問題
\(a\)は\(\displaystyle 0 < a \leq \frac{\pi}{4}\)を満たす実数とし、\(\displaystyle f(x) = \frac{4}{3}\sin{\left(\frac{\pi}{4} + ax\right)}\cos{\left(\frac{\pi}{4}-ax\right)}\)とする。このとき、次の問いに答えよ。
\((1)\) 次の等式\((*)\)を満たす\(a\)がただ\(1\)つ存在することを示せ。$$(*) \ \ \ \int_{0}^{1}{f(x)dx} = 1$$
\((2)\) \(0\leq b<c\leq 1\)を満たす実数\(b, c\)について、不等式$$f(b)(c-b)\leq \int_{b}^{c}{f(x)dx}\leq f(c)(c-b)$$が成り立つことを示せ。
\((3)\) 次の試行を考える。
[試行] \(n\)個の数\(1, 2, \cdots, n\)を出目とする、あるルーレットを\(k\)回まわす。
この[試行]において、各\(i = 1, 2, \cdots, n\)について\(i\)が出た回数を\(S_{n, k, i}\)とし、$$(**)\ \ \lim_{k\to\infty}{\frac{S_{n, k, i}}{k}} = \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}}{f(x)dx}$$が成り立つとする。このとき、\((1)\)の等式\((*)\)が成り立つことを示せ。
\((4)\) \((3)\)の[試行]において出た数の平均値を\(A_{n, k}\)とし、\(\displaystyle A_n = \lim_{k\to\infty}{A_{n, k}}\)とする。\((**)\)が成り立つとき、極限\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\frac{A_n}{n}}\)を\(a\)を用いて表わせ。
方針
\((1)\)から難しい。
\((2)\)は積分の平均値の定理そのものである。
\((3)\) \(S_{n, k, i}\)について、\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}{S_{n, k, i}} = k\)となることを利用する。
\((4)\) 定義から\(\displaystyle \frac{1}{k}\sum_{i=1}^{n}{iS_{n, k, i}} = A_{n, k}\)である。
解答
\((1)\) \(\displaystyle \sin{\alpha}\cos{\beta} = \frac{1}{2}(\sin{(\alpha+\beta)}+\sin{(\alpha-\beta)})\)であるから、$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{1}{f(x)dx} & = & \frac{2}{3}\int_{0}^{1}{\left(\sin{\left(\frac{\pi}{4}+ax+\frac{\pi}{4}-ax\right)} + \sin{\left(\frac{\pi}{4}+ax-\frac{\pi}{4}+ax\right)}\right)dx} \\ & = & \frac{2}{3}\int_{0}^{1}{\left(1+\sin{2ax}\right)dx} \\ & = & \frac{2}{3}\left[x-\frac{\cos{2ax}}{2a}\right]_{0}^{1}\\ & = & \frac{2}{3}\left(1-\frac{\cos{2a}-1}{2a}\right)\end{eqnarray}$$となる。\(\displaystyle g(a) = \frac{2}{3}\left(1-\frac{\cos{2a}-1}{2a}\right)\)とすると、$$\begin{eqnarray}g(a) & = & 1 \\ \iff a & = & 1-\cos{2a} \\ \iff a & = & 2\sin^2{a}\end{eqnarray}$$である。したがって\(\displaystyle 0 < a \leq \frac{\pi}{4} \)で\(g(a) = a-2\sin^2{a}\)として、これがただ一つの実数解を持つことを示す。$$\begin{eqnarray}g^{\prime}(a) & = & 1-4\sin{a}\cos{a} \\ & = & 1-2\sin{2a}\end{eqnarray}$$であるから、\(g(a)\)の増減は以下の表のようになる。
\(a\) | 0 | \(\displaystyle \frac{\pi}{12}\) | \(\displaystyle \frac{\pi}{4}\) | ||
\(g^{\prime}(a)\) | \(+\) | \(0\) | \(-\) | ||
\(g(a)\) | \(0\) | \(\nearrow\) | \(\displaystyle g\left(\frac{\pi}{12}\right)\) | \(\searrow\) | \(\displaystyle \frac{\pi}{4}-1\) |
\(\displaystyle g\left(\frac{\pi}{12}\right) > 0, g\left(\frac{\pi}{4}\right) = \frac{\pi-4}{4} < 0\)であるから、\(\displaystyle \frac{\pi}{12} < a < \frac{\pi}{4}\)の範囲に\(g(a) = 0\)となる\(a\)がただ一つ存在する。よって、題意が示された。
