[math]2008年東京医科歯科大学前期数学問題3

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問題

微分可能な関数\(f(x), g(x)\)が次の\(4\)条件を満たしている。
\((a)\) 任意の正の実数\(x\)について\(f(x) > 0, g(x) > 0\)
\((b)\) 任意の実数\(x\)について\(f(-x) = f(x), g(-x) = -g(x)\)
\((c)\) 任意の実数\(x, y\)について\(f(x+y) = f(x)f(y) + g(x)g(y)\)
\((d)\) \(\displaystyle \lim_{x\to 0}{\frac{g(x)}{x}} = 2\)
このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(f(0)\)および\(g(0)\)を求めよ。
\((2)\) \(\{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2\)を求めよ。
\((3)\) \(\displaystyle \lim_{x\to 0}{\frac{1-f(x)}{x^2}}\)を求めよ。
\((4)\) \(f(x)\)の導関数を\(g(x)\)を用いて表わせ。
\((5)\) 曲線\(y = f(x)g(x)\)、直線\(x = a\ (a > 0)\)および\(x\)軸で囲まれる図形の面積が\(1\)のとき\(f(a)\)の値を求めよ。

方針

誘導に丁寧に従う。なお、具体的に関数\(f(x), g(x)\)を求めることも可能である。

解答

\((1)\) 条件\((b)\)で\(x = 0\)として、\(g(0) = -g(0)\)であるから、\(\underline{g(0) = 0}\)である。すると、条件\((c)\)で\(y = 0\)として、\(f(x) = f(x)f(0)\)がわかる。\(x > 0\)のとき条件\((a)\)より\(f(x) > 0\)であるから、両辺を\(f(x)\)で割って\(\underline{f(0) = 1}\)である。

\((2)\) 条件\((c)\)で\(y = -x\)とすると、条件\((b)\)から\(f(-x) = f(x), g(-x) = -g(x)\)であるから、\(f(0) = \{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2\)となる。\((1)\)から\(f(0) = 1\)だから、\(\underline{ \{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2 = 1}\)となる。

\((3)\) \((2)\)から\(1-\{f(x)\}^2 = -\{g(x)\}^2\)であるから、\(\{1+f(x)\}\{1-f(x)\} = -\{g(x)\}^2\)である。\(f(x)\neq 1\)なる\(x\)に対して、$$\begin{eqnarray}1-f(x) & = & \frac{-\{g(x)\}^2}{1+f(x)}\\ \frac{1-f(x)}{x^2} & = & -\left(\frac{g(x)}{x}\right)^2\cdot \frac{1}{1+f(x)}\end{eqnarray}$$である。\(x\to \infty\)として、条件\((d)\)と\((1)\)から$$\begin{eqnarray}\frac{1-f(x)}{x^2} & = & -2^2\cdot \frac{1}{1+1}\\ & = & -2\end{eqnarray}$$となる。よって、\(\displaystyle \underline{\lim_{x\to\infty}{\frac{1-f(x)}{x^2}} = -2}\)となる。

\((4)\) 条件\((c)\)と条件\((d)\)および\((3)\)から、$$\begin{eqnarray}\frac{f(x+h)-f(x)}{h} & = & \frac{f(x)f(h)+g(x)g(h)-f(x)}{h}\\ & = & f(x)\cdot \frac{f(h)-1}{h}+g(x)\cdot \frac{g(h)}{h}\\ & = & f(x)\cdot \frac{1-f(h)}{h^2}\cdot (-h)+g(x)\cdot \frac{g(h)}{h}\\ & \to & f(x)\cdot -2\cdot 0 + 2g(x)\ (h\to 0)\\ & = & 2g(x)\end{eqnarray}$$となる。よって、\(\underline{f^{\prime}(x) = 2g(x)}\)である。

