[math]2015年東京医科歯科大学数学問題1

lots of numbers math
Photo by Black ice on Pexels.com

問題

\(n\)を自然数、\(m\)を\(2n\)以下の自然数とする。\(1\)から\(n\)までの自然数が\(1\)つずつ記されたカードが、それぞれの数に対して\(2\)枚ずつ、合計\(2n\)枚ある。この中から、\(m\)枚のカードを無作為に選んだとき、それらに記された数がすべて異なる確率を\(P_n(m)\)と表す。ただし、\(P_n(1) = 1\)とする。さらに、\(E_n(m) = mP_n(m)\)とおく。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(P_3(2), P_3(3), P_3(4)\)を求めよ。
\((2)\) \(E_{10}(m)\)が最大になるような\(m\)を求めよ。
\((3)\) 自然数\(n\)に対し、\(E_n(m) > E_n(m+1)\)を満たす自然数\(m\)の最小値を\(f(n)\)とするとき、\(f(n)\)を\(n\)を用いて表わせ。ただし、ガウス記号\([]\)を用いてよい。ここで、実数\(x\)に対して、\(x\)を超えない最大の整数を\([x]\)と表す。

方針

\(P_n(m)\)は具体的に求めることができる。\((2), (3)\)では\(E_n(m+1)\)と\(E_n(m)\)の比を作るのが常套手段である。

解答

\((1)\) \(n = 3\)のとき、カードは\(1, 1, 2, 2, 3, 3\)の\(6\)枚である。この中から\(2\)枚を選ぶ事象の数は\(_{6}{\mathbb{C}}_{2} = 15\)通りである。カードが同じになるのは\((1, 1), (2, 2), (3, 3)\)の\(3\)通りで、それ以外の組み合わせはすべてカードは異なる。よって、\(\displaystyle P_3(2) = 1-\frac{3}{15} = \underline{\frac{4}{5}}\)である。また、\(3\)枚を選ぶ事象の数は\(_{6}{\mathbb{C}}_{3} = 20\)通りである。カードが同じになるのは\((1, 1, 2), (1, 1, 2), (1, 1, 3), (1, 1, 3), (2, 2, 1), (2, 2, 1), (2, 2, 3), (2, 2, 3), (3, 3, 1), (3, 3, 1), (3, 3, 2), (3, 3, 2)\)の\(12\)通りで、それ以外の組み合わせはすべてカードは異なる。ただし、同じ数字でもカードを区別した。よって、\(\displaystyle P_3(3) = 1-\frac{12}{20} = \underline{\frac{2}{5}}\)である。また、\(4\)枚を選ぶとどのように選んでも同じカードが出てくるので、\(\underline{P_3(4) = 0}\)である。