\((2)\) \((1)\)から\(f(x)\)は\(\displaystyle f(x) = \frac{2}{3}(1+\sin{2ax})\)であるから、\(\displaystyle 0 < a\leq \frac{\pi}{4}, 0\leq x\leq 1\)において正で、増加である。したがって、\(\displaystyle f(b)\leq f(x) \leq f(c)\)である。これを\(b\)から\(c\)まで積分して、$$f(b)(b-c)\leq \int_{b}^{c}{f(x)dx}\leq f(c)(b-c)$$となる。
\((3)\) \(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}{S_{n, k, i}} = k\)であるから、$$\begin{eqnarray}\sum_{k=1}^{n}{\frac{S_{n, k, i}}{k}} & = & 1\end{eqnarray}$$であり、\((**)\)から$$\begin{eqnarray}\lim_{k\to\infty}{\sum_{k=1}^{n}{\frac{S_{n, k, i}}{k}}} & = & {\sum_{k=1}^{n}{\int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}}{f(x)dx}}}\\ & = &{\int_{0}^{1}{f(x)dx}}\end{eqnarray}$$であるから、$$\int_{0}^{1}{f(x)dx} = 1$$となり、\((*)\)が成り立つ。
\((4)\) 定義から、\(\displaystyle \frac{1}{k}\sum_{i=1}^{n}{iS_{n, k, i}} = A_{n, k}\)となる。\(k\to\infty\)として、\((3)\)から$$A_n = \sum_{i=1}^{n}{i\int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}}{f(x)dx}}$$となる。\((2)\)で\(\displaystyle b = \frac{i-1}{n}, c = \frac{i}{n}\)として、$$\frac{1}{n}f\left(\frac{i-1}{n}\right)\leq \int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}}{f(x)dx}\leq \frac{1}{n}f\left(\frac{i}{n}\right)$$であるから、両辺に\(i\)を掛けて$$\frac{i}{n}f\left(\frac{i-1}{n}\right)\leq i\int_{\frac{i-1}{n}}^{\frac{i}{n}}{f(x)dx}\leq \frac{i}{n}f\left(\frac{i}{n}\right)$$である。\(i = 1, 2, \cdots, n\)として辺ごとに足して、\(n\)で割ると、$$\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}{\frac{i}{n}f\left(\frac{i-1}{n}\right)}\leq \frac{A_n}{n}\leq \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}{\frac{i}{n}f\left(\frac{i}{n}\right)}$$である。最左辺と最右辺は\(n\to\infty\)のときに共に\(\displaystyle \int_{0}^{1}{xf(x)dx}\)に収束する。よって、求める極限値は$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{1}{xf(x)dx} & = & \frac{2}{3}\int_{0}^{1}{x(1+\sin{2ax})dx}\\ & = & \left[\frac{x^2}{3}\right]_{0}^{1}+\frac{2}{3}\int_{0}^{1}{x\cdot \left(-\frac{\cos{2ax}}{2a}\right)^{\prime}dx} \\ & = & \frac{1}{3}-\frac{2}{3}\left[\frac{x\cos{2ax}}{2a}\right]_{0}^{1} + \frac{2}{3}\int_{0}^{1}{\frac{\cos{2ax}}{2a}dx}\\ & = & \frac{1}{3}-\frac{2}{3}\cdot \frac{\cos{2a}}{2a}+\frac{2}{3}\left[\frac{\sin{2a}}{4a^2}\right]_{0}^{1} \\ & = & \underline{\frac{1}{3}-\frac{\cos{2a}}{3a}+\frac{\sin{2a}}{6a^2}}\end{eqnarray}$$となる。
解説
確率密度関数を題材にした微積分の計算問題になる。振り返ってみると大した問題ではないのだが、一つ一つやることがそれなりに重厚で、試験場では圧倒されてしまうだろう。\((3)\)は\(S_{n, k, i}\)が分からなくても、\((**)\)右辺の\(f(x)\)についての計算を行うと、題意を示すことができる。
関連問題
1961年度東京工業大学数学問題6 関数と極限
1985年東京大学理系数学問題5 確率と極限
1999年度防衛医科大学校数学問題2 三角関数と極限
1999年京都大学理系後期数学問題6 積分の平均値の定理
コメント