問題
\(a\)を正の実数、\(k\)を自然数とし、\(x > 0\)で定義される関数$$f(x) = \int_{a}^{ax}{\frac{k+\sqrt[k]{u}}{ku}du}$$を考える。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(f(x)\)の増減および凹凸を調べ、\(y = f(x)\)のグラフの概形をかけ。
\((2)\) \(S\)を正の実数とするとき、\(f(p) = S\)を満たす実数\(p\)がただ\(1\)つ存在することを示せ。
\((3)\) \(\displaystyle b = \frac{k}{k+\sqrt[k]{a}}\)とおくとき、\((2)\)の\(S, p\)について、次の不等式が成立することを示せ。$$1+bS<p<e^{bS}$$
方針
\((1)\) 素直に微分しても良い。\(f(x)\)は具体的に求めることが可能である。
\((2)\) \((1)\)の図を見れば明らかである。
\((3)\) \(b\)が何を意味するのかを考えると良い。\(\displaystyle f^{\prime}(1) = \frac{1}{b}\)に気がつけば方針が見えてくる。図形的な考察が鍵になる。
解答
\((1)\) $$\begin{eqnarray}f(x) & = & \int_{a}^{ax}{\left(\frac{1}{u}+\frac{u^{\frac{1}{k}-1}}{k}\right)du}\\ & = & \left[\log{u} + u^{\frac{1}{k}}\right]_{a}^{ax}\\ & = & \log{\frac{ax}{a}} + (ax)^{\frac{1}{k}}-a^{\frac{1}{k}}\\ & = & \log{x} + (ax)^{\frac{1}{k}}-a^{\frac{1}{k}}\end{eqnarray}$$である。また、$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(x) & = & \frac{1}{x} + \frac{a(ax)^{\frac{1}{k}-1}}{k}\\ & = & \frac{k + (ax)^{\frac{1}{k}}}{kx}\\ & > & 0 \end{eqnarray}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}f^{\prime\prime}(x) & = & -\frac{1}{x^2}+\frac{a^2(ax)^{\frac{1}{k}-2}}{k}\left(\frac{1}{k}-1\right)\\ & = & \frac{(1-k)(ax)^{\frac{1}{k}}-k^2}{(kx)^2} \\ & < & 0\end{eqnarray}$$であるから、\(y = f(x)\)は上に凸で、概形は以下の様になる(\(k=1\)のときも成り立つ)。
\((2)\) \(f(x)\)は単調増加で、\(f(1) = 0\)となる。\(x\to \infty\)のとき\(f(x)\to \infty\)となるので、題意のような\(p > 1\)が存在する。
\((3)\) \((1)\)から\(\displaystyle f^{\prime}(1) = \frac{k+a^{\frac{1}{k}}}{k} = \frac{1}{b}\)である。\(x = 1\)における\(y = f(x)\)の接線は\(\displaystyle y = f^{\prime}(1)(x-1) = \frac{x-1}{b}\)となる。\(y = f(x)\)は上に凸だから、この接線は\(x = p\)で\(y = f(x)\)よりも上にある(下図)。
したがって\(\displaystyle \frac{p-1}{b} > f(p) = S\)であり、変形すると\(1+bS < p\)となる。右側の不等式であるが、\(g(x) = f(x)-f^{\prime}(1)\log{x}\ \ (x > 1)\)と置く。$$\begin{eqnarray}g^{\prime}(x) & = & f^{\prime}(x)-\frac{f^{\prime}(1)}{x}\\ & = & \frac{xf^{\prime}(x)-f^{\prime}(1)}{x}\end{eqnarray}$$である。再度\(h(x) = xf^{\prime}(x)-f^{\prime}(1)\)とすると、$$\begin{eqnarray}h^{\prime}(x) & = & f^{\prime}(x)+xf^{\prime\prime}(x) \\ & = & \frac{1}{x} + \frac{a(ax)^{\frac{1}{k}-1}}{k}+x\left(-\frac{1}{x^2}+\frac{a^2(ax)^{\frac{1}{k}-2}}{k}\left(\frac{1}{k}-1\right)\right) \\ & = & \frac{a(ax)^{\frac{1}{k}-1}}{k^2}\\ & > & 0\end{eqnarray}$$である。したがって\(h(x) > h(1) = 0\)であるから、\(g^{\prime}(x) > 0\)で、\(g(x) > g(1) = 0\)である。\(x = p\)とすると、\(\displaystyle f(p) = S > f^{\prime}(1)\log{p} = \frac{\log{p}}{b}\)となり、変形して\(\log{p} < bS\)であるので、指数を考えて\(p < e^{bS}\)が成立する。
解説
\((1), (2)\)は普通の問題である。\((3)\)が勝負所になるが、できることはそれほど多くない。解析的に考えても良いし、左側の不等式では図形的な考察を行ったかどうかで試験場での明暗が分かれたことだろう。右側の不等式は難しい。\(e\)のままでは微分しても残ってしまうので、対数を取るのが良いだろう。
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