[math]2002年京都大学前期理系数学問題2

red triangle math
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問題

半径\(1\)の円周上に相異なる\(3\)点\(A, B, C\)がある。
\((1)\) \(AB^2 + BC^2 + CA^2 > 8\)ならば三角形\(ABC\)は鋭角三角形であることを示せ。
\((2)\) \(AB^2+BC^2+CA^2 \leq 9\)が成立することを示せ。また、この等号が成立するのはどのような場合か。

方針

\((1)\) 背理法で鋭角三角形でないことを仮定する。余弦定理の利用が鍵になる。

\((2)\) 巧妙な式変形が必要になる。

解答

\((1)\) 三角形\(ABC\)が鋭角三角形でないと仮定して、一番大きい角が\(\angle{ABC}\)であるとすると、このとき\(\cos{\angle{ABC}} < 0\)である。余弦定理から$$\displaystyle \cos{\angle{ABC}} = \frac{BA^2+BC^2-CA^2}{2BA\cdot BC}$$であるから、$$\begin{eqnarray}AB^2+BC^2+CA^2 & = & CA^2+2AB\cdot BC\cos{\angle{ABC}}+CA^2 \\ & \leq & 2CA^2 \end{eqnarray}$$であるが、\(CA\)は円の直径\(2\)よりも小さいので、$$AB^2+BC^2+CA^2\leq 2\cdot 2^2 = 8$$である。これは\(AB^2+BC^2+CA^2 > 8\)に反するので、三角形\(ABC\)は鋭角三角形である。

\((2)\) 円の中心を\(O\)として、\(\overrightarrow{OA} = \overrightarrow{a}, \overrightarrow{OB} = \overrightarrow{b}, \overrightarrow{OC} = \overrightarrow{c}\)とする。このとき、\(|\overrightarrow{a}| = |\overrightarrow{b}| = |\overrightarrow{c}| = 1\)である。さて、$$\begin{eqnarray}AB^2+BC^2+CA^2 & = & |\overrightarrow{b}-\overrightarrow{c}|^2 + |\overrightarrow{c}-\overrightarrow{b}|^2 + |\overrightarrow{a}-\overrightarrow{c}|^2\\ & = & 6-2(\overrightarrow{a}\cdot \overrightarrow{b} + \overrightarrow{b}\cdot \overrightarrow{c} + \overrightarrow{c}\cdot\overrightarrow{a} )\end{eqnarray}$$である。ここで、$$\begin{eqnarray}|\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c}|^2 & = & 3 + 2(\overrightarrow{a}\cdot \overrightarrow{b} + \overrightarrow{b}\cdot \overrightarrow{c} + \overrightarrow{c}\cdot \overrightarrow{a})\end{eqnarray}$$だから、$$\begin{eqnarray}AB^2+BC^2+CA^2 & = & 9-|\overrightarrow{a} + \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c}|^2\\ & \leq & 9\end{eqnarray}$$となる。等号が成り立つのは\(\overrightarrow{a} + \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} = \overrightarrow{0}\)のときである。重心と外心がともに原点と一致するときで、これは三角形\(ABC\)が正三角形のときに限る。

解説

骨のある難問であるが、この年の京大理系の問題はこの問題以外は京大理系としては易しい構成であったので、ある程度無理無くできる余裕はあったのではないかと考えられる。\((1)\)では余弦定理、\((2)\)では対称式の扱いが重要である。なお、円に内接する三角形で外心と重心が一致するものは正三角形に限るという事実は京都大学で過去何度も出題されている。

京都大学で何度も出題されている有名事実。

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