\((2), (3)\) \(m \geq n+1\)のときは、どのような選び方をしても記された数の中で同じものが出てくる(鳩の巣原理)。したがって、\(m\geq n\)のとき\(P_n(m) = 0\)である。\(1\leq m\leq n\)のときを考える。グループ\(A\)を\((1, 2, \cdots, n)\)、グループ\(B\)を\((1, 2, \cdots, n)\)とする。記された数が異なる選び方は、グループ\(A\)から\(i\)枚選び、グループ\(A\)から選んだカードと重複しないグループ\(B\)のカード\(n-i\)枚から\(m-i\)枚を選べば良いので、\(\displaystyle P_n(m) = \frac{\sum_{i=0}^{m}{_{n}{\mathbb{C}}_{i}\cdot _{n-i}{\mathbb{C}}_{m-i}}}{_{2n}{\mathbb{C}}_{m}}\)である。和の中身を計算すると、$$\begin{eqnarray}\frac{n!}{(n-i)!i!}\cdot \frac{(n-i)!}{(m-i)!(n-i-(m-i))!} & = & \frac{n!}{(n-m)!}\cdot \frac{1}{i!(m-i)!}\\ & = & \frac{n!}{m!(n-m)!}\cdot \frac{m!}{(m-i)!i!}\\ & = & _{n}{\mathbb{C}}_{m}\cdot _{m}{\mathbb{C}}_{i}\end{eqnarray}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}P_n(m) & = & \frac{_{n}{\mathbb{C}}_{m}}{_{2n}{\mathbb{C}}_{m}}\sum_{i=0}^{m}{_{m}{\mathbb{C}}_{i}}\\ & = & \frac{2^m \cdot _{n}{\mathbb{C}}_{m}}{_{2n}{\mathbb{C}}_{m}}\end{eqnarray}$$である。これより、\(\displaystyle E_n(m) = \frac{m\cdot 2^m\cdot _{n}{\mathbb{C}}_{m}}{_{2n}{\mathbb{C}}_{m}}\)となる。\(m = 1, 2, \cdots, n-1\)として比を考えると、$$\begin{eqnarray}\frac{E_{n}(m+1)}{E_n(m)} & = & \frac{(m+1)2^{m+1}}{m2^m}\cdot \frac{_{n}{\mathbb{C}}_{m+1}}{_{n}{\mathbb{C}}_{m}}\cdot \frac{_{2n}{\mathbb{C}}_{m}}{_{2n}{\mathbb{C}}_{m+1}}\\ & = & 2\left(1+\frac{1}{m}\right)\cdot \frac{n-m}{m+1}\cdot \frac{m+1}{2n-m}\\ & = & \frac{2(m+1)(n-m)}{m(2n-m)}\end{eqnarray}$$である。この比と\(1\)との大小を比べる。$$\begin{eqnarray}\frac{2(m+1)(n-m)}{m(2n-m)} = 1 \\ \iff 2(m+1)(n-m) = m(2n-m)\\ \iff 2n = m^2+2m \\ \iff 2n+1 = (m+1)^2 \\ \iff -(m+1+\sqrt{2n+1})(m+1-\sqrt{2n+1}) = 0\end{eqnarray}$$である。したがって、\(m=1, 2, \cdots, [\sqrt{2n+1}-1]\)までは\(\displaystyle E_n(m+1) > E_n(m)\)であり、\(m = [\sqrt{2n+1}-1]+1, [\sqrt{2n+1}-1]+2, \cdots, n-1\)からは\(E_{m}(m+1) < E_n(m)\)となる。これから、\(E_n(m) > E_m(n+1)\)を満たす最小の整数は\([\sqrt{2n+1}-1]+1 = [\sqrt{2n+1}]\)となるから、\(\underline{f(n) = [\sqrt{2n+1}]}\)となる。なお、\(n=1\)のとき\(E_1(1) = P_1(1) = 1, E_1(2) = 0\)であるから\(f(1) = 1\)となりこの結果は\(n = 1\)でも成り立つ。また、\(n = 10\)のとき\(E_{10}(m)\)が最大になるのは\([\sqrt{2\times 10+1}] = \underline{4}\)である。

解説

鳩の巣原理とは、\(n\)個のものを\(m\)個の箱に入れたとき、\(n > m\)であれば少なくとも\(1\)個の箱には\(1\)個よりも多いものが中にあるという原理である。当たり前のようであるが、ときに大きな威力を発揮する。

鳩の巣原理 - Wikipedia

解答では実数\(x\)に対して\([x-1]+1 = [x]\)を用いている。これは、\(x\)を超えない最大の整数を\(m\)として、$$\begin{eqnarray}m\leq x < m + 1\\ \iff m-1 \leq x-1 < m \\ \iff [x-1] = m-1\\ \iff [x-1]+1 = m = [x]\end{eqnarray}$$による。

関連問題

1987年東京医科歯科大学数学問題2 場合の数と置き換え
2001年東京医科歯科大学前期数学問題3 場合の数、誘導の利用
2006年度前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、場合の数、置き換え
2009年東京医科歯科大学前期数学問題2 整式と整数、場合の数
2011年東京医科歯科大学前期数学問題1 確率と漸化式

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

コメント

タイトルとURLをコピーしました