問題
\(a, b\)を実数とし、\(f(z) = z^2+az+b\)とする。\(a, b\)が$$\mid a\mid \leq 1, \mid b\mid \leq 1$$を満たしながら動くとき、\(f(z) = 0\)を満たす複素数\(z\)がとりうる値の範囲を複素数平面上に図示せよ。
方針
\(D = a^2-4b\)の正負で場合分けする。
解答
\(D = a^2-4b\)とする。
\((i)\) \(D >0\)のとき、\(\displaystyle b <\frac{a^2}{4}\)であり、\(f(z) = 0\)は実数解を有する。実数解は\(\displaystyle z = \frac{-a\pm\sqrt{a^2-4b}}{2}\)となる。\(\displaystyle f(a, b) = \frac{-a+\sqrt{a^2-4b}}{2}, g(a, b) = \frac{-a-\sqrt{a^2-4b}}{2}\)とする。\(\displaystyle -1\leq a\leq 1, -1\leq b < \frac{a^2}{4} \leq 1\)の範囲で\(f(a, b), g(a, b)\)の取りうる範囲を求める。$$\begin{eqnarray}\frac{df(a, b)}{db} & = & -\frac{2}{\sqrt{{a^2-4b}}} < 0\\ \frac{dg(a, b)}{db} & = & \frac{2}{\sqrt{a^2-4b}} > 0\end{eqnarray}$$だから、\(f(a, b)\)は\(b\)に関して減少で、\(g(a, b)\)は\(b\)に関して増加である。したがって、$$\begin{eqnarray}f\left(a, \frac{a^2}{4}\right)\leq f(a, b)\leq f\left(a, -1\right)\\ g(a, -1)\leq g(a, b)\leq g\left(a, \frac{a^2}{4}\right)\end{eqnarray}$$であり、計算すると$$\begin{eqnarray}-\frac{a}{2}\leq f(a, b)\leq \frac{-a+\sqrt{a^2+4}}{2}\\ \frac{-a-\sqrt{a^2+4}}{2}\leq g(a, b)\leq -\frac{a}{2}\end{eqnarray}$$となる。$$\begin{eqnarray}\frac{d}{da}\left(\frac{-a+\sqrt{a^2+4}}{2}\right) & = & \frac{a-\sqrt{a^2+4}}{2\sqrt{a^2+4}} < 0 \\ \frac{d}{da}\left(\frac{-a-\sqrt{a^2+4}}{2}\right) & = & -\frac{a+\sqrt{a^2+4}}{2\sqrt{a^2+4}} < 0\end{eqnarray}$$であり、\(ab\)平面に\(\displaystyle b = -\frac{a}{2}, b = \frac{-a+\sqrt{a^2+4}}{2}, b = \frac{-a-\sqrt{a^2+4}}{2}\)を図示すると下の図のようになる。
したがって、$$\begin{eqnarray}-\frac{1}{2}\leq f(a, b)\leq \frac{1+\sqrt{5}}{2}\\ \frac{-1-\sqrt{5}}{2}\leq g(a, b)\leq \frac{1}{2}\end{eqnarray} \tag{a}$$となる。
\((ii)\) \(D < 0\)のとき、\(\displaystyle b > \frac{a^2}{4}\)であり、\(f(z) = 0\)は虚数解を有する。解を\(x\pm yi\)とすると、\(\displaystyle x = \frac{-a}{2}, y = \frac{\sqrt{4b-a^2}}{2}\)である。\(\displaystyle -1\leq b \leq 1, -1\leq a\leq 1\)かつ\(\displaystyle b > \frac{a^2}{4}\)であるから、\(\displaystyle -1\leq a\leq 1, \frac{a^2}{4}<b\leq 1\)となる。\(a, b\)を\(x, y\)で表すと、\(a = -2x, 4b=a^2+4y^2 = 4x^2+4y^2 \)である。これを\(\displaystyle -1\leq a\leq 1, \frac{a^2}{4} <b\leq 1\)に代入して、$$\begin{cases}-1\leq -2x\leq 1\\\displaystyle \frac{1}{4}\cdot 4x^2 <x^2+y^2\leq 1\end{cases}$$である。整理して、$$\begin{cases}\displaystyle -\frac{1}{2}\leq x\leq \frac{1}{2}\\ x^2+y^2\leq 1\end{cases} \tag{b}$$となる。
\((iii)\) \(D = 0\)のとき、\(a^2-4b = 0\)で、\(\displaystyle z = -\frac{a}{2}\)だから、\(\displaystyle -\frac{1}{2}\leq z\leq \frac{1}{2} \tag{c}\)となる。
以上\((a), (b), (c)\)を図示すると、以下の図のようになる。
解説
判別式\(D\)の値で場合分けを行うが、解が実数のときの方が難しい。\(a, b\)どちらかを固定して最小値、最大値を求めるが、簡単な方から動かしていくのが鉄則で、一文字の\(b\)を先に動かす。\(D\)が負で、虚数解を持つときは、解が存在する条件を求めてもよいが、\(x, y\)が簡単に\(a, b\)で表されるので、代入してしまえば良い。
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