[math]2013年東京医科歯科大学数学問題3

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問題

\(m, n\)を自然数として、関数\(f(x) = x^m(1-x)^n\)を考える。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(0\leq x\leq 1\)における\(f(x)\)の最大値を\(m, n\)を用いて表わせ。
\((2)\) 定積分\(\displaystyle \int_{0}^{1}{f(x)dx}\)を\(m, n\)を用いて表わせ。
\((3)\) \(a, b, c\)を実数として、関数\(g(x) = ax^2+bx+c\)の\(0\leq x\leq 1\)における最大値を\(M(a, b, c)\)とする。次の\(2\)条件\((i), (ii)\)が成立するとき、\(M(a, b, c)\)の最小値を\(m, n\)を用いて表わせ。
\(\ \ \ (i)\) \(g(0) = g(1) = 0\)
\(\ \ \ (ii)\) \(0<x<1\)のとき\(f(x)\leq g(x)\)
\((4)\) \(m, n\)が\(2\)以上の自然数で\(m > n\)であるとき$$\frac{(m+n+1)!}{m!n!} > \frac{(m+n)^{m+n}}{m^mn^n} > 2^{2n-1}$$が成立することを示せ。

方針

\((1)\) 素直に微分すれば良い。

\((2)\) 頻出問題で、部分積分法を用いる。

\((3)\) 条件から\(a < 0\)でないといけないことがわかる。

\((4)\) いきなりこれを証明しろと言われると厳しいが、丁寧な誘導付きなので、身を任せると良い。

解答

\((1)\) $$\begin{eqnarray}f^{\prime}(x) & = & mx^{m-1}(1-x)^n -nx^m(1-x)^{n-1}\\ & = & x^{m-1}(1-x)^{n-1}(m(1-x)-nx)\\ & = & x^{m-1}(1-x)^{n-1}(m-(m+n)x)\end{eqnarray}$$であるから、\(0\leq x\leq 1\)における\(f(x)\)の最大値は\(\displaystyle f\left(\frac{m}{m+n}\right) = \underline{\left(\frac{m}{m+n}\right)^{m}\left(\frac{n}{m+n}\right)^n}\)となる。

\((2)\) 求める積分を\(I(m, n)\)とすると、部分積分法により、$$\begin{eqnarray}I(m, n) & = & \int_{0}^{1}{\left(\frac{x^{m+1}}{m+1}\right)^{\prime}(1-x)^n dx} \\ & = & \left[\frac{x^{m+1}(1-x)^n}{m+1}\right]_{0}^{1} + n\int_{0}^{1}{\frac{x^{m+1}(1-x)^{n-1}}{m+1}dx} \\ & = & \frac{n}{m+1}I(m+1, n-1)\end{eqnarray}$$である。これを繰り返し使って、$$\begin{eqnarray}I(m, n) & = & \frac{n}{m+1}I(m+1, n-1)\\ & = & \frac{n}{m+1}\cdot \frac{n-1}{m+2} I(m+2, n-2)\\ & = & \cdots \\ & = & \frac{n(n-1)\cdots 1}{(m+1)(m+2)\cdots (m+n)}I(m+n, 0)\\ & = & \underline{\frac{m!n!}{(m+n+1)!}}\end{eqnarray}$$となる。