\((5)\) \((1)\)から\(x = 0\)で\(y = f(x)g(x) = 0\)となり、条件\((a)\)から\(x > 0\)で\(f(x) > 0, g(x) > 0\)である。したがって、条件\((b)\)から\(x < 0\)では\(y = f(x)g(x) < 0\)がわかる。以上から、\(\displaystyle \int_{0}^{a}{f(x)g(x)dx} = I\)としたとき、\( I =1\)である。\((4)\)から部分積分法を用いて、また\(f(0) = 1\)に注意して、$$\begin{eqnarray} I & = & \int_{0}^{a}{f(x)\cdot \frac{f^{\prime}(x)}{2}dx}\\ & = & \left[\frac{\{f(x)\}^2}{2}\right]_{0}^{a}-\int_{0}^{a}{f^{\prime}(x)\cdot \frac{f(x)}{2}dx}\\ & = & \frac{\{f(a)\}^2}{2}-\frac{1}{2}-I\end{eqnarray}$$となる。\(I = 1\)を代入して、\(a > 0\)より\(f(a) > 0\)であることにも注意して、\(f(a) = \sqrt{4I+1} = \underline{\sqrt{5}}\)となる。

解説

\((1)\) まず\(g(0)\)から求める。\(f(0)\)は少し頭を使うが、色々文字を当てはめているうちに解けたという受験生も多かっただろう。

\((2)\) \((1)\)を利用する。

\((3)\) 本問題のメイン部分である。\((2)\)を利用するが、式変形は多少巧妙かもしれない。

\((4)\) 一つの山である。条件\((c)\)を用いるが、途中の式変形で\((3)\)がうまく使えることに気がつく。

\((5)\) 部分積分法を用いる。簡単なグラフを描いて\(y = f(x)g(x)\)の概形を示しても良い。

本問題の条件\((a)\sim (d)\)を満たす関数として、$$f(x) = \frac{e^{2x} + e^{-2x}}{2}, g(x) = \frac{e^{2x}-e^{-2x}}{2}$$がある。実は、条件\((a)\sim (d)\)を満たす関数はこれに限られる。そのことを以下で示す。\((2)\)から\(\{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2 = 1\)であり、条件\((a), (b)\)から任意の実数\(x\)に対して\(f(x) > 0\)なので、\(f(x) = \sqrt{1+\{g(x)\}^2}\)となる。これを微分して、$$f^{\prime}(x) = \frac{g(x)g^{\prime}(x)}{\sqrt{1+\{g(x)\}^2}}$$となるが、\((4)\)から\(f^{\prime}(x) = 2g(x)\)だから、$$2g(x) = \frac{g(x)g^{\prime}(x)}{\sqrt{1+\{g(x)\}^2}}$$である。再び条件\((a), (b)\)から\(x\ne 0\)のときは\(g(x)\ne 0\)なので、$$2 = \frac{g^{\prime}(x)}{\sqrt{1+\{g(x)\}^2}}$$である。簡単のために\(g(y) = y\)とすると、$$\frac{dy}{\sqrt{1+y^2}} = 2dx$$である。\(\log{(y+\sqrt{1+y^2})}\)の微分が\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{1+y^2}}\)であることを思い出すと、$$\log{(y+\sqrt{1+y^2})} = 2x + C$$となる。ただし、\(C\)は積分定数である。\((1)\)から\(g(0) = 0\)であったから、\(C = 0\)である。以上より、$$\begin{eqnarray}\log{(y + \sqrt{1+y^2})} & =& 2x \\ y + \sqrt{1+y^2} & = & e^{2x} \\ \sqrt{1+y^2} & = & e^{2x}-y\end{eqnarray}$$である。両辺を二乗して整理すると、\(\displaystyle y = g(x) = \frac{e^{2x}-e^{-2x}}{2}\)がわかる。よって、\(\displaystyle f(x) = \sqrt{1+\{g(x)\}^2} = \frac{e^{2x} + e^{-2x}}{2}\)となる。

関連問題

上記の\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{1+x^2}}\)の積分については以下を参照。

\(\log{(x + \sqrt{1+x^2})}\)の積分について。

2007年京都大学理系数学乙問題6 抽象関数
2001年度防衛医科大学校数学問題2 抽象関数と積分
2006年度防衛医科大学校数学問題4 抽象関数と微分積分、Taylor展開

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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