する。\((2)\)は\(\displaystyle \frac{a+x}{a-x} = 2\)としてOKといかない。

解答

\((1)\) \(\displaystyle y = \frac{1}{x}\)は下に凸である。次の図で、台形\(ABCD\)の面積は底辺が\((a+x)-(a-x) = 2x\)で、線分\(HG\)の長さが\(\displaystyle \frac{1}{a}\)であるから、面積は\(\displaystyle \frac{2x}{a}\)となる。ただし、台形の上側の線分は点\(\displaystyle \left(a, \frac{1}{a}\right)\)において\(\displaystyle y =\frac{1}{x}\)と接している。これから$$\frac{2x}{a} < \int_{a-x}^{a+x}{\frac{1}{t}dt}$$がわかる。次に、図の台形\(EBCF\)の面積は\(\displaystyle 2x\left(\frac{1}{a-x}\right)+x\left(\frac{1}{a+x}\right)\times \frac{1}{2}\)で、これは面積\(\displaystyle \int_{a-x}^{a+x}{\frac{1}{t}dt}\)よりも大きい。したがって右側の不等式も成り立つ。以上から、題意の不等式が成り立つ。

\(\displaystyle y = \frac{1}{x}\)は下に凸であるから、\(\int_{a-x}^{a+x}{\frac{1}{t}dt} < EBCF\)が成り立つ。

\((2)\) \((1)\)の不等式の中辺を計算すると、$$\frac{2x}{a} < \log{\frac{a+x}{a-x}} < x\left(\frac{1}{a-x}+\frac{1}{a+x}\right)$$である。\(a=\sqrt{2}+1, x = \sqrt{2}-1\)とすると、$$\begin{eqnarray}\frac{2x}{a} & = & \frac{2(\sqrt{2}-1)}{\sqrt{2}+1} \\ & = & 2(\sqrt{2}-1)^2\\ \log{\frac{a+x}{a-x}} & = & \log{\frac{2\sqrt{2}}{2}}\\ & = & \log{\sqrt{2}}\\ x\left(\frac{1}{a+x}+\frac{1}{a-x}\right) & = & (\sqrt{2}-1)\left(\frac{1}{2} + \frac{1}{2\sqrt{2}}\right)\\ & = & \frac{\sqrt{2}}{4}\end{eqnarray}$$となる。整理すると、$$4(\sqrt{2}-1)^2 < \log{2} < \frac{\sqrt{2}}{2}$$となる。\(\displaystyle 0.71 -\frac{\sqrt{2}}{2} = \frac{1.42-\sqrt{2}}{2} > 0\)であり、\(4(\sqrt{2}-1)^2-0.68 =8(1.415-\sqrt{2}) > 0 \)だから、\(0.68 < \log{2} < 0.71\)が成り立つ。

解説

\((1)\) \(a, x\)の関数と見て差を作りゴリゴリと微分をしても良いが、各辺を面積と捉えて図を書くと簡単に示すことが出来る。中辺はそのまま\(a-x\)から\(a+x\)までの\(\displaystyle \frac{1}{x}\)の面積の積分になる。右辺も、台形の面積を表していることはすぐに分かる。

左辺に多少工夫が必要で、\(\displaystyle y = \frac{1}{x}\)が下に凸であることから、点\(\displaystyle \left(a, \frac{1}{a}\right)\)において\(\displaystyle y = \frac{1}{x}\)に接する直線を持ち出している。すると図のような台形が出来るが、丁度中間点である\(x = a\)における高さが\(\displaystyle \frac{1}{a}\)で、底辺が\((a+x)-(a-x)=2x\)だから、面積は\(\displaystyle \frac{2x}{a}\)となる。

\((2)\) さすがにそのまま\(\displaystyle \frac{a+x}{a-x} = 2\)という訳にはいかない。これだと、\(\displaystyle \frac{2}{3} < \log{2} < \frac{3}{4}\)となり、評価が甘い。そこで評価区間を小さく取ることを考えてみる。\((1)\)の過程から積分区間を広げれば広げるほどに誤差も大きくなることが分かる。そこで、\(\displaystyle \frac{a+x}{a-x} = \sqrt{2}\)になるようにしてみる。このとき\(a(\sqrt{2}-1) = x(\sqrt{2}+1)\)だから、\(a = \sqrt{2}+1, x = \sqrt{2}-1\)と出来て、かつこれが右辺や左辺の計算にも簡単に利用できそうである。解答ではこの過程を飛ばしていきなり\(a = \cdots\)とおいているが、これは解答に記述しなくても良いからである。今度は上手くいって無事問題の不等式を示すことが出来る。(2)は一度嵌るととことん嵌ってしまいそうな問題である。出来なくても良いが、積分区間を広げると誤差はそれだけ大きくなるということだけは頭に入れておくとよい。予備校の解答等を見ると積分区間を分割しているが、これも良い方針だと思う(ただし、多少思いつきにくい)。

関連問題

1999年東京大学前期理系数学問題6 関数の凸性、数値評価
1999年京都大学理系後期問題2 三角関数と凸不等式

関連リンク

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