\((3)\) 条件\((i)\)から\(g(0)= c = 0, g(1) = a+b+c = 0\)であるから、\(b = -a, c = 0\)である。したがって、\(g(x) = a(x^2-x)\)となる。\(g(x)\)の\(0\leq x\leq 1\)における最大値の候補は\(\displaystyle g(0), g(1), g\left(\frac{1}{2}\right) = -\frac{a}{4}\)である。ただし、\(\displaystyle g\left(\frac{1}{2}\right)\)が最大値になるのは\(a < 0\)のときである。明らかに\(0\leq x\leq 1\)で\(f(x) > 0\)であるから、\(a < 0\)が必要である。さて、条件\((ii)\)から\(0<x<1\)のとき$$\begin{eqnarray}f(x) &\leq &g(x) \\ \iff x^m(1-x)^n & \leq & ax(x-1)\\ \iff x^{m-1}(1-x)^{n-1} & \leq & -a \tag{a}\label{a}\end{eqnarray}$$である。\(m\geq 2, n\geq 2\)のとき\((1)\)と同様にして、\(x^{m-1}(1-x)^{n-1}\)の最大値は\(\displaystyle \frac{(m-1)^{m-1}(n-1)^{n-1}}{(m+n-2)^{m+n-2}}\)となるから、$$-a\geq \frac{(m-1)^{m-1}(n-1)^{n-1}}{(m+n-2)^{m+n-2}}$$が必要である。また、\(m = 1\)あるいは\(n=1\)のとき\eqref{a}は\(-a\geq 1\)である。以上から、\(\displaystyle M(a, b, c) = -\frac{a}{4}\)の最小値は\((m, n)\ne (1, 1)\)のとき\(\displaystyle \underline{\frac{(m-1)^{m-1}(n-1)^{n-1}}{4(m+n-2)^{m+n-2}}}\)となる。また、\(m=1\)または\(n=1\)のとき最大値の最小値は\(\underline{1}\)である。

\((4)\) \((1)\)から\(0\leq x\leq 1\)で$$f(x)\leq \frac{m^m n^n}{(m+n)^{m+n}}$$であるから、\(0\)から\(1\)まで積分して、\((2)\)を用いると$$\frac{m!n!}{(m+n+1)!}\leq \frac{m^m n^n}{(m+n)^{m+n}}$$である。常には等号が成り立たないので、これから$$\frac{(m+n+1)!}{m!n!} > \frac{(m+n)^{m+n}}{m^mn^n}$$が成立する。また、\((3)\)から$$\frac{m^mn^n}{(m+n)^{m+n}}\leq \frac{(m-1)^{m-1}(n-1)^{n-1}}{4(m+n-2)^{m+n-2}}$$であるが、これを繰り返し用いると、\(m\geq n\geq 2\)に注意して、$$\begin{eqnarray}\frac{m^mn^n}{(m+n)^{m+n}} & \leq & \frac{(m-1)^{m-1}(n-1)^{n-1}}{4(m+n-2)^{m+n-2}}\\ & \leq & \frac{(m-2)^{m-2}(n-2)^{n-2}}{4^2(m+n-4)^{m+n-4}}\\ & \leq & \cdots \\ & \leq & \frac{(m-(n-1))^{m-(n-1)}(n-(n-1))^{n-(n-1)}}{4^{n-1}(m+n-2(n-1))^{m+n-2(n-1)}} \\ & = & \frac{(m-n+1)^{m-n+1}}{4^{n-1}(m-n+1)^{m-n+2}}\\ & = & \frac{1}{m+n-1}\cdot\frac{1}{2^{2n-2}} \\ & \leq & \frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2^{2n-2}}\\ & = & \frac{1}{2^{2n-1}}\end{eqnarray}$$であるから、変形して\(\displaystyle \frac{(m+n)^{m+n}}{m^mn^n} > 2^{2n-1}\)が成立する。

解説

問題の\(f(x)\)はベータ関数と呼ばれる。

ベータ関数 - Wikipedia

入試で取り上げられる場合、\((1), (2)\)は題材にされることが多い。

\((4)\)の右側の不等式はなかなか難しいが、\((3)\)を使えという誘導なのだろう。なお、数学的帰納法で\(\displaystyle \frac{(m+n)^{m+n}}{m^mn^n} > 2^{2n-1}\)を示そうとするとかなり難しく、丁重な誘導が助かることに気がつく。

関連問題

1972年東京医科歯科大学数学問題 部分積分法と積分の漸化式
1987年東京医科歯科大学数学問題1 数列と積分、極限
1999年東京大学後期理系数学問題1 積分と数列、実験の重要性
2008年東京医科歯科大学前期数学問題3 抽象関数と関数方程式、面積と積分

関連リンク